短編 #0382の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
夜の街は氷のように冷たい空間の静寂で微睡みの縁に横たわって居た。 疎らに自己を主張する家並みの灯りは、遠くまで不規則な列びを見せ、湾岸線の明 かりはオレンジ色に華やぎながら重油のように黒く波打つ海と街の縁を遮るように 緩やかな曲がりでゆったりと流れる様に、K市の彼方を目指していた。 Fはマンションの8階にある部屋の窓越しに街を見下ろしながら煙草をくわえたま まで腕時計を見た。 「約束は24時… 」 一日は静かに終わり、やがて新しい一日が始まろうとしていた。 「来るだろうか… 」 自信は無かった… 来なかったところで、それを責めるつもりなど毛頭無かった。 が、ある種の期待が、裏切られたときの苛立ちまでを先早に感知して、感情を刺激す るので在った。期待に掛かるときめきは既に会社を出たときから、いや… 今夜の約 束をしたときから始まっていた。初めての冒険とも云える… 深夜のランデブー … 24時… 「今晩は… 」 来た。 Fは自分の顔がほころぶのを、何処とは無しに楽しく思いながら、はやる心を抑え て居た。心臓の鼓動が一気に高鳴り、まるで、あの初恋の時に感じたような胸のうね りが押し寄せるのを思い出した感じで、何処と無く緊張もした。 「今晩は… 時間丁度だね… 」 「はい… お待ちになられましたか?」 「いや… 」 Fには、初めての経験だった。 何をどの様に進めれば良いのか… 話題すら見つけだせない有様であったが、その点 相手の方は、こういった事には慣れているようで、気まずい思いをする迄の事もなく 時間は過ぎて行った。 時間が経つに連れ、心は幾分安らぎ、やがて云いがたい快感のときめきが胸を翔の ぼる程であった。Fは相手の心理を僅かばかりも見逃すまいと必死の形相で見つめ続 け、相手の気をそらさせまいと、必死で指を使った… 時の経つのも忘れると云うの はこう云った事だったのか… Fは、ふと目を上げた時カーテン越しの窓が朝の訪れ を告げる準備を始めていることに気付き、そう思った。 「じゃ… また… お休みなさい… 」 … 相手は、あっさりと、帰って行って仕舞った… 幾分興奮は冷めてきた… しかし、未知の経験を今終えたばかりの高鳴りから静かに 遠ざかる感情は、ドキッとした一瞬等を思い返しながら、なかなかおさまろうとはし ないまま… 夜は明けていた… 早朝の静寂の中、Fは煙草に火をつけ、ゆったりと くゆらせながら… 取り留めの無い後悔の念が涌きあがるのを覚えた。 いったい、幾らのお金が掛かったのだろうか… 電話代はともかく、未だOLTに掛かる課金の計算方法も知らないFで在った。 聖 紫
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