短編 #0026の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
『はい。特大にしといたけんね』。 僕が中学生のころ、ソフトクリームを大盛りにしてくれる高校生 のお姉さんがいる店があった。大盛りのソフトクリームも好きだが、 笑顔で大盛りを手渡してくれるお姉さんが好きで、僕らは毎日のよ うに店に通った。 お姉さんは、いつも居るわけでないので、通りから店をのぞいて、 彼女がいるときに限って店に入っていた。 普段店を取り仕切っているのは、お姉さんの母親で、彼女はお姉 さんと対照的に陰気で、寂しげな人だった。 『あの人、本当にあのお姉さんのお母さんかいな』 噂をしたほど母子は似ていなかった。 僕もよく通った。一度は独りで行くことがあった。いつものよう に特大にしてくれて手渡してくれるときに 『。。。きょうはお友達は?』 そう尋ねられたことがある。たったそれだけ、じっと目をのぞき 込まれて言われただけで、顔の底まで赤くなってしまった記憶があ る。お姉さんの細い眉の下の目が、なんときらきら輝いていたこと あれから20年近い歳月が流れた。思いでの店は、あのときと同 じように同じ場所にあって、やはり今でもソフトクリームを作って 売っている。 2月の夜。歩いて帰る道すがら、寒い冬の日なのに気まぐれを起 こして思い出の店に入った。 信じられない光景を、店の中に見た。店のカウンターの内側に、 あの時と同じお姉さんがいて、僕の注文を受けてソフトクリームを 作りはじめたのだ。きらきら輝く瞳。学校帰りの制服のままで、細 い眉としなやかに動く指と、あのときのまま彼女はそこにいる。は しかし、それは、単に僕が思い違いをしていたに過ぎないことが、 じきに分かった。 カウンターの内側にいるのは、あのお姉さんの娘なのだ。彼女が 結婚し子供を産み、育てて、ちょうど15年ほど経ったに違いない。 当時の彼女と生き写しの娘が育って店に出ていたのである。 そうして本当の『お姉さん』は、彼女の横に立っている無表情な 女性こそそうだった。歳月は無惨に彼女から青春を刻み取っていた。 彼女は今、かつて彼女の母親がそうであったように陰気に、無言で 客の注文した焼きそばをいためていた。 そういう僕は、寒波のさ中にソフトクリームを注文した風変りな 客として、怪訝な視線とともに、普通盛りのソフトクリームを手渡 され、独りで食べた。 完
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