短編 #0029の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「弩」というのはボウガンの先祖みたいな兵器。紀元前の中国ではすでに採用 されていました。 以前に訪れた西安の兵馬俑は撮影禁止だったのにぬわんと服務員の目の前で写 ルンですふらっしゅ!してしまい没収されたのも懐かしい思い出(^。^;。 服務員に賄賂ちらつかせて返還交渉してくれた親切な通訳さん今も元気だろうか。 ====================== これほど美しい軍隊はないとワンは思った。 すべてを黒一色に装った秦の軍団。遥か彼方までを埋めつくした大師団は一兵卒の 鎧から旗や馬の轡にいたるまであらゆるものが黒で統一されていた。 それは圧倒的な軍事力で戦国のライバル六国を降し覇者となった始皇帝が帝国の象 徴とした色である。 冬の到来を告げる秋風に吹かれながらワンは自分がこれまで参加した幾多の戦いを ふりかえった。 勇猛無比な趙の騎馬軍団、彼我の差何倍に達しただろうか戦国の七雄中最大の兵力 を誇った楚の超大兵団。 中華文明の最後に及ぶところ、と、他国から半ば蛮族に近い扱いを受けていた秦だ からこそ逆にそれら「礼節の文明国」に対する攻撃は容赦ないものがあった。 秦は討ち勝ってきた。 有史来の永きにわたる自由でロマンに満ちた戦はもはや過去のものとなった。今や 近代戦の名のもとに個人はその個性を消し均質化される只の戦闘用具となったのだ。 そこでは兵士は表情をかえることさえ許されなかった。もし恐れやためらいのそぶ りを少しでも見せたなら規律違反とされ厳しい処罰がまっていた。 あれはいつどこだったろうか。攻め落とした城の多さはワンの記憶をもてあます ほどだった。 燃え上がる城の中で幼い姉妹が母親の亡骸にすがって泣いているのを見た時、弩兵 であったワンはその母親を死なせた流れ矢が自分のものではないかという強い疑念 に襲われおもわずそこに立ちすくんだのだった。 果してそうだったのかそうでなかったのか、そんなことわかりはしない。ただ言え るのは確実にその可能性があるという事実だった。 泣き続ける姉妹を安全な場所へ逃そうとワンが何度声をかけても二人は動こうとは しなかった。 見かねたワンが自分は決して悪い人間ではないと言いながらその肩に手を触れようと した時である。 「好人不当兵!」 気丈な姉が妹をかばいながら鋭く叫んだ。 「良い人間なら兵隊になどなりはしない。」 その短い言葉がワンの胸につきささった。 なりたくてなった兵ではない。多くの者と同じようにそれしかならざるを得ない 事情がワンを兵士にしたのだ。だが郷里を出る時同じ言葉を母親が非難でなく嘆 くように言ったことがワンの心には重くのしかかっていた。 自分はもしかするといつの間にか戦いを楽しむようになっていたのかも知れない。 永久にその名を語られるであろう天才兵法家孫子が理想とした戦術は奇しくも 乱立していた国家群のなかでも最も文化の遅れた秦によって実践された。その軍団 は風のように速く林のように静かで火のように激しく山のように強固でそして無の ように破壊した。 怒涛のように黒い軍団が大陸を駈けめぐった。新兵器である戦車が戦場のただなか に突撃すると中からは完全武装の黒い兵士が現れ正確な一斉射撃を敵に浴びせる。 用兵の進歩は大量殺戮の戦場で兵士に機械の一部となることを強いたが、それは 併せて兵士個人の罪悪感をも希薄にしたのだ。 この帝国は血塗られた帝国・・ 今、永い眠りにつこうとするワンであったがもしこの身が再び白日のもとにその姿 を晒すことがあるならば人間どうしの争いの不毛を永遠の証人として語りつごうと 誓った。 恐怖によって全土を統一した始皇帝の黄泉の世界での宮殿となる大地下坑に土 がかぶせられた。 かくて表情をかえること無き素焼きの兵士ワンはやがて地上に現れるその日まで眠 りについたのだ。 いつか戦乱の無い遠い未来に誰かに見つけられる事を願って・・ 旺春峰 P.S こういう道具立てを専門にやってます(笑)、またお見知りおきくだされば幸い です(^o^)
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