長編 #4663の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
* * 「お。ちょうどよかった」 相羽と唐沢、勝馬の三人で学校から帰っていると、珍しくも長瀬が合流して きた。二年生になってクラスが別々になってから、やや疎遠になっているが、 唐沢とは同じ運動系の部に所属しているだけあって、話す機会も多いらしい。 「何がちょうどいいんだって?」 結果的に一番近くに立つ格好になった勝馬が、鞄を持ち替えながら聞き返す。 「大したことじゃない。唐沢、おまえ言ってただろ。あの話」 長瀬の目線が勝馬からその隣へと移る。 「もしかすると、遊びに行くって話か」 「当たり。どうなった?」 「全然、進んでないぜ。全員の都合のつく日がなかなか」 「おおい、状況を説明しろよ」 会話に割って入る相羽と勝馬。学校から離れて行く速度は、会話の弾み具合 に反比例して遅くなる。 「俺達に関係ないことなら、別にかまわないけど」 「いや、なきにしもあらず。前に遊園地行っただろ、涼原さんや町田さん達も 入れて」 「ああ」 唐沢の問い掛けにうなずいたものの、まだ全容は掴めない。 「それが?」 「その第二弾をやろうってことさ。ぽろっと喋ったら、長瀬も乗り気になっち まってねえ、ほんと、好きなんだから」 「おまえに言われたかないな。部で練習してても、きゃあきゃあ言われるのは テニス部。こっちは孤独な――」 「声援は俺のエネルギーになるの。あれがなかったら三分も保たない」 「ウルトラマンの出来損ないか」 唐沢と長瀬の脱線話に付き合っていては、らちがあかない。 相羽は唐沢と位置を強引に入れ替わり、二人の距離を最大限に広げさせた。 「みんなが揃うなら、俺も乗る」 「同じく」 相羽と勝馬の意思表明に、唐沢は予測していた通りという体で首を縦に三度 振った。 「野郎ばっか頭数揃えても仕方ない。当然、女の子の予定を優先して日を決め よう。まあ、狙い目としちゃ文化祭直後の休みなんだが、どうもうまくないん だよな。――相羽」 「何だ、いきなり?」 「涼原さん、忙しいのか? 日を色々と挙げて聞いても、どうなるか分からな いって返事ばかり」 「嫌われてるんだろーよ」 相羽が応じるより早く、長瀬が突っ込む。唐沢は憮然とした目で見やったが、 すぐさま得意そうに笑った。 「おまえなんか話する機会もないじゃん。かわいそうに、別のクラスで」 「同じクラスなら負けんよ」 「おまえら、いい加減にしてくれ」 相羽が凛とした声で割って入った。もしここが教室であれば、机を苛立たし げに叩いたことだろう。 二人が黙ったところで、相羽は改めて唐沢に聞く。 「どういうわけで、僕に聞く?」 「決まってるだろ、同じ部じゃないか。何か聞いてないかと思って」 「……別にない」 (純子ちゃんがモデルやタレントをやってるのを、唐沢にはまだ伝えてなかっ たっけ。すっかり忘れてた。まあ、しょうがないか。ぱっと広まってしまう確 率、なきにしもあらず。と言っても、そろそろ打ち明ける時期が来そう) 内心、相羽はそんなことまでも思った。 「今回は唐沢に幹事を任せきりか?」 長瀬が心配するような調子で言った。対して応えるのは当人。 「その通り。本領発揮のとき到る」 自分自身を指差し、にやりと笑う唐沢。 「せいぜい、参考にしてくれたまえ」 「よく言うぜ」 号令でもかけられたみたいに、他の三人はすたすたと歩みを早めた。 唐沢は素早く追い付くと、大真面目な口調で再開する。 「今度はちょいと勝負かけさせてもらうからな」 相羽と勝馬と長瀬はお互いに目線を送り合って、不思議さ故に首を傾げる。 代表する形で勝馬が問うた。 「何で俺達に断るわけ? 