長編 #5117の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「ママ〜アイス食べていい?」 「いいわよ、でも一つだけよ〜ママにも一つお願いね」 ふぅ〜暑いわね毎日・・・。順子はあゆみとアイスを食べながらふと 考え込んだ。麗子・・・どうしてるかなぁ?今日子は初盆なんだなぁ。 ふぅ〜早いもんね・・・。 麗子に電話してみようかなぁ〜。順子はあゆみに帽子をかぶせながら叫んだ。 「あゆみ〜! 車に気をつけてくのよ!! 敏君とこでまたアイスご馳走 になる事になっても、もう今日はママが駄目だからって言うのよ」 この暑さでも子供は元気だわ。あゆみも年中さんになってから楽になって きたわね。結婚してもうじき5年になるんだわね。なんか・・・嘘みたい! 「もしもし、麗子〜?」 「ああ、順子久しぶりねぇ」 「そうだね、しっかし暑いねぇ、ほんま」「あのね・・・夏なの当たり前〜」 「アッハハハ・・・そだね、麗子元気で良かった・・・」 「順子もね」 「麗子・・・今日子の初盆なんだけどさぁ、大変だったらしいよ、あれから」 「大変って?」 「旦那さんの会社に知れちゃってね・・・心中だったって事がさ。 それでね旦那の身内が怒ってね、納骨も何も旦那さんの方にはさせない って事でね、今日子・・・かわいそうに行き場がなかったの・・・しばらくね。 今日子のお父さんも厳しい人だったでしょ、だからね、お母さんが泣いて頼ん でね、やっと実家のお墓に入れて貰えたみたいよ。今日子かわいそう・・・」 「旦那、それでどうしてんのかしら?」 麗子はムッとして聞いた。 「今、アメリカにいるらしいよ、両親が早もう次の相手探してるらしくてね、 どうせじっきに再婚するんでしょ! 今日子が死にたくなった理由って・・・ そういう事もあったんだろうねぇ」 「結婚って・・・そんなものなん?? 順子???ねぇ??」 「やだぁ、私に怒らないでよ〜」 「ごめん・・・ついむきになっちゃって・・・」 「いいのよ、私もむちゃくちゃ腹たったよ、ほんまのとこ。確かに今日子の した事は許せない事やったと思うよ。でも何で?そんな事になったのか? ってな事なぁーんも考えてないのよ、あの旦那もその身内も。 今日子・・・死んじゃって幸せだったのかもしんないねぇ」 「順子!! そんな事言うもんじゃないよ!」 麗子に言われるまでもなく順子は解っていた。解っていてどうしても言いたく なるのだった。 気づいてやれなかった後悔が順子の胸を痛めていた・・・。麗子と今日子と 私の3人の間では・・・私と今日子のつながりが一番薄かったのかもしれない? 麗子と今日子は何処かしか?似たものを持っているような雰囲気がある気がし て、幾度か少し寂しい気持ちにもなった事があるくらいだ。 けれど・・・一度だけ・・・今日子が順子に言った事がある。 「順子・・・貴方・・・えらいわよね」 「えっ? なんで?」 「私とちがって順子は人間の強さや逞しさを持ってるもん。順子の家族って 幸せよね、ずっと元気で明るいお母さんで奥さんでいてよね・・・」 今日子はなんだか寂しそうに順子に言ったのである。 あの時・・・どうして気づいてやれなかったのか? 今日子のはかなげな雰囲気は今始まった事ではないと思いつつ・・・ 心配した・・・あの日・・・私は今日子ともっと話すべきだった・・・。 「順子〜?」 電話の向こうで麗子が呼んだ。 「あっ、ごめん、ごめん、何?」 「うん、何でもないけど・・・今日の順子少し元気ないね?大丈夫?」 「大丈夫よ〜そうだ! 今日子の初盆はひっそりとされるみたいだから、 二人で御墓参りだけ行かない?」 「そうだね、じゃぁ、今度の休みでもいい? 私、あいてる日今度の休み だけなんだぁ、夏休みって学校休みだけど、忙しいんだ結構」 「うん、いいよ! ごめんね、だったら何時もの事で悪いんだけどさ、迎えに 来てくれる? 旦那・・・もう野球に夢中でさ、休みにいた事ないんだもん」 「わかったよ、じゃぁ、10時半くらいに行くけどいい?お昼一緒にどぉ?」 「いいよ〜久しぶりだわぁ、嬉しい!! じゃぁ今度の日曜日ね!」 日曜日・・・順子は麗子と春に二人で寄ったあの喫茶店で休んでいた。 順子は妙に考え込んでいた。 「順子、どうしたの?」 麗子が心配そうに聞いた。 順子はあの人に会おうと考えていた。 今日子の心中に付き合ったあの男に・・・。 麗子はきっと反対するに違いない。順子は何時も麗子に隠し事は滅多に しないできたが、今度ばかりは麗子には言わないでおいた。 「う、うん、大丈夫よ、ちょっと春の事思い出しちゃってね」 「順子・・・少し変だよ、なんか心配だな」 麗子は勘がいいから困っちゃう。順子はあの後・・・少し調べたのだった。 中山幹夫・・・宅急便の会社はもう辞めて、今は建設会社で働いているらしい。 なかなか努力家らしく、宅急便は建築関係の学校に行く為の学費稼ぎの アルバイトだったらしいのだ。 今日子の死でかなりまいっていたらしいが、最近やっと普通に暮らしている と風の噂に聞いた。 早い立ち直りねっと怒りも覚えたが・・・彼が毎週の ように御墓参りに来ていると聞いて考えが変わった。会って話してみたい! 順子は息を深く吸い込んで大きく深呼吸すると・・・エィっとドアを ノックした。 「は〜い、どなたですか?」 背の高い若者が愛想良く出て来た。 いい子だわ・・・順子は直感的にそう思った。 