長編 #4671の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
4 6人の傭兵たちは、クーベス大陸の各地で様々な戦いを生き延びてきた強者ば かりだった。彼らは、闇雲に襲いかかるようなことはせず、統合軍の偵察小隊が 開けた場所に出るまで待ち、それから奇襲を開始した。 最初に二人の弓兵が、十字弓で強力な矢を放った。それらは狙いたがわず、二 人の統合軍兵士の額を貫いた。同時にルタジは叫んだ。 「行け!」 4人が剣を抜きはなって突進する。弓兵の二人は、牽制用に数本の矢を連射す ると、自分たちも剣を抜いた。 ルタジは一番近くにいた敵兵に襲いかかった。敵兵はルタジの知らない言葉で 何か喚きながら、手にした棒状の武器を向けようとしている。それをはねのけつ つ、剣を斜めに走らせた。敵兵の肩から、反対側の脇腹までが見事に切り裂かれ て鮮血が噴き出す。 「やっちまえ!」ルタジは歓喜の叫びをあげ、次の獲物めがけて突進した。 そのとき、偵察小隊の指揮官が何か叫んだ。見慣れぬ武器の先端が傭兵たちに 向けられる。 傭兵たちは、落雷にも似た音と光を見た。 次の瞬間、ルタジの両側を走っていた傭兵たちが、殴りつけられたように吹っ 飛んだ。ルタジが驚いてそちらをみたとき、頭の横を何かが通り過ぎるのを感じ た。それはルタジのすぐ後ろにいた傭兵の額の真ん中に、小さな穴を作った。 傭兵の持つ生存本能に従って、ルタジは突進を中止して、横っ飛びに逃れた。 数発の銃弾が固まってすぐ横を通過し、ルタジは危うく死を免れたことを知った。 「退け!」 ルタジは残った部下に叫んだ。二人の傭兵たちは、すぐさまその命令に従った ものの、一人はその直後に背中に銃撃を浴びて倒れた。 ルタジと、最後に残った部下は、かろうじて襲撃を開始した茂みに飛び込むこ とができた。その後を追って銃弾が撃ち込まれてくる。二人は本能的に頭をかば いながら、匍匐してその場を逃れた。 「ルタジ、あんなのは聞いてないぜ」傭兵が怯えた声を出した。「何だよ、あり ゃ?魔法なのか?」 「おれが知るもんか!」ルタジは怒鳴った。「とにかく逃げるんだ。追って来る ぞ」 部下の傭兵は耳を疑った。いつものルタジならば、待ち伏せして逆襲すること を考えるはずだった。それに気付いたのか、ルタジは荒々しく唸った。 「ここは退くんだ。ヨンたちの仇は後で必ず取る。このままじゃ、二人ともやら れちまう」 「どっちへ逃げるんだ?」 「来た方だ。行くぞ。音を立てるな」 だが、統合軍偵察部隊は、彼らを簡単に逃がすつもりはなかった。素早く二人 一組に分散した小隊は、襲撃者たちの退路を予測して、わざと目立つように分隊 の一つを移動させ、残りの分隊がじりじりと追い詰めにかかった。 ルタジはすぐに、敵の意図を察したが、打つ手はなかった。数の少ない方を突 破するしかない。ルタジは抜け目なく拾っておいた十字弓を構えて、適当な方向 に射こむと、部下に合図して反対側に移動した。だが、敵はそんな陽動に惑わさ れはしなかったことが、すぐに明らかになった。 今や偵察部隊は、ほぼ半包囲態勢を整えており、位置を隠すことなど考えずに 急速に接近していた。 「くそ」 「ルタジ!」 「うるせえ。こうなりゃ、最後まで戦うぞ。一人でも多く道連れにしてやる」 ルタジは剣を握り直した。 リエが最初の襲撃地点に到達したとき、すでにそこには生者は残っていなかっ た。矢で頭を射抜かれた統合軍兵士が二人、剣で切り裂かれた兵士が一人、そし て銃弾を浴びた4人の傭兵たちの死体が転がっていた。 「まだ二人生きてるわ」 「あんなの放っておきゃいいじゃないか」トートが鼻を鳴らした。 「そうはいかないわ」 リエは統合軍兵士の死体から、ライフルとハンドガンを奪った。統合軍制式銃 のバリエーションだが、照準補正機構や、誘導レーザー装置などのエレクトロニ クス装備は取り外されていた。 