短編 #0300の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
サン・クリストファー教会の立つ小高い丘からは、中央ヨーロッパの平原が一望に 見渡せ、その足元には教区とするクリステンブルクの町があった。つい先ほどまで降 っていた雨も、朝日に押し流されて行った雲と一緒に、どこかに消えてしまった。ジ ャン・セルバンチウス・エモルスラは教会の建物から少し離れた場所に立って正面か ら差し込んでくる朝日をうつむき加減に避けながら、教会の大きな木の扉が開くのを 待っていた。頭にかぶった頭巾の先から夜露と雨の滴が落ちては、足元で水の音を立 てている。 不意に起こった音にジャンは顔あげ、頭巾をとった。べったりと張り付いた茶色の 髪を絞りながら、ジャンは開いた教会の扉から出てくる灰色のローブを着た修道士の 行列を眺めた。この行列とジャンの違いは濡れていることと、腰の紐が赤か黒か、だ けだった。 修道士の静かな列は、夜明け前にジャンが登って来た濡れて光る下草の中を通る泥 の道をゆっくりと降りていく。ジャンの見ている前で列の前の方で修道士がぬかるみ に足をとられたらしく、その前と後ろの修道士を巻き添えにしてひっくり返った。ち ょうどそこは、登ってくる途中にジャンもひっくり返った場所だった。他にもいくつ か。 ジャンは声をかけようかと思ったが、失礼のような気がして、黙っておくことにし た。それに、声をかけたついでに、恵みを乞いに町まで降りて行く修道士達のまたつ いでに、恵みをこわれたら、今日は困るのだ。お金は代金分しか持ち合わせがない。 それも、かき集めた全部。 修道士達がざわめきながら町へ降りて行くのと入れ替わりに、ジャンは建物とは不 釣り合いに大きいドアを開いて聖堂の中へ入って行った。ジャンは一歩中にはいると、 まぶしい光に打たれたようにその場にひざまづき、床に額をこすりつけ手を頭の上で 合わせた。ジャンには、見目麗しい艶やかな純白のローブをまとった司祭が一歩一歩 近づいてくるのが分かった。その音が、目の前で止まった。 「さあ、立ち上がりなさい、迷える小羊よ」 司祭の低く柔和な声が、小さくこぎれいな聖堂の中で響きわたった。ジャンは司祭の 爪先に接吻し、顔をあげた。 「司祭様、私は何と愚かな事をしてしまったのでしょう」 「ジャン、一体どうした?またあれか、例の何とかいった娘と、その、」 「いえ、違うです」 ジャンは跪づいて手を合わせたまま、さっきまで青かった顔が、興奮で紅潮し始めて いた。司祭はジャンの表情を見てとると、言葉を探しに目をそらした。 「免罪符を買えば、罪は償えますよね?」 「ああ、そうだ。しかし今、持ち合わせがない」 司祭がそう言うと、ジャンは、前のめりに倒れて、頭を石の床にしたたかにぶつけた。 「オオ、ジャン、大丈夫か!」 司祭が大きな声をあげると、奥から一人の修道士があらわれた。司祭は、ジャンの額 から流れている血を見ると、奥から出てきた修道士に薬と傷をふさぐ物を持ってくる ように言い、ジャンの手をひいて、椅子に座らせた。 「ジャンよ、おまえの言っている事と、やる事はいつも私には理解できない。修道士 になりたいと、言ってはやっぱりなれないと言うし、修道士になれば、家に帰りたい と言って飛び出していく。理解に苦しむよ。ああ、ありがとう」 修道士から、薬と包帯を受け取ると、司祭はジャンとは通路を挟んだとなりの長椅子 に座って、血が流れるままに天井を見つめているジャンの額に薬をつけ、包帯を巻い た。 「教会の天井は以外と低いですね」 ジャンの言葉に、司祭と修道士もつられて天井に目をやった。 司祭はジャンの傷の手当を終えて修道士に薬を渡そうとすると、彼はまだ天井を見 つめていた。司祭が差し出した物に気がつくと、慌てて受け取り奥に消えた。ジャン は相変わらず天井を見たままで、額を横切る茶色の包帯には血がにじみ始めていた。 「ジャン、悔いる事があったら、話しなさい。神の前だ、話せば全ては許される。」 司祭の言葉を聞きながら、ジャンは司祭に向きなおり、思い詰めた表情を彼に向けた。 「私は、友人を殺してしまいました。」 ジャンは、そう言って下を向いた。司祭は、何か言おうと、口を開きかけて、そこで 迷った。「どういうわけ?」でもよかったし、「どうして?」でもいいし、「もう一 度言ってごらん。」でもよかった。そして、司祭は、言った。 「で、どうやって?」
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