「あの・・・私、今日子の友達で高梨順子と言います」 「えっ・・・」 幹夫は驚いた顔をしたが、すぐに愛想良く言った。 「そうですか、今日子さんには本当に申し訳ない事をしてしまって・・・ どうぞ、良かったら入ってください。散らかってますが、部屋の中は 涼しいですから。今、僕ちょっと勉強してたもんで散らかしていて」 部屋はその部屋の持ち主を物語るとよく言うが・・・感じのいい部屋だった。 散らかってなどない。よっぽど家のほうが散らかってると順子は驚いた。 建築関係の図面のようなものがデスクにあった。そうか、これ勉強して んだ・・・順子は薦められるまま、ソファに座りながら全てを見て取る かのようにチェックしていた。 幹夫はこんなものしかなくて・・・と言いながら冷たい麦茶を出してきた。 「暑いですね、こんな暑い日に歩いてこられたんですか? 今日子さんの御友達って事ですが、今日子さんとは学生時代の御友達 なんですか?」順子は不思議だった・・・まるで今日子がまだ生きて いるような感じがするではないか? 「貴方ね・・・どうして今日子を死なせてしまったの? 私が見るところ・・・貴方、今日子をとっても愛してくれていたんでしょ? 今でも毎週御墓参りにもきてるそうね? ねぇ、どうしてなのよ?」 「僕は今日子さんの本当の気持ちを解ってあげられなかったんです・・・」 幹夫はうつむき加減で言った。「あの人が死にたいのなら、一緒に死ぬ 約束だったんです。なのに・・・今日子さんは一人で逝ってしまった。 僕はあの人を救う事もできなかったし、あの人を一人ぼっちで逝かせた 人間です・・・」幹夫はうっすらと涙を浮かべて言った・・・。 順子は聞かなくても解っていた気がした。この人は今日子を真剣に愛して いてくれたんだと・・・。きっと誰も今日子を救えなかったのかもね? 順子は辛い事だが生きていくには今日子ははかなすぎたのかも?と思う のだった。 「ごめんなさいね。私も解ってたのよ。貴方は今日子の最後を本当に優しく 見送ってくれたただ一人の人だと私本気でそう思うわよ。元気を貴方こそ 出して頑張るのよ!」 幹夫は笑みを浮かべて言った。「今日子さん、良い御友達がいたんですね。 確かもう一人いらしたですよね?」 「ああ、麗子ね。彼女と今日子は仲が良かったのよ、私とよりもね。貴方・・・ 頑張り屋さんなのね、お仕事のほうも頑張ってね。今日子は貴方の幸せを きっと祈ってるわ、今日子の祈り裏切っちゃ駄目よ、ねっ」 「もうすぐ秋ですね・・・今日子さんと初めて一緒に見たコスモスがもう 咲きますね。今日子さんも空から見てるといいんですけどね・・・」 「そうね・・・今日子は花が好きだったわ・・・貴方との思い出があるなら なお一層の事よね。 きっと見てるわ! 貴方の事も私や麗子の事も! 今日子はそういう人だったのよ・・・」 麦茶のグラスがかちりと言った。氷が融けてグラスに汗をかいていた。 「ありがとう! 美味しい麦茶だったわ。ご馳走様。突然お邪魔しちゃって ごめんなさいね。また御会いする事があったら・・・お互い元気に笑顔で ご挨拶したいわね。じゃぁ・・・」 幹夫とのわずかなこの時間は順子にとっても忘れられない時間となった。 「ふぅ〜愛って・・・なんかよくわかんないけど・・・人の優しさって みんな違うのね・・・」 順子は今日子の優しさが今日子を死に追いやり また今日子の残虐さがまた今日子を死に向かわせたんだなぁと思うと、 やりきれない気がしたが、今日子が選択したんだから、今日子の人生は 彼女のものだもんなぁと思うのであった。 私は情熱的ではないが、安穏とした家庭があり、あゆみは元気に成長して くれてる。夫は勝手もんのとこもあるが、家族想いの人だ。 それぞれの人生! これから何が私に起きるかもしれないが、私の人生! 私なりに頑張っていこうと順子は思った・・・。 道の傍らにひっそりと咲く紫露草が目に入ってきた。 「密やかに咲く花よね、紫露草って。 なんか心にしみるよなぁ〜」 順子は独り言を言いながら・・・この春から夏にかけて自分の周辺で 起きた出来事を思った。 ふっと顔を撫でた風には・・・秋の訪れを思わせる香りがした。 ははは・・・私も結構、詩人になれるじゃん・・・順子は何となく満た された気持ちで家路へと急いだ。 「よしっ!今日はあゆみとパパが好きな ハンバーグにしちゃおうっと。 デザートは巨峰を奮発しちゃおうかぁ」 「おかえりぃ〜 今晩はあゆみとパパの大好きな物ばかりだよ〜!」 「うわぁ〜い!」 「えっ、ママどうした? 怒ってるかぁ?野球ばっか行ってるから怒って 変になったかぁ?」 ば〜か! こんな夫だから私幸せなんかもしれんなぁ・・・。 「はいはい、あほな事言うてないで食べよう!」 「今度の休みはみんなで動物園にでも行こうなぁ」 夫が照れくさそうに言った。「御弁当楽しみにしてるゾ」 これぞ家族の幸せかぁ・・・これでいいのよね?と、あゆみの口のまわり をふきながら順子は笑っていた。 ### 【花うつろひ】秋桜(1) に続く・・・ ### ******************************************************************** E-MAIL: muscat@mtd.biglobe.ne.jp 《マスカット》QKD99314
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