死体はヘッドセットをつけていた。リエはそれを外すと、作動しているのを確 認して装着した。小隊周波数に合ったままで、指揮官の命令と応答が聞こえてく る。これで知りたかった疑問の一つが手に入った。 『第3分隊、そのまま10時方向へ進め。第2分隊、援護に回れ。第1と第4は 中央から進む。捕虜を取る必要はない。少しでも抵抗の気配を見せたら発砲しろ。 剣を握っているだけでもだ』 リエはルタジたちと統合軍偵察小隊を追って、森の中に飛び込んでいった。そ れほど遠くに行っているはずはなかった。 「トート」リエは走りながら、トートに叫んだ。「パウレンたちとの合流地点が どっちだかわかる?」 「わかるよ」 しばらく行動を共にしていて気付いたのだが、トートは方角を間違えるという ことが絶対になかった。入り組んだネイガーベンの街路のどこからでも、目的地 への最短距離を選ぶことができる。それが、盗賊という職業ゆえなのか、魔法的 生物であるゆえなのかは、これまで聞く機会がなかった。 「あいつらを包囲から脱出させたら、合流地点へ向かって。あたしは追撃をそら すために反対の方向へ走るから」 トートは反対したそうな顔を向けたが、リエはわざとそれに気付かないふりを した。 偵察小隊は包囲網を縮めることに夢中で、外からの襲撃に対しての備えがおろ そかになっていた。リエは最初の分隊を発見すると、ぎりぎりまで駆け寄ってか らライフルの銃口を空に向けて、セミオートで2発発射した。サイレンサーはオ フにしてある。 慌てて振り向く兵士たちに、リエは風のように襲いかかった。相手の銃口をひ じで跳ね上げておいてから、手刀を横隔膜に叩き込む。そのまま、兵士の身体を 盾にして、仲間の兵士に接近すると、地面に転がって足を払った。バランスを崩 した兵士の腕をつかんで一呼吸で肩の関節を外す。兵士は絶叫してライフルを取 り落とした。 『第3分隊、どうした!』指揮官の狼狽した声がヘッドセットから響いた。『お い、応答しろ』 『隊長!敵を発見しました』 『追い詰めろ!近くに新手の敵がいるかもしれん。警戒を怠るな』 『了解』 続いてライフルの連射音が聞こえてきた。リエは間に合うことを祈りながら、 そちらに全力疾走した。 『まだ逃げます』 『逃がすな!』 いきなりルタジたちと、それを追う統合軍兵士たちの姿がリエの視界に飛び込 んできた。ルタジは負傷したらしい部下の傭兵に肩を貸して、懸命に走っている。 密林に慣れていない統合軍兵士たちは、一気に急迫するというわけにはいかない らしいが、それでも差は徐々に縮まっている。 リエはライフルをバーストモードに切り替えると、統合軍兵士たちの2メート ル手前を狙ってトリガーを絞った。兵士たちが慌てて地面に伏せる。 『隊長!』兵士の緊張した声が響いた。『リエ・ナガセです!』 『何だと?確かか?』 『たぶん……ライフルを奪って、撃ちましたから……』 『捕らえろ!絶対に殺すな!』 統合軍兵士たちは、逃げる傭兵たちを無視して、リエに注意を向け直した。お そるおそる銃口を向けるが、誰も発砲しようとせず、そればかりか近寄ってくる 様子もない。 どうやら軍部は、リエのことを凶暴で残忍な怪物か何かのように伝達したらし い。おまけに地球上で、いやレヴュー9全体でも一、二を争う強力な魔法使いで もあるのだ。 こんな際でありながら、リエは小さな笑いをもらさずにはいられなかった。そ の笑みは、兵士たちをさらに怯えさせる結果となった。 それでも必死の勇気を振り絞ったらしい一人の兵士が、リエに向かって声をか けた。 「あ、あー、リエ・ナガセ中尉?」 「伍長!」リエはぴしりと相手の言葉を遮った。「上官にその態度は何だ!」 「エ、エクスキューズミー・サー!」 伍長は反射的に敬礼し、続いてその行為のばかばかしさに気付いたように手を 降ろした。 