長編 #4255の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
13 いきなりこんな言葉をかけられれば、たとえやましいことがなくても、大抵の 市民は驚くだろう。祐子もその例に洩れなかった。悲鳴こそ、すぐ止まったもの の、秩序ある行動を取るまでには数秒を要した。 祐子の肩をつかんでいるのは、くたびれたスーツを着た二人の男だった。一人 は中年で一人は20代前半だろう。もちろん見覚えのない顔である。 最初に浮かんだ考えは、これも橋本由希の作戦のひとつではないか、というも のだった。この二人は、にせ刑事ではないのだろうか? だが、中年の方がゆっくりと黒い手帳を取り出すと祐子に見せた。 「県警本部の者です」中年の方が言った。「申し訳ないが、そのバッグの中身を 見せていただけませんか?」 口調はていねいだったが、中年男の目は、ていねいに頼んでいるうちに見せた 方が身のためだ、と言っているようだった。普段なら、自分に対してそのような 態度を取られただけで、祐子は激昂したかもしれない。しかし、虚をつかれたた めか、気が付くとバッグを開けていた。 中を一目みるなり、若い方が手をのばして、さっきドアの向こうで受け取った 包みをつかみだした。 「これは何です?」 「し、し、知りません」祐子はしどろもどろになった。 若い方が、指示を仰ぐように中年の方を見た。中年の方が頷くと、若い方は紙 包みを破った。反射的に抗議の声をあげようとした祐子は、ビニール袋に詰まっ た白い粉が出てきたのを見て言葉を呑み込んだ。 「調べてみろ」 中年男が命じた。若い方は、袋の端を少し破ると、中の白い粉を小指の先につ けて、舌で触れた。 「どうだ?」 「たぶん……Sだと思います」 Sが覚醒剤のスラングであることぐらいは、祐子も知っていた。自分の立場に 理解が及ぶにつれて、祐子は青ざめていった。 「お嬢さん。これはあなたのですか?」 「そ、いえ、ちがいます。ちがいます!」 「では、誰のですか?」 「そ、そこの……」ドアを指す。「中にいる男の人から受け取って……」 みなまで言わないうちに、若い方がドアを開けた。 さっきの男はまだそこにいた。口笛を吹きながら、乾燥機を操作していたが、 突然入ってきた若い男を見て警戒の色が浮かんだ。 「あの、ここは従業員の……」 「少し訊きたいことがあるんですが。県警の者です」 警察手帳を出すヒマはなかった。男は、県警、という単語を耳にしたとたん、 奥の方にすっ飛んでいってしまったのだ。 「おい、待て!」 そのとき、祐子の耳にパトカーのサイレンが届いた。 「無駄なことを」中年の刑事がつぶやいた。「すっかり固めてあるのに」 やがて、男たちが消えていったドアの向こうで、物の壊れる音や、怒号、悲鳴、 サイレンの音、急ブレーキの音など、様々な音が派手に鳴り響いた。その間、中 年刑事は、祐子の肩をがっしりとつかんだままだった。 祐子は混乱したまま、次に起こることを待った。 数分後、若い刑事が、さっきの男と共に現れた。制服警官が二人、その後に続 いている。男は祐子を見ると、激しい憎悪をむき出しにしてわめいた。 「この女!おれを売りやがったな!」 「おい、やめろ」 若い刑事が男を引き立てていった。祐子は茫然とその後ろ姿を見送った。 中年刑事が祐子の肩を叩いた。 「さあ、行こうか。いろいろ訊かせてもらわにゃならんからな」 「わ、私は何にも知りません!本当です!」 「話は署で聞こう」 まもなく祐子は、生まれて初めてパトカーに乗せられた。 これが全て手の込んだ芝居であることを、祐子は心のどこかで期待していた。 だが、パトカーは本物らしく見えたし、運転しているのも青い警官の制服を着て いる。いくら橋本由希でも、祐子一人のために、数台のにせパトカーと10人以 上のにせ警官を用意できるだろうか?