長編 #4241の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「どこからでもいいぞ。おまえが意気地なしでないのなら、かかってきな!」 先輩の挑発にはのらない。この勝負は負けられないのだから。 フェンシングに対抗するためには、直線的な戦いは避けなければならない。 そのうえ、勝負の鍵となるバラの花はかなり間合いをつめなければ散らせない。 横に回り込んでそこから突くか? いや、それほどの正確さは自分にはない。だとしたら、剣道のように上段の構え の時に無防備の胸を……いや、それもだめだ。相手はフェンシングスタイル。上段 の構えなんてするもんか。 「どうした? 怖くて動けないか?」 力強いステップ。 反応できないまま、攻撃がくる。 素早い動き、とっさに避けるが剣先が頬をかすっていく。 完全に遊ばれている。目的はバラの花のはずだ、なのに狙いは頭部だ。しかも、 わざとタイミングをずらしてこちらの反応を見ている。 遊ばれているのか? 反撃に出ようと木刀を突き出す。 だが、先輩は簡単にそれを交わす。よく考えれば片手持ちのレイピアの方が実質 的にリーチが長い、木刀は両手で持たなければ攻撃力が半減する。 不利な条件はまだまだ出てくるだろう。ただでさえ、こちらは戦いの経験が少な いのだから。 攻勢に出ようとして、いったそれを取りやめる。無謀は勇気じゃないと、よく言 うし。 「つまらない奴だな。もっと楽しませてくれよ」 「あんたを楽しませるために闘っているんじゃない!」 「だが、そんな闘い方では、どうあがいても勝てるわけないぞ」 じわじわと間合いが縮まってくる。話しかけながらも、先輩は勝負の事は忘れな い。 「少しぐらいハンデをくれたっていいんじゃないですか?」 こちらもじわじわと後ろへと下がる。 「俺が本気を出せば勝負は一瞬でつくんだ。こうやって遊んでやっているだけでも、 十分なハンデだと思うぜ」 いやらしい言い方だ。性格の悪さが見えてくる。 畜生! どうあがいても不利か。まさか、これほどの実力の差を見せつけられるとは思わ なかった。考えが甘すぎたのだ。 ならば、少しでも不利な部分を削り落としたい。 武器によるリーチの差、スピード、攻撃の正確さ、反射神経。先輩との差を埋め る為には何をすればいい? 有利に事を運ぶためにに必要な要素は? いや、そこまで欲張る必要はない。 「ほら、もっっと遊んでやるから、自分の力のなさを思い知るんだな」 力がないことは十分すぎるほどわかっていた。心の中は悔しさでいっぱいになる。 同時にこみ上げてくる怒り。 「遊んでくれるのなら、提案がある」 怒りを必死に抑えながら先輩に向かってそう言う。どうしても勝たなければなら ない。だから……。 「いいぜ。聴いてやる」 相変わらず見下した言い方。今は辛抱するしかない。 「武器を交換したい」 「いいだろ。好きにしな」 先輩は一笑する。 了解してくれたものの、完全に信用してはいけない。隙を見せないように、武器 を交換しに行く。 木刀を元の場所へ納め、もう一度置いてある武器を見回し、焦らない程度に素早 く頭の中でその特性を吟味する。 勝つためには、迷ってはいられない。たとえ、どんな結果になろうと。 考え抜いた末に、片手で持てる軽そうな長身の剣をとる。手に持った瞬間、予想 より少し重めだったがこれぐらいは大丈夫だろう。 剣はこれでいい、あとは……。 「どうした? まだ決まらないのか?」 先輩のあきれたような声。まだ、無視できる時間内だ。 歩みを甲冑の置いてある所で止める。 「おいおい、甲冑なんて着るつもりか? バカな奴だ。それとも臆病なだけか? 籐子に笑われるぞ」 無視。 その甲冑の左の小手の部分だけ取り外す。 そして、左手にはめる。これも思ったより重い。だが、慣れれば気にならない重 さだ。 「先輩。いいですよ!」 左手は胸の部分をかばい、剣を逆手に持つ。 