長編 #4551の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
京都旅行記 えびす 【1998年7月18日】 朝10時ごろ、京都着。暑い。 前日の電話での打ち合わせ通り、地下鉄に乗る。京都の地下鉄の自動改札 は、切符を入れるところが、進行方向に対して垂直ではなく、少し斜めにな っている。かえって切符が入れにくいような気もする。吊り革は、円ではな く三角で、これはつかまりやすかった。 某駅を降りておとうとくんの下宿に電話をし、ローソンの前で南アルプス の天然水を飲みながら(さいきん、ミネラルウォーターにちょっと凝ってい るのだ)ぼーっと待っていると、作業服を着たおっちゃんが道を尋ねてくる。 わしゃ、ここらへんの者じゃないんで、なんも分からん、ちゅうの。なんだ か分かんが、どうも、おいらは、話かけられやすい体質らしく、集団で道を 歩いていたりしても、必ず道を聞かれたり時間を聞かれたりするのは、おい らである。過去、自動車の助手席で信号待ちのときに、通行人に「今何時で すかー」と聞かれたこともあり。あと、学生の頃、まだ煙草吸わなかったと き、ジッポーのライターだけ持ち歩いていたのだけれども、「すんません、 火貸してください」とか。なんでライター持ってるの分かったんだ? しばらくして、おとうとくんが自転車で到着。 自転車はローソンの前に置いてもらって、そのまま地下鉄で某駅までゆき、 晴明神社までてくてく歩く。境内にはひとはいないが、受け付けのある建物 の中に、占いだか人生相談だかで、ひとが数人いた。こっちは、さすがにも のすごく緊張して、写真すら恐れ多くて撮れない。妖怪好きのメッカだよ、 ここが。ついに来ちゃったよ。帰り、おとうとくんに見せたけど、鳥肌立っ てたもんなあ。 たまたま屋根瓦の葺き替え中で、晴明さんは隣の小さな社にお引っ越しし ていた。手を合わせ、頭の中で、「わたくし、たまに妖怪モノを書くチンケ な奴ですが、どうかお見知りおきを。よろしくおねがいします」と挨拶する。 屋根の修復のため、寄付金を集めているらしく、30センチ×10センチ ぐらいの銅板に名前を書き、受け付けで「書きましたあ」と言って2000 円納めると、銅板を奉納してくれるらしい。こんな有名人も寄付してくれま した、ということで、 京極夏彦 の名がしたためられている銅版も置いてあったりして。彼がここに来たの は今年の5月ぐらいのようだ。あと、7月15日、赤井英和、とか。 さて晴明グッズでも買おうか、と受け付けにゆくが、なんだか忙しそうで なかなか声をかけることができない。困った顔で待っていると、参拝にきた のか、わりと若いおにーさんがはなしかけてくる。京都訛り。彼は、どうも、 子供か何かに名前をつける相談に来たらしく、ここ、有名なところなんです か、とわたくしに問うので「そうらしいですね」とだけポーカーフェイスで 答えておく。ふふふ。 神社のひとがやっと手があいたようなので、グッズをいろいろ買う。魔除 け(500円)×2、みずかがみ御守り(1000円)×1、屋根瓦のかけ ら(1000円)×1。わーい、なんだかRPGでアイテム買ってる感じだ ネ。あと、銅板を奉納した、と言ったら、ステッカーをくれた。すべて、例 の星マークつき。計5000円。魔除けは、普通の御守り形で、白。みずか がみ御守りは、銀色の円形ペンダント。銀色の上に黒で、例の星マークが書 かれている。屋根瓦は、たまたま修復中につき、古いのを差し上げます、み たいな感じだった。ラッキー。ずーっと晴明さんを守ってきた瓦だからなあ。 とりあえずウチでゆっくり休みなされ。瓦も、例の星マークつき。入手した いかたは、お早めに晴明神社ゆくといいかも。