しかも、サイレンこそ鳴らしていないもの の、堂々と白昼の街中を走るだろうか?本物の警察が不審に思えば、それまでだ というのに。 パトカーは20分ほど走った。隣に座った中年の刑事は無言だった。祐子は、 考えをまとめるのに忙しくて口を開くどころではなかった。 到着したのは、紛れもなく県警本部の建物だった。その無骨な灰色の建物を目 にして、祐子は自分が苦境に立たされていることを認めざるをえなかった。 最初に通されたのは、窓のない狭い部屋だった。安っぽい会議テーブルと、折 り畳み椅子が置いてあるだけである。中年の刑事は、祐子に座って待つように言 うと、壁にかかっている電話で誰かと話をした。 待つほどのこともなく、ドアが開き、30代前半の女性が入ってきた。紺のサ マージャケットを着ている。まるで似合っていなかったが、当人は全く気にして いないようだった。 「お待たせしました」 「頼む」中年刑事は入れ替わりに外に出た。「ここで待っているから」 ドアを閉じると、女性は祐子をじろじろと見つめた。 「立って」無愛想な声だった。 祐子は立ち上がった。 「身体検査をするわ」女性は持っていたクリップボードをテーブルの上に置きな がら言った。「ポケットの中の物を全部出して」 遅ればせながら、祐子の自尊心がよみがえってきた。 「どういう権利があって、そんなことをするんですか?」 「はあ?」 「何の理由があって、私は身体検査なんかされなければならないんですか?きち んと説明してください。だいたい、あなた誰なんですか?」 女性はあっけに取られたように祐子を見つめていたが、やがて事務的な口調で 答えた。 「私は県警本部に勤務する刑事よ。あんたは麻薬取締法違反の容疑で取り調べを 受けるためにここにいるの。みたところ未成年だから、まだ逮捕はされていない わ。ヤクがらみの容疑者には、身体検査を行うことが規則で決まってるの。おわ かり?」 「私は何もしていません!」 「それは私の関知するところじゃないわ。私はあくまでもあんたの身体検査をす ればいいだけなんだから。言いたいことがあれば、取り調べ室で言うのね」 「弁護士を呼んで下さい」 「呼びたければ、まず身体検査を終えることね」女性刑事は素っ気なく答えた。 「私を誰だと思ってるのよ!」とうとう祐子の忍耐は底をついた。「パパに言え ば、あんたなんかクビにできるのよ!」 「ご自由にどうぞ」相手は動じなかった。「でも、身体検査を済まさないうちは この部屋から一歩も外に出れないわよ。つまりパパに電話することもできないっ てこと」 「冗談じゃないわよ!」 「どうしてもいやなら、外にいる刑事さんに替わってもらうけど」 「いやよ!」 「なら早くしなさい」 祐子は沈黙した。 「他の人を呼ぶわよ」 「待って!」その声には勢いがなかった。「わかったわ。出せばいいんでしょ」 祐子はポケットに入っていたものをテーブルに出した。家のキー、財布、生徒 名簿、文庫本、ハンカチ、携帯電話。 女性刑事は、クリップボードにそれらの品を丁寧に記入していった。その後、 それを読み上げた。 「……ハンカチ1枚。以上。間違いないわね?」 「ええ」 「じゃあ、ここにサインして」 祐子は言われた場所にボールペンで自分の名前をサインした。息をつこうとし て気付いた。 「これで終わりじゃないんですか?」 「所持品検査は終わりよ」女性刑事は、ジャケットのポケットから薄いゴム手袋 を出して両手にはめた。「服を脱いで」 「は?」 「服を脱いで」 「え?」 「服を脱ぐのよ」苛立ちを隠そうともせず、女性刑事は促した。「後が詰まって るんだから急いでちょうだい」 「ど、どうして、服を脱がなければならないんですか!」 「服にヤクを隠しているかもしれないでしょう」 「お断りします」 決然と言い放った祐子だったが、女性刑事の次の言葉を聞いて顔がこわばった。 