必要ないんじゃねえの」 「ふん、ないとは言い切れんからな、ちくしょ」 「何なんだよ、一体……」 「話は換わるが――長瀬」 怪しむ気持ちを残したままの相羽達に、唐沢は一方的に話題転換を行った。 「おまえが加わりたいと言った理由を聞こうか」 「楽しそうだから、だけじゃだめか?」 「――だめだな。正直に、羨ましいと言ってくれ」 「何じゃそりゃ」 唐沢と長瀬の軽妙なやり取りに、残る相羽と勝馬はまた始まったかと首を振 った。 「今さらだけど、第一と第二、どっちの小学校を出たかで、違うよなあ」 * * 二年生男子の人気投票の一件は、話が大きくなりつつあった。 文化祭実行委員会が乗ってきたのだ。その結果、学年毎・男女別に行おうと いう方向で進んでいる。無論、正式行事として。 「にゃはは。何だか、大げさなことになったわね」 みんな揃っての下校の道中、人気投票を言い出した張本人は、自嘲気味に笑 った。 「どうしてああなったの?」 「人気投票のアイディアを、委員やってる友達にちらっと喋ったら、いつの間 にやら。ははははは……」 井口の疑問にも、町田は笑いながら答えた。 「あの、私、先生達の何人かが反対してるって聞いたわ。見た目だけで判断す るのはよくないって」 不思議がる物腰の遠野。 「それなのに、どうしてこんなに話が膨らんでるのかなぁ……」 「部門分けする案が出てるんだって。えっと、見た目部門と性格部門」 「それってジョーク? 笑える」 「でも、見た目だけで決めるのと、性格だけで決めるのって、どっちもどっち じゃないかな?」 「じゃ、二つを合わせて総合部門を作るってか」 町田の面白おかしい口ぶりに、皆、ひとしきり笑った。 「ま、結果が見物なのは変わりないわ」 自分達女子のことは棚に上げて、町田が付け足す。 話題はそれから、文化祭での出し物に移った。 「遠野さんのところは今年、何?」 「それが、去年とほとんど変わりない予定なの。とにかく、部誌を作るのにて んてこ舞い……ううん、正確に言うと、原稿が集まるかどうかが鍵なんだけど」 困ってるのに楽しそう。遠野はそんな微笑みを浮かべた。 「漫画だけじゃなくて、小説も載っけられるんなら、相羽君を、えーと、ゲス トにしちゃうという手もあるのにねえ」 「穴埋めにしとくの、もったいないかも」 純子の冗談半分の提案を、井口がくすくす吹き出しながら批評した。 「それで、調理部では何をするの?」 「ちょっとごちゃごちゃしててね……全体の見通しが立ってないんだ」 部長の町田は、疲れたように空を仰ぎ見た。 いつの間にか、一番星が輝いている。 「ごちゃごちゃ?」 「そう。茶道部と合同企画ってのがあって、なかなか足並みが揃わないってい うか、思惑にずれがあるっていうか」 前置きしてから、ざっと概略を伝える。どうにもならないけどとにかく苦労 を聞いてよ――あたかもそんなニュアンスで。 「運動会のときの話が、大変な方向に発展してるのね」 「こんなこと、相羽君が何で言い出したのやら」 突き詰めると責任の掛かってくる純子は、みんなの会話を身の縮む思いで聞 いていた。うなだれているから、本当に背が低くなったように第三者には見え るかもしれない。 しばらくすると話題がまた換わったので、ほっと面を起こした。 「どこ行くのがいいかな」 井口がつぶやくように言った。文化祭後の遊びの話である。今回は唐沢任せ の予定となっているが、こちら側も遠慮なくリクエストを出していくのだ。 「唐沢君が言うところの『音楽鑑賞』は、日がうまくないって、だめになった でしょ」 「そうそう。だから、希望を出すなら今の内。何でもあり」 「言うだけなら無料だもんねえ」 町田を含めた他の面々が楽しげにしているのに比べると、純子は完全には乗 り切れない。自分が参加できるかどうか未定だからだ。 (ほとんど毎日、レッスンがあるのよね。仮のスケジュールは当てにならない。 たまにだけど撮影の仕事も入るし) みんなと遊べないことで落ち込み気味にならなくもないが、今度予定されて いるグループデートに限っては、他にも懸念がある。 (白沼さんも来るかもしれないって言ってたのは、どうなってるのかな。見た 限り、少なくとも唐沢君とは仲が悪そうだけど、大丈夫なのかしら。それに、 やっぱり相羽君のこと……) 頭が痛くなりそう。その意味では参加できない方がいい。気楽だ。 「それにしても」 富井や井口の談笑する様子を眺めていると、思わずつぶやいた。続きは口の 中だけにとどめておく。 (のんきよね、どう見たって。それとも私だけが、気を回し過ぎなのかな?) 季節外れの台風が来たのではないかと思えるほど、文化祭当日は荒れ模様だ った。雨こそ少量で勢いはないが、激しい嵐が吹きすさぶ。おかしな表現でか まわないなら、「突風がひっきりなしに起こる」といった感じ。空気の塊が窓 ガラスや貼り紙、看板を打ち鳴らしていた。 「こりゃあ、客入り、期待できないね」 家庭科室から外を眺めつつ、町田が嘆息した。先ほど窓をちょっとだけ開け てみたら、雨や葉っぱが飛び込んできて大変だった。 「つまんなーい。楽なのはいいんだけれど、寂しいのはだめなんだぁ、私」 「郁。言わなくても、あんたの顔を見てれば分かる」 うんうんとうなずく町田。 「ま、うちの生徒相手に頑張るしかないわね。そう言えば、一年生! クラス メート全員に声かけた?」 返す刀で後輩部員を振り返る。このときばかりは恐い部長の顔がちらと覗く。 「全員は無理ですよー」 「でも、できる限り努力しましたから。来なかったら、来ない方が悪い!」 「そうそう。それに家族は来ます。こんな天気でも」 にぎやかに答える一年生部員達。正式な開始まではまだ三十分ほどあるが、 一年が受け持つ分担はすでに準備が整っている。 あとは白沼達茶道部との連携最終確認。そして……。 「こんな格好をする意味がなくなった気がするぅ」 着替え終わり、フラッシュ・レディと化した純子は、小さな子の来訪があま り見込めない天候に、すっかりすねていた。 「だいたい、何で今年もコスプレしなきゃいけないのーっ」 「遠野さんとこの一年生が見たいって言ってたからじゃない」 冷静な口ぶりで指摘するのは井口。もちろん、顔を見れば、面白がっている のは明らか。 「遠野さんのところが悪いとは言わない。私が言いたいのは、調理部の主旨か ら外れてる!ってことなんですけど」 拳を握りしめて力説する純子。応援するかのように、風が鳴った。 「そういうことは、去年の内から主張するように。二年目、しかも正式な部員 になってから言っても説得力ないよん」 町田がほくそ笑んでいた。 「ただ、茶道部の人達に何て感想を持たれるかは、私としてもちょっとコワい。 話し合いのとき、偉そうに演説をぶったもんねえ」 「うう」 思わず呻いた。頭痛がしてきそうだ。本当に頭を抱えていると、部屋の片隅 でぽつねんと外を見やっていた相羽が、急に立ち上がって近付いてきた。 「お茶を点てるフラッシュ・レディっていうのも、結構絵になるかもしれない」 「気休めはよして」 「気休めじゃなく、冗談です」 台詞とは正反対に、何故か真顔の相羽。そんな彼も去年と同じくセシアに扮 しているのだから、第三者的に聞いているとかなり滑稽な会話かもしれない。 (今年の三月で放映終わったと思ったら、新番組『フラッシュ・レディ★R』 だなんて……) キャラクターは前作とほとんど一緒。強いて挙げれば、純子扮するレイの髪 型が新しくなった。長いお下げ髪を二本垂らした格好で、天使の翼をイメージ しているとか。やるとなったらとことんやるタイプの純子は、今日のためにわ ざわざ髪型を合わせて来た。 ――つづく
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