花さえ散らなければそれでいい。 「使い方を知ってるのか?」 再び、先輩のいやな笑い。 捨て身の体勢と言われればそれまでだが、これが今僕に考えられる唯一の方法な のだから。 「先輩! 彼女をあなたの好きにはさせません!」 演劇でもやらない限り、こんな言葉を僕が発するとは思いもしなかった。何かシ ュールな思いを抱きながら、剣を握る手に気合いを入れる。 「知ってるか? 籐子は強い奴が好きなんだよ」 先輩は本気になってきたのか、構えている剣にはまったくといっていいほど隙が なくなった。 再び、じりじりと間合いをつめてくる。 逃げ腰になってもしょうがない。 ようは、先輩の胸元まで到達できればいい。距離は約10メートル、おそらく数 十秒で決着がつくはず。 左手は防御、右手は到達できるまでそれを補う。攻撃は、最接近したその時だ。 頭の中で、もう一度手順を確認する。身体がうまく反応してくれればいいが。 いくぞ。 心の中でそう呟く。 右足で床を蹴り、目標へ突進。目の前には銀色の剣先が迫る。 予定通りその手前で、左足を踏ん張り横へ移動。本来ならば、平行移動したかっ たが急制動が効かず斜め右前方への移動。 すかさず剣先がこちらへ向く。さすがに反応は早い。が、それも予想はしている。 こちらはそれに対応して体勢を低くする。 左手はそのまま防御を維持し、右手の剣を牽制の為に相手の剣に打ちつける。 だが、そんなに簡単に剣を絡めてはくれない。一瞬剣先が下がり、こちらの剣は 空をきる。 そのタイミングを計ってか、再び剣先が突き出てくる。 鈍い金属同士の接触音。 刹那的に左の小手から火花が散る。 バラは? 平気なようだ。まだいける。 さすがに、素人ではない。目標を攻撃できなかった剣はすぐさま元の位置へと戻 される。 踏み込みの勢いでまだスピードはのったまま、そのまま一気に回り込む。 先輩の反応も、それに応じて身体を回転させる。 小細工が通用しないのはわかっていた。しかし、まだ勝機はある。 回り込むように動かしていた足を止め、右足で制動、左足で床を蹴りそのまま目 標へと一気に突進する。 あの剣さえ何とかすれば。 いや、バラだけでも散らせればそれでいい。 あとは、闘争本能の動くまま。 「下手の小細工が……」 言葉を理解している暇はない。 剣先が、再び突きだしてくる。 小手の防御は完璧。 鈍い接触音。剣を引いたらすぐに懐へ飛び込まなくては。 え? 剣先は下がらず、そのまま小手の小指部分の間接に滑り込む。 痛! 指の付け根に激痛が走る。そして、そのまま小手ごと剣先は振り上げられる。 血しぶきとともに小手が宙を舞う。 まだだ! 右手の剣を、振り上げた相手の右腕に叩きつける。 が、寸でのところで交わされ、服の一部にむなしく刃がかするだけ。 しまった! 剣を叩きつける動作が大きかったのか、その瞬間に大きな隙ができる。 「もらった!」 鋭い剣先は無防備な胸のバラを射程に入れていた。 これだけは絶対、守らなくちゃいけない。どんなことがあっても負けるわけには いかない。 バラだけは! 祈るように心の中で叫ぶと、同時に身体をわずかにひねる。 身体を冷たい金属が突き刺さる。 「まだだ!」 僕は力を振り絞って、刺さった剣の部分を握り右足で相手の腹部を蹴飛ばした。 先輩は無様にも床へと倒れ込む。 左肩から、生ぬるい血液が噴き出す。正確には脇の下に近いのかな……。 ああ……。 なんだか頭から血の気が失せていく。気が抜けたのか? くらくらと目眩がして、視界がぼやけてくる。 「まったく……今のはけっこう効いたぜ。だがな、いくら花を守っても、戦えなく なったらおまえの負けなんだぞ」 声がうっすらと聞こえる。 負けるわけにはいかないんだよ。だけど……おかしいな、力が入らない。 動脈でも貫かれたのか? 身体が麻痺してくる。
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