長編 #4380の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「やばい」 「そら見ろ、いわんこっちゃない」 不吉な言葉がおり重なってでてきた。 サフィーヤ姫もぎくりとして立ちあがり、胸の前で手を組みながら問いかける。 「追手ですか?」 「ええ」と真顔になってラエラがうなずく。「ガンシップが三機」 「だいじょうぶ」顔面蒼白になりながら、マヤがむりやりへらへらとした表情をう かべる。「まだ見つかっちゃいないって」 「ばか」とあきれたようにラエラがいった。「これでますます出られなくなっちま ったじゃないか。だいいち、でたらめだろうとなんだろうと機銃掃射でいぶりだし にかかられたら――」 そのとき、まるでラエラのその言葉がきこえたかのように、三機のガンシップは その機首に装備されたレーザー砲からパルスレーザーの掃射を開始した。 夜空にストロボライトのように光束が点滅し、砂上につぎつぎに砂煙があがりは じめる。 「近い。――やばいよ。どうしよう」 にわかにマヤがあせりはじめる。 ラエラもくちびるをかむばかりだ。八方ふさがりだった。 そのとき―― 『まったく、世話をやかせるやつらだ』 ふいにマヤのついたコンソールの端で、通信機が声を発した。 ぎょっとマヤとラエラは目を見あわせ―― 「……レイ?」 マヤがきく。 『ほかにだれがいる? わかりきったことをききかえすのはバカげた行為だぞ、マ ヤ』 嘲弄するように憎々しげなセリフが、回線をとおして流れてきた。 「うるさい」マヤはむきになっていい、すぐに心細げな口調にかわる。「レイ、ど うしよう。ボクたち、ドジっちゃったみたい」 「ドジったのは、あんただけだよ」 『仲間われはあとにしたまえ。ジルジスから連絡を受けて観測してみた。事情はだ いたい把握できている。まったくどいつもこいつも世話をやかせてくれる。たまに は楽をさせてほしいもんだね』 「軌道上でお留守番、ての以上に楽な役まわりがあるのなら、ぜひお教えねがいた いもんだね、レイ」 からかうようにラエラが口にすると、本気で憤慨したような口調が通信機からき こえてきた。 『冗談じゃない。きみの口からそんなセリフがでてくるとは、じつに心外だね、ラ エラ。いまの痛烈な一言で私の繊細な恋心はずたずたに引き裂かれてしまったよ。 私の専門はあくまで頭脳労働。そこのところはきみもよくわかってくれているもの と思っていたのに』 最後のセリフは、まるでだだっ子がすねているようにひびいた。 ラエラとマヤは顔を見あわせてひそやかに笑う。 その笑い声がきこえたのかきこえないのか、とにもかくにも回線のむこうで声は つづけた。 『まあ、それはひとまずおいておこう。いいか、時間がないから手っとりばやくい うぞ。あと三分ほどでそちらのちょうど頭上に到達する。そのときに一撃だけ、威 嚇射撃をくらわせて追撃隊のすきを誘う。あとはそちらで勝手になんとかするがい い』 いやっほう、とマヤはとびあがり、ぱんぱんとラエラと手をたたきあった。 目をまるくするサフィーヤ姫に、ラエラがとびつくようにしていった。 「わたしたちの仲間です。軌道上に待機していたんですけど、手を貸してくれるそ うなの」 「レイ、一撃だなんてけちけちせずに、一気にやっつけちゃてよ」 『調子にのるな、マヤ。そんなことをしたら、こちらの位置がばれてしまうだろう。 サディレシヤの宇宙軍はここいらでは抜群の規模だということをわすれたのか? いいからきみたちはさっさと準備にかかるべきだ。いっておくが、後方からさらに 三機編隊のガンシップが二組、そのさらに背後から重火器を装備した部隊が着々と 接近中だということを忘れるな。依然としておまえたちはきわめて危機的な状況下 にあるのだからな。では、あとのだんどりはそちらにおまかせする。勝手にやって くれ。