短編 #0072の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
お題>僕は君だけは許せない ワクロー3 僕が住んでいるアパートは、大家さんの方針で、独身の女性にし か貸さないことになっている。数年までは男も入居させていたのだ が、部屋を激しく汚されたり火事騒ぎを起こされたり、ろくでもな いことが続いたそうだ。 それで、ある年から男の入居は断ってしまい、入居するのは女性 だけになってしまった。僕も男なのだが、最初から入居しているし、 わりあいに清潔に暮らしている上に、大家さんには受けもよいので そのまま住んでいる。 しかし、去年にもうひとりの男性の入居者が転勤で出ていってし まい、後に女性が入居すると、いよいよ僕はこのアパートでたった 一人の男の入居者になってしまったのである。 うらやましい?友人もみな、そう言う。僕もひそかにそう思った こともある。 ところが、これはこれで悩みが多い。もっか最大の悩みは『週末 にアパートの人口がほぼ倍になる』ということである。 文学的な美しい修飾語がなくて恐縮なのだが、どういうことかと いうと『入居している女たちが、週末になるとそれぞれに彼氏を部 屋に引っ張り込む(または、彼氏が部屋に転がり込む)』のである。 彼氏は、入居者の部屋で、どすどす動き回り、排泄し、かつ飯を 喰い、ごろごろ寝ころびながらテレビを見たり、音楽を聴いたりす る。夜になるとセックスもするので、アパート全体が大変ににぎや かになる。 これは、まあよい。僕も生身の人間なので、あからさまにセック スされると劣情を催したりするが、あいにく自分の彼女とは別れた ばかりなので、悶悶として収拾がつかなくなることもないことはな い。しかし、これも寛大な僕は許す。 許せないのは僕の上の部屋に最近来るようになった男である。 こいつが、のべつ幕なしに放屁する。その音がでかいのである。 もともと防音効果が乏しい、みかけだけきれいなアパートの部屋で ある。そいつが、ブブブーとするのが階下の僕の部屋にもろに響く のである。 しかも、こいつがブブブーとやると、必ず女性が、ヒャハハハハ ーと大笑いする。このブブブーとヒャハハハーが、決まりのように セットとなって夕方から深夜まで繰り返し繰り返し執拗に繰り返さ れるのである。 もちろん僕も、常に部屋に居るわけではない。銭湯に行くことも あれば、本屋に行くこともある。ご飯だって食べに行く。 なるべく帰宅を遅くして部屋に戻るのだが、にもかからわず、そ れほど時間を置かなくとも、男がブブブーと放屁して女がヒャハハ ハーと笑う。このパターンが1時間に7、8度はある。あまりの規 則正しさに、ラジカセで再生しているのか!とも思ったほどだ。 しかし、ヒャハハーの後には、女性の声で『こんどのは〜』とい う感想や『すごーい。続けて出たね〜』とか、感想が述べられるこ とがあるので、やはりこれは生なのだろうと判断している。 夜に入ると、周囲がひっそりとなるだけに、放屁の音はよりはっ きりと響いてくる。しかも放屁男も、ブブブーと放屁しながら、次 第に劣情を催して来るらしく、ヒャハハハー女にちょっかいを出し ているらしい、畳の上を蠢く摩擦音が激しくなる。 こいつらが分からないのが、欲情相たかまり、交尾を致している に違いないその間にあってさえ、ブブブーとヒャハハハーが中断さ れることがない、ということである。いったいどういう神経をして いるのか。放屁しながら欲情をたかめあう関係など聞いたことがな い。 こいつら!あまりにもおぞましいやつらだ。 僕はもう好奇心の固まりになってしまったので、いったいどんな カップルなのか見物しようと決意した。よく朝、僕は10時すぎに 目覚めた。ブブブー男は、日曜の10時半になると決まって出て行 くことを知っていたので、玄関前を清掃する大義名分のもとに、こ いつの顔を見てやろうと決意したのである。 午前10時27分。やつらは連れだって階段を降りてきた。先頭 はヒャハハハー女だ。両手に紙袋を持っている。外出の構えだ。服 は白地のワンピース。髪は長い。背も高いな。165はあると思う。 軽くパーマかけてるのかな。けっこう清潔そう。ちら、と振り向い た。見てどっきりする。 美形やんけー。化粧も完璧。お化粧ののりがよいみたいで、つや つやして自分のお肌みたいな化粧だ。笑い方はヒャハハハーと、あ ほみたいだが、こいつはかなり可愛いやんかー。バカヤロー。意味もな くわめきたくなる。 しかし、後続するブブブー男を見て、私ははっきりいって、こい つだけは許せない!そう思った。『許せない』の部分をできること なら40倍角文字に影付きアンダーライン付きの巨大文字にして表 示したいほどだ。 こいつは、よれよれのポロシャツ。下は全然似合わないジーンズ。 髪は濡れたわかめのように額にびったしくっついている。体型は 『大和民族体型保存会の総帥』を務めてもよい、と思うほど、いま どき珍しい胴なが短足の男である。身長は160センチないのでは ないか。僕は誰がなんと言おうと外見で人を判断するので、ブブブ ー男の正体を見たときには愕然としてしまった。 こいつだけは、このブブブー男だけは、ヒャハハハーおねえ様と 似合わない。 僕の心はあまりできごとに混乱を起こし、ブブブー男のもとに駆 け寄って抗議した。 『おならが僕の部屋に響いて眠れないんですけど』 ブブブー男は、申し分けなさそうに素直に謝罪した。隣で美形の 彼女がうつむいて僕の方を見ている。ブブブー男は、彼女をいたわ るようにこう言った。声は地声なのかカン高い。 『ごめんなさい。聞えますか。あれ、おならじゃないんですよ』 『?ヒャハハハーと笑うのは?』 『ああ、あれは、僕の笑い声なんです。すみません。今度から気 をつけます』 ブブブー男(ヒャハハハー男?)は、すまなそうに頭をさげて、 行ってしまった。行ってしまったのはよいが、僕はますます混乱し てしまった。彼の言葉が誤っていないとしたなら、これまで『ブブ ブー男とヒャハハハハー女』だと思っていたのは、実は『ブブブー 女とヒャハハハー男』だったのか。 いずれにしても、僕は君だけは許したくない。僕はヒャハハハー 男が美形の彼女と連れだってが街の中に消えて行くのをいつまでも 眺めていた。 劇終←これイッペン使ってみたかった
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