「リエ・ナガセ中尉。あなたは人類全体の裏切り者だ。だが、武器を捨てて投降 すれば、生命は保証する」 言葉は勇ましかったが、あいにく声が震えていた。リエは視界の端で、ルタジ の姿を探した。ちょうどトートが先導して、その場から離れていくところだった。 もう少し時間を稼ぐ必要がある。 「断ったらどうなるのだ、伍長」 「力づくでも、あなたを逮捕する!」 「ほう、力づくね」リエはにやりと笑って一歩踏み出した。「やってみたら?」 「そ、それ以上近づくな!」 「伍長、貴様は今、あたしを逮捕すると言ったわね。あたしに近づかなければ逮 捕することはできないわよ」 リエはさらに一歩前に出た。 『隊長、ナガセ中尉が……』ヘッドセットから囁き声が聞こえた。リエがそれを 装着していることに気付かないほど、兵士たちは動揺している。 『バカ野郎!そいつは裏切り者だ!もはや階級は剥奪されており、中尉などでは ないのだ。多少の傷は構わん。さっさと捕らえろ!元CTSSとはいえ、同じ人 間だぞ』 指揮官がミスを冒したことを、リエは兵士たちの顔に一斉に浮かんだ表情から 知った。CTSSは、統合軍のあらゆる不正規部隊の中でも、特に厳しい訓練を 課せられるエリート部隊である。現存する全ての兵器に精通し、たった一人で敵 地に潜入しても生存し、なおかつ敵を壊滅させる戦闘力を全員が有している。大 隊規模の人数に包囲されても、互角以上の戦いを展開できる戦術知識を持つ相手 に、数を減らされた小隊で挑むなど自殺行為でしかない。 「そちらの小隊の兵士が死んだことは弁解のしようがない。あれは誤解から来る 攻撃だった。だが、こちらも4人を失った。ここで双方が手を引けば、よけいな 死人を増やさずに済む」 リエは淡々と語った。兵士たちは顔を見合わせている。 がさがさと騒々しい音と共に、指揮官らしい男が現れた。まだ若く、それほど 実戦経験を積んでいるようには見えなかった。ライフルを構えていたが、さすが にいきなり発砲しようとはしなかった。 「貴様ら、何をやっている!」指揮官は語気荒く怒鳴った。「さっさと、あの女 を捕らえないか!9対1だぞ」 「少尉」リエは呼びかけた。「無益な争いはやめるのよ」 「黙れ。裏切り者に命令される筋合いはない」 「命令ではない。提案をしているのよ」 「同じことだ。そちらから兵を殺しておいて、手を引けだと?ふざけるな」 もう、トートたちは安全地帯まで逃げ込んだことだろう。深い森の中である。 一度姿を見失えば、再度の追跡は不可能だ。そう判断したリエは、態度を少し高 圧的なものに変えた。 「どうしてもやるなら、やってみるといい。ただし、少尉、部下に押しつける前 に自分で手本を示すことね。もっとも、臆病者には無理だと思うけど」 「誰が臆病者だと?」 だが、指揮官は挑発に乗ろうとはしなかった。ただ、にたりと奇妙な笑いを見 せただけだ。リエは眉をひそめた。 次の瞬間、リエはその理由に思い至って舌打ちした。注意を指揮官から周囲に 向け直すと、その直感が裏付けられた。20人以上、およそ二個小隊分の人数が あらゆる方向からリエを包囲しつつ、急速に接近していた。 「そういうことね」リエは視線を指揮官に戻した。「あたしをここに足止めして おいて、予備周波数で別の部隊を呼び出したってわけか。なかなか知恵が回るわ ね、少尉」 「サンキュー・マム」少尉はくすくす笑った。「高名なリエ・ナガセ『元』中尉 からお誉めいただくとは恐縮ですな」 リエはぐるりと周囲を見回した。もはや、姿を隠して接近するのをやめたらし く、20人あまりの兵士が、大っぴらに近づいていた。姿勢を低く、ライフルを 腰だめに構えている。その銃口は残らずリエを向いていた。
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