いっておくが、この私に威嚇射撃以上のものを期待しないでくれよ。まった く、頭脳労働以外をさせるなといつもいっているのに、おまえたちはほんとうに』 ぶつぶつと回線をとおして苦情をのべたてはじめた。もちろんそれにはすでに興 味をうしなったように、マヤとラエラはさっそく、てきぱきと火器をそれぞれ手に しながら、だんどりを手短に確認しあう。 そのあいだにも三機のガンシップの機銃掃射はつづけられていた。 確実に、砂中にひそむ“シフリーヤ”に近づいてきている。 ボルト・ランチャーを背負い大型のブラスターを腰部のホルスターにぶちこんだ マヤが、ふたたび操縦席に腰をおろし、くちびるの端をぺろりとなめながらモニタ ーに見入った。 「たのむよ、レイ。まにあわせてよ」 ひとりごとのように口にする。 機外から、不吉な掃射音が直接ひびきはじめた。 徐々に近づいてくる。 サフィーヤ姫はごくりとのどをならす。 凶獣の咆哮のような恐怖をさそう銃撃音が、いましも頭上にふりかかってくるか、 と思えたとき―― 『いくぞ』 フラットな口調でレイが宣言した。 それから一拍の間をおいて――外部監視モニターが白熱した。 夜天の闇を切り裂くように、青白い光の柱が、天空よりふりかかってきたのであ る。 大出力対地レーザー。 一撃は、夜の砂漠を一瞬、光の海へとかえた。 激烈なコントラストをともなって砂漠の陰影があざやかにうかびあがり、頭上を 遊弋する三機のガンシップのものも含めた、ながい、ながい影を砂上にきざむ。 一瞬のタイムラグをおき―― 壮絶な衝撃波がわきおこった。 ガンシップ部隊の後方で火球がぐわりと膨張する。 つづいて爆風が、偵察機を含めた遊弋する四つの機影を、風に吹きとばされる羽 虫のようにつぎつぎに吹きとばした。 ほぼ同時に、たたきつけるような衝撃が一気に、膨大な量の砂とともに“シフリ ーヤ”を天上へとまきあげた。 せまくるしいコクピット内で、壁に激突しかけたサフィーヤ姫を、ラエラがすば やく抱きとめる。 一瞬の浮遊感覚。 そして、たたきつけるられる衝撃。 マヤも、そしてラエラまでもが、苦鳴をそののどからもらす。 同時に、どどどどとふきあげられた大量の砂が一気に頭上からふりかかってきた。 ふたたび“シフリーヤ”の機体が砂のなかへとうもれていく。 「エンジン始動だ!」 叫びざまマヤがコンソールをたたき、装甲機は瞬時にして獰猛なうなり声をあげ た。 「マイクロ波、射出! ロッククラッシャー始動!」 腹の底からしぼりだすようにマヤが叫び、こたえるようにして異様な回転音がう なりをあげる。 “シフリーヤ”が瞬時身じろぎ、つぎの瞬間荒々しく前進を開始した。 砂をわって地上にとびでる。 着地の衝撃。 そのときにはもう、マヤもラエラもうごきだしていた。 マヤはすばやくハッチをひらいて外部におどり出、そのあとに軽々とサフィーヤ 姫を抱えあげたラエラがつづく。 砂上におりたち、体勢をたてなおそうと空中でその機首を右往左往させているガ ンシップにむけ、マヤはボルト・ランチャーをかまえた。プラズマ弾を発射する武 器だ。直撃させれば、一撃で戦車でさえも粉砕できる。 どう、と重い音とともにマヤのボルト・ランチャーが蒼白の眩光を吐きだした。 同時に――ガンシップの一機が吐きだしたレーザーの一撃が“シフリーヤ”に襲 いかかった。 マヤたちの背後で、装甲機が切り裂かれる。 そのあいだにも、大気を雷鳴のように激烈に振動させながら白熱の光球が宙を疾 走し、ガンシップのひとつへと吸いこまれていく。 かろうじて、ガンシップはプラズマ弾の直撃を回避した。 が、機体下面を高熱にあぶられ、バールシステムに変調をきたしてよろよろと落 下していく。 それをたしかめもせずに、マヤは砂上を走りはじめた。 砂を蹴たてて、まるで精悍な野獣のように疾走していく。 いまだよろめきながらも、残った二機のガンシップは、その機首を走るマヤにむ けた。 