以前、屋根を修復したのは明 治の頃だったそうなので。 いやー、とにかく緊張した。失礼なこと、しなかったよな、俺? うん、 たぶんだいじょうぶだ。ふーッ。 そのあと、鳥肌をたてながら、晴明神社の北東にある神社になんとなく入 る。いや、信号のタイミングが噛み合ったので。そこには蹴鞠のカミサマが いるらしく、ワールドカップ直前のサッカー関係の絵馬がかけてあったりし た。軽く挨拶をして、出る。 そこからてくてく歩いて、京都御苑に。 うちの叔父が住んでいた建物は、昔、遊廓だった、とたまたま最近知り、 ああ、それであの家、不思議な雰囲気だったのかあ、としみじみした。隆慶 一郎の小説で最初に読んだのは『吉原御免状』で、どーして、おいら、こお ゆう世界に魂を惹かれるのかなあ、と思っていたが、一気に疑問がそのとき 解決した。色事はぜんぜんダメなわたくしだけれども、なーんか昔のという かフィクションの中のフーゾク世界ってイイよなあ、とか最近思う。 とにかく、隆慶一郎ファンとしては、とりあえず京都御苑行かないわけに はいかんでしょう。おとうとくんもファンだし。 いやあ、でかい。とにかく空間が広い。ひともあんまりいないし、かなり いい感じ。こんなにいい雰囲気の場所なのに、なんで日本人あんまりいない んだ? 暑いから海でも行っちゃってるのかなあ。 門のところからちょっと御所の中を一瞥してみたが、警備も凄くレベルが 高そう。こんなところに平気な顔で忍びこんじゃう隆慶一郎世界の忍者って、 めっちゃウソくさくてカッコイイね。とかいう会話をしながら、ひたすらて くてく歩く。 だがしかし、暑い。ペットボトルのミネラルウォーターも空になる。 ふたたび地下鉄に乗り、おとうとくんの下宿でちょっと休憩することにす る。おとうとくんが、ここらへんには「六波羅蜜寺」というのがあるらしい ので、行ってみよう、というので、地下鉄を降りてからゆくことにする。そ んなに有名なのけ、と聞くと、いや、以前、1回、通りすがりのおねーさん にそこの場所聞かれたから、たぶん有名なのであろう、と。 てくてくてくてく歩いていると、鞄がどんどん重くなってくる。うーむ、 こなきじじい現象か? 瓦がじわじわ重くなってきてるんじゃねえの、とか バカ話しながら、汗だらだら流しつつ、頑張って歩く。おとうとくんが、鞄、 自転車の前かごに入れたらどう、と言うが、大事な晴明グッズを運ぶのに、 そんなラクをしてはならぬ、ということでじぶんで運ぶ。 六波羅蜜寺は、「都七福神の一」とかいう設定で、弁財天がまつってある らしい。おとうとくんに、弁財天は音楽のカミサマなんだから、ちゃんとお 参りしておけよ、と教えると、慌てて真剣に拝む。いや、おとうとくん、音 楽やってるんで。 いやしかし、空也上人のあの像が置いてあるのは、まさか、ふらりとなん となく入ったココだとは思わなんだ。あの、口から小人が出てるやつ。 500円納めると、いろいろ見せてくれるようなので、ありがたく、そう する。 肉眼で初めてみる空也上人の像は、なんだかひどく苦しそう。見ていたら 悲しく苦しくなってきたので、そこそこで切り上げる。 凄かったのは、運慶座像。すこし暗い部屋の中、斜め前からじーっと見て いたら、今にもこちらを向いてニヤリと微笑みそうな感じ。もう、こっちの 目が釘付け。月並みな表現だが、動きだしてもホントにおかしくない。いや あ、いいもんを拝ませてもらった。 今夜はK−1でも観ながらすき焼きでもしませう、ということで、スーパ ーでいろいろ買いつつ、おとうとくんの下宿へ。なんだ、清水寺のすぐそば じゃねえか。 下宿につくなり、速攻で水浴びをせさてもらう。昼2時ぐらいだから、い ちばん暑いときだ。