長編 #4945の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「それは確かにそうなんだけどお。でもだいじょうぶ! なぜかというと、このあ たしが超一流の! 不世出の大魔術師! ラティファちゃんだからなのだあ!」 「はあ?」 「はあ? じゃないっ。いーい? ふつうならきみのいうとおり、魔術師になるに は厳格な適正検査とアウグレスによる秘儀的な数々の儀式、手続きを経た上で“賢 者の石”による選抜を受けなければなれるもんじゃないんだけど。でもあたしはア ウグレスより力があるから、多少のわがままはきいてもらえるの」 「はあ」 「だから、いまからきみはいきなり“賢者の石”の前にいけるのだよ。ここで認め られれば、晴れて今日からきみも魔術師の仲間入りだあ。やったね!」 「仲間入りだあ、といわれてもその」 「それじゃあさっそく、“賢者の石”の前に立つことにしよう! だいじょぶだい じょぶ、多少手順をすっとばしちゃってるけど、アウグレスなんかにがたがたいわ せないし、あたしの手腕をもってすれば恒星船に乗らなくっても“賢者の月”には すぐつけるんだから。ほーら、もうついた」 いわれてわたくしが周囲を見まわしてみると――たしかになんだか本来わたくし がいるはずのフェイシスのアパートメントのコンパートメントとは似ても似つかぬ、 荒涼とした岩と砂漠の光景が四囲に。 「うわあ。よくできた仮想現実だなあ」 風にとばされた砂がじゃりじゃりと顔にふきかかってくるのにぺっぺとつばを吐 きながら、わたくしは認めたくない現実に抵抗する心情でそうつぶやいたのでした。 むろん、どれだけジャックアウト・ボタンをさがしても、見つかるわけがありま せん。なぜならそのときわたくしはほんとうに“賢者の月”につれ出されてしまっ ていたからです。 稀代の大魔術師、ラティファ・クンネルトの手によって。 「さあ、それじゃさっそく“賢者の石”による選抜試験にしゅっぱつだあ! あ、 と、その前に、いちおうきいとこうかな。きみの名前。なんていうの?」 ん? と少女はわたくしの顔をのぞきこみました。 「あ……? いや、わたくしはその、グスタフ・クッシュと申しまして。いえその ですが」 「グスタフくんだねっ。助手らしいいい名前だよ〜」 「いやその、助手らしい名前だといわれてもあまり」 「だいじょぶだいじょぶ、試験ったってそんなたいしたことないし、きみだったら 合格まちがいなし! なにしろ助手らしいりっぱな名前ももってることだし。じゃ、 いってみましょう〜。わーい、ぱちぱちぱち」 うれしげに宣言する少女に、なかばこづかれるようにしてわたくしは“賢者の石” の前に立たされ―― 現在にいたるわけです。 要するに、くだんのヴァーチャルマガジンは、現在のわたくしのお師匠さま(マ イスター)であるラティファ・クンネルトがばらまいた撒き餌、あ、いやその、助 手選抜のための伏線であって、途中まではほんとうに単なる仮想現実の雑誌にすぎ なかったわけですが、見込みのありそうな人間を見つけたときは魔術的手段でラテ ィファのところにコールがかけられ、そこでほんもののラティファが雑誌のなかに まぎれこんで本格的に観察をはじめ、いけると判断した時点で強引に、いてっ、い やその、つまり要するに、勧誘をその。しかしあれは勧誘というにはあまりにも有 無をもいわせぬというかその、いや冗談です。 で、あとできいた話ですが。 たしかにマイスターはアウグレスなど鼻であしらうことのできるほどの実力者で すし、史上ならぶ者のないとまで絶賛された実力の持ち主ではあらせられるのです が……しかしあれはやっぱり詐欺です。 痛い、痛いったら、いいや今日はいわせてもらいますよ。だってわたくしは幸い にしてどうにか“賢者の石”に認められて魔術師のはしくれになることはできまし たものの、あそこで認められなかったものは命こそ落とさないものの痴呆になって そのまま“賢者の月”に封じこめられてしまうというのは厳然たる事実。実際、わ たくしより以前にあの雑誌にひっかかったひとたちのなかには、あなたにつれ去ら れたまま二度と戻らぬひとも何人もいたはずです。いや、噂じゃないこっそり追跡 調査してわたくし自身がそれ確かめましたから。 え? でもぶじ選任されてめでたく魔術師になれたからいいんじゃないかって? いや、でもわたくしは本気で魔術師になりたかったかどうかもあいまいなままでし たし、魔術師といってもあくまでも助手というか使いっぱしりというか雑用係とい うかマイスターの気晴らしのからかい相手というかぶつぶつぶつぶつ。 …………。 …………やっぱり不幸だ。痛いっ、痛いってばやめてください冗談です冗談です 冗談冗談冗談! ……ふう。 あきらめました。 ――了
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