先端にぶきみに生えた、とげのような数本の突起物の先端が、ゆらめきながら白 光をはなちはじめる。熱対流の発生と周囲の大気のイオン化――レーザー発射の予 兆である。 あぶない、と、叫びがサフィーヤ姫ののどまで出かかった。 墜落と浮上 ほぼ同時に、肩口にサフィーヤ姫を抱えあげたまま砂上に片膝をついたラエラが、 すばやくボルト・ランチャーをかまえた。 「ちょろいぜ」 ぽつりとつぶやき―― 砲身から白熱光が吐きだされる。 雷鳴音で周囲を激しくふるわせながらプラズマ弾が飛翔し、二機のガンシップの あいだに割って入った。 ダメージは与えなかったが、衝撃で二機はおおきくぶれながら左右にはじける。 その下に立って、マヤが第二弾を発射した。 至近距離からプラズマ弾をあびせられ、一機がよけるひまもなく機体後部に被弾 した。 火を噴きながら宙をよろめき、斜滑空しながら墜落する。 ずど、と砂煙をあげて接地し、左右に砂塵を盛大にまきあげながらそのまま前方 へ滑走する。 爆発。 噴きあがる爆煙を背にして、脱出シートらしきロケット噴射がふたつ、夜空を遠 ざかっていく。 同時に、三機めの頭上でラエラの放った第二撃が爆発した。 ぎりぎりでダメージを回避できる距離だが、追われるようにしてガンシップは地 上にむけて大きく後退する。 「もうちょっとだ!」 その下方で、マヤが叫んだ。 まるでその声がきこえたように、ラエラが第三撃をぶっ放す。 さらにガンシップを地上へと追いやるようにして、プラズマの壮絶な光球が上空 で爆散した。 ガンシップのランディング・リグが、ずざりと地上に接地して砂煙をあげる。 「うわちちち!」 火の粉がふりかかってくるのにとびあがりながら、マヤはボルト・ランチャーを 思いきりよく砂上に捨てて、ガンシップめがけて走りだした。 浮遊しかかるところへ、ランディング・リグにとびついた。 もがきながら懸垂の要領で身をひきあげる。 が、体勢をととのえないうちに、眼前で扉が横にスライドした。 ハンドガンを手にした兵士が、風と砂を片手でよけながらあらわれる。 銃口をマヤにむけた。 トリガーにかけられた指に、力がこめられる。 まにあわない――マヤは奥歯をかみしめた。 つぎの瞬間、兵士は肩口から血をしぶかせてからだをおよがせた。 地上にどさりと落下する。 ラエラの射撃だ。上下に激しくゆれながら滑空する標的に、おどろくほど正確な 一弾である。“千の目”と彼女が通称されるゆえんであった。 ふう、と吐息をつきながらマヤはリグの端に足をかけ、ようやく完全に足場を確 保した。 見おろすと、砂上にうずくまった兵士が、とりおとした銃をさがしている。 「ご無事でなにより」 つぶやき、マヤはひらいた扉からすばやく機内にすべりこんだ。 コクピットについた兵士が、なにごとかわめきちらしながら銃口をむける。 エンジン音と風切り音にまじって、重い銃声がなりひびく。 熱いものが、マヤの頬をすりぬけた。 かまわず、マヤは操縦士におどりかかる。 銃をにぎった手首をとらえ、渾身の力をこめてしぼりこむ。 華奢でちいさな手に似合わぬ握力が、操縦士の手首をぐいぐいとしめつけた。 悲鳴をあげながら操縦士は銃をとりおとす。 マヤはそれをすばやく空中で蹴りつけて機外へとほうりだし、自分の銃を手にし かけた。 衝撃がおそった。 コントロールをうしなった機体が、砂上に接地したのだ。 「うわあ」 たおれかかりながらマヤは操縦士に対して、ちゃんと操縦しろよと理不尽な感想 を抱いた。 そんな心の声がきこえたかのように、操縦士はあわてて制御レバーをにぎりなお す。 ぐい、と機首が上昇した。 同時に機体尾部が、がりがりと地上をたたいた。 はげしく左右にゆれながらうきあがる。 右に左にたたきつけられ、瞬時、マヤは意識をうしなった。
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