短編 #0139の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
感傷だけをなぞりあった。寝酒を共に浴びていた。 遠いね、二人。ここに、来てよ。ううん、無理だって知ってる。ねえ、もう一 回言って、離れていても側に居る、って。電話代なんか、気にしない、あなたと 話していたいんだもの。でも、あなたは本当に? 毎晩、同じ事を繰り返す。愛を語り、踏み絵を踏み、傷口をいたぶり、そして やっと眠りにつく。それは代償の多い儀式。何一つ生み出される物はない。 別れるため、部屋の電話機を捨てた。 別れるため、遠くのまちへ旅に出た。 夜が、あけるよ。空が、しらむよ。もう、それを語る人も居ない。 夜が、にじむよ。空が、にじむよ。もう、それを共に見る人も居ない。 旅から戻ると葉書が訴え掛ける。 『ぼくの電話口でくすくす嗤うのは、やめろ、やめてください、いい加減にして くれ。電話のベルを鳴らないようにしても受話器をあげても電話線を切っても、 くすくすくすくす嗤うのは、やめてください、どうか、やめてください』 嗤ってなんかいないよ、お願い、信じて頂戴。公衆電話で涙ぐむ。ねえ、わかっ てよ。あなたは、まともじゃないのよ。残り時間の減っていく音が響き続ける。 私を信じて許したあの人は、けれど少しずつ少しずつ電話のない夜の数だけ狂っ ていくのだ、静かに確信しながら別れを告げる。やがて悪し様に私を罵ることを、 やがて他の女性と恋に溺れることを、やがて、そう、やがてそんな日々が来るこ とをねがいながら。 誰か教えて、私が何をしたというの。さびしかったのに。恋していたのに。本 当は知っている、あの人の固い殻に護られた柔らかな実を私は剥き出してしまっ たのだ、という事を。 きっとまたいつか、あけてゆく空を、私は他の誰かと共に見る。それは確か。 不確かなのはただ、あの、長距離電話の日々。 了 1993.08.28.30:15
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