短編 #0049の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
一週間前から待ち合わせていた。彼女と会う日の事を。彼女は絶対にこやかに、 僕を見て微笑むんだ。会いたかった、って言って、そしてためらいがちに僕の上 着の右腕を指でつまむんだ。僕は小鳥を飼ってる気になって、右腕をそっと明け 渡して、そして並んで歩くんだ。それは何より確実な未来だったし、何より大好 きな彼女だった、時折の気紛れを知ってはいるけど、そんな事は誤差の範囲なん だ。だから彼女が眉根を曇らせ僕の前に一時間遅れて現れたって、僕は怒らない、 心配するだけだ、そもそも怒る筈なんてないんだ。 どうして遅くなったの、と僕は心配な声音。 彼女はおそるおそる僕にチケットを渡す、ごめんなさい、これあなたが行きた いっていってたから、チケット。二人分買ってきた。今、探して買ってきたから、 遅くなった。プレゼント。ごめんなさい、これあなたと行けない。行きたいけれ ど、行けない、あなたと行く資格なんてない。許して。 彼女は瞳に涙を浮かべる。 何があったかわかってるさ、あいつと会ったんだろう、知ってるよ、何があっ たか見当付くさ、君が泣いているのが証拠だよ。 彼女はいつだって泣くんだ、僕はいつだって許すんだ、彼女は本当は僕が許す って信じているんだ、僕の元に戻りさえすればいいって信じているんだ。僕はこ れではいけない、って思うんだ。本当は許せないんだ、っていったら彼女はどん な顔をするだろう、多分眉根をもっと曇らせて、泣きながら優しく微笑み、別れ ましょうって言うんだ、それは僕が引き留めるって知ってて言うんだ、そして本 当にいつだって僕は引き留めてしまうし、彼女は本気で別れようとする事などな いんだ。したたかだよ。遅れてきたのもチケットも演出の内だろう。僕はわかっ ているんだ。 僕は君だけは許せない。例え、君がどんなに泣き崩れても。 僕は捨てないでくれ、って顔をして、君を抱きしめて、それでも君を許せない。 僕は君に償って貰う。僕の人生で君に出会ってしまった事。僕の君への投資を 思うと、恋なんて面倒で、二度とする気はない。 君のしたたかさが僕に許す事をさせない。君のせいだよ。だから君は僕と一緒 に生きるんだ。何があっても離れられないんだ。 彼女に微笑む。愛しているよ。 そしてそれは心の中で、許せない、って響くんだ。 了 1993.05.31.12:00
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