「あんまりわがまま言ってんじゃないわよ。女の被疑者だからって、女の刑事が 身体検査をしなきゃいけないって規則はないのよ。手間焼かせるってんなら、男 の刑事を呼んできて替わってもらってもいいのよ」 祐子は女性刑事を睨みつけた。そして、震える手で服を脱ぎ始めた。 「あの……下着も?」 「もちろんよ」 女性刑事は祐子の身体には目もくれず、高価なブラウスとスカートを、縫い目 の一つひとつまで丁寧に調べていた。それが済むと、下着とソックス、それに靴 の調査に移った。靴にはとりわけ長い時間がかかった。その間、祐子は全裸の身 体を両手で隠しながら、みじめな気持ちで立っているしかなかった。いつ、ドア が開いて男性が入ってくるかと、びくびくしながら。 「こっちはいいようね」 ようやく服一式を調べ終わった女性刑事は、さっきのクリップボードを取って 自分で何か記入した。 やっと終わった。祐子はそう思って安堵したが、それは間違っていた。 「壁に手をついて」 「え?」 「そっちを向いて、壁に手をついて」 「何をするんですか?」 「次はあんたの身体を調べるのよ」 「そんな!」 「早くしなさい!」 鞭のように厳しい声だった。いつも丁寧に扱われることが当たり前になってい た祐子は、ショックのあまり声も出せないまま、壁の方をむいた。 「手をついて。まず、髪を調べるわ」 女性刑事の手が、祐子の髪の中にもぐりこんだ。乱暴ではないが、美容師のよ うに不快感を与えない配慮など考えてもいないようだった。かきまわすように頭 皮を探り、髪をかきわける。 次にその手が首筋に降りてきた。祐子は思わずびくっと身体を起こしかけたが、 女性刑事の叱咤が飛んだ。 「動かないで!」 どうやら祐子が、肌に何かを張り付けていないかどうかを確かめているようだ った。あちこちを軽く叩きながら、だんだん下に下がっていく。乳房をぎゅっと 掴まれたとき、もう少しで悲鳴をあげるところだった。 手袋をはめた手は、腹部、腰、太股、膝、足首、足の爪先まで調べたところで 祐子の身体から離れた。 「お尻を突き出して」 「え?」 「いちいち、え?なんて言うんじゃないのよ、不良娘が。さっさとケツを突き出 すのよ」 おずおずと、祐子は腰を後ろに突き出した。同時に女性刑事が、祐子の両足を 軽く蹴って左右に大きく開かせた。 「ちょっと」 「動くんじゃないのよ」 次の瞬間、指が肛門の中に入ってきた。 「いやああ!」 祐子は悲鳴をあげて、異物を押し出そうとした。だが、女性刑事は抵抗には慣 れているらしく、それを許さなかった。 「アバズレのくせによく締まるじゃないの」 言葉と同時に、もう一本が差し込まれ、肛門が左右に広げられた。内壁をぐる りと探ると、指はするりと抜けていった。 祐子はがくりと膝を折った。そこへ容赦ない声が降りかかる。 「立って。まだ最後の穴が残ってるよ」 「いや!おねがい、もう許して!」 「そういうわけにはいかないのよ。ここに隠してヤクを持ち込む女なんて、珍し くないからね」 乱暴に腰が抱え上げられた。恐怖と恥辱で、祐子の抵抗はささやかなものだっ た。女性刑事は、幼い子供のように祐子を膝の上に載せると、手と足を巧みに使 って両脚を広げさせ、性器を指で押し開いた。 「いやあああ!やめて!やめてえ!お願い、やめてください!」 「すぐ終わるよ」 容赦なく指が入ってきた。初めて経験する感覚に、祐子の恐怖は最高潮に達し た。知らず知らずのうちに祐子は絶叫していた。 「終わったわよ。服を着て」 そう言われたときは、何時間も経過しているような気分だった。祐子はよろよ ろと立ち上がると服を身に着けた。涙を流していることに気付いたのはそのとき だった。
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