長編 #4239の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
心を許せてこそ恋人同士じゃないのか? 再び眠れぬ夜が始まる。 いったい何があったのか? それとも僕が見た彼女は幻? もしかして宇佐見先輩への嫉妬が、彼女の表情をそう見せてしまったのかもしれ ない。 ぼくが見たのは、一瞬の彼女の表情。 あまりの衝撃に僕はそれ以上見ることはできなかった。 だから、勘違いである場合もあるかもしれない。 そう思いたかった。 閉じた瞳の中で必死に祈る。 あれは真昼に見た悪夢だと。 「おっす!」 誰かが背中を叩く。 振り返ると石塚がいた。登校の途中で会うのも久しぶりだ。同じ中学だし、家も そこそこ近いので会うのはめずらしくないだろう。 ただ、石塚は僕を待っていたかのような態度でそこにいた。 「なんだ、石塚か」 「なんだじゃないよ。どうしたんんだ? 元気ないな」 気を使ってくる石塚。たしかにこいつは、中学の時から友人の面倒見はいいほう だった。 「まあ、いろいろとな」 理由なんか話せるわけがない。 「まだあきらめつかないんか?」 「しつこいぞ!」 石塚の親切心が押し売りに思えてくる。 「わかってるって、昨日は悪かったよ。もうおまえの事は止めないよ。ただ、あま りにも純粋になりすぎない方がいいぞって……あ、これも余計なお世話かもしれな いだけどよ。つまりだな……」 「わかったよ。おまえの言葉は素直に心に止めておくよ」 面倒なので適当に答える。 「そうか、わかってくれればいいんだが」 石塚はほっとしたかのように呟く。 言葉を心にはとどめておくが、最終的に判断するのは自分自身なのだから。 いつまでも不機嫌になっていてもしょうがないと、その朝は久しぶりに石塚と話 し込みながら学校へと歩いた。 下駄箱のところで別れ、靴を上履きに履き替えると自分の教室へと向かった。 その途中。 ぱしっと何かを叩く音が廊下に響きわたる。 「まさか裏切るつもりじゃねぇだろうな!」 男子生徒のドスのきいた声が耳に突き刺さる。 廊下の隅に人垣が出来ていて、声はそこから響いていた。 気になって、その人垣をかき分けて覗いてみる。 宮内籐子。 宇佐見先輩に叩かれたのか、彼女は床に座り込んで下を向いていた。 かぁーっと頭に血液が逆流する。