当然、そのあとはスーパーで買った弁当をつまみに、ビ ール。というか発泡酒。おとうとくん、ビンボーなので、発泡酒にしている そうだ。まあ、唯一、飲めないこともないキリンの端麗生だったので、許す。 HOPSなんかだったりしたら、げんなりしているところだ。 ほとんど脱水症状直前だったので、ビールのうまいことうまいこと。弁当 もうまい。 1時間ほど休憩した後、清水寺へ。 外人さん、いっぱい。あと、「京都ホテル(だったか?)に宿泊のかたの 参拝をお断りします」との看板もありながら。京都ホテルは京都の景観を壊 すホテル云々とかの説明が書いてあって、ややがっくり。カミサマに挨拶に ゆくのに、どこそこのホテル泊まってちゃ、ダメ、ってのは果たしてどんな ものか。だれだって、カミサマに会いにゆくのは自由なんじゃねえの、普通。 まあ気持ちも分かるが。仏教って、もっと寛容なもんじゃねえのか。 なんか嫌な感じだったので、たまたまそこにいた疲れ切った大黒様に「お 疲れさまです」と挨拶だけする。あと、阪神大震災関係の賽銭箱に何十円だ か何百円だか投入。奥の林の中では、ベンチに向かい合って座ってチューし てるカップルとかいながら。はあ。べつにいいんだけどね。 清水寺、稼ぎ頭なんで、しょうがねえとは思うが、どうもこの欲望渦巻く 空間、っていうのは苦手だ。カミサマも疲れるだろう。まあ、しかたないか。 4時ごろ、下宿に戻って、なんかビデオでもみせてくれー、と言うと、お とうとくんがブルーハーツのビデオをごっそり出してくれる。 これよりしばらく、不思議時空がまたそっと触れてくる。 ビデオ挿入。デッキのメーカーは、ORION。確か韓国製かな? 壊れる。 取り出すと、テープが黴だらけ。それでテープが引っついて、動かなくな っており、デッキの駆動系が負荷でイカレたらしい。なんだか可笑しくて、 ゲラゲラふたりで笑う。 「これは、観るな、ちゅーことかいな。晴明のせいじゃねえの」 とかバチ当たりなことをおとうとくんがぬかす。こら。 「失礼なことをぬかすない」 「だって、あんたが来なかったら、このビデオ(ソフト)たぶん一生観ない ようなヤツだったじゃん」 「いや、違う。もし、引っ越して新しいデッキを買った直後に、たまたまそ のテープを挿入してみろ。一発でイカレるぞ。どうせ壊れかけの古いデッキ だったのだから、これでいいのだ」 「そうかなあ」 しばらく、乾式クリーナーとかかけたりしてみるが、全然ダメ。画像にめ ちゃくちゃなノイズが入る。30分ぐらい、いろいろやってみるが、駄目。 機嫌悪くなったおとうとくんが、台所でなにやら片づけているスキに、ブ ルーハーツの最後のライブビデオ『ザ・ブルーハーツの凸凹珍道中』をなん となく挿入してみる。もちろん、内容は知らない。 突然、直る。 台所のおとうとくんに声をかける。 「直ったぞ。どうだ。参ったか」 「うむ。参った。さすが元ビデオ屋」 ってな感じで、凸凹珍道中を観る。いやあ、そう言えば、わしらも凸凹珍 道中だったなあ、とか後で思う。 くたくただったので、ぼーっ、と観ていたが、急にあることに気づく。幸 福の科学にハマッてしまったベースの河ちゃんのバックが、なんか怪しい。 機材入れだかなんだかに、でっかく例の星マークが。 「見ろ。晴明さんが直してくれたのである」 「いや、違う。偶然である」 「むろん、偶然である。ブルーハーツが東京ゾンビという曲の中で言ってい る通り、日が昇るのも偶然である」 というような会話をしつつ、世界観の違いからやや険悪な雰囲気になって きたので、クールダウンしようと、ひとりで散歩に出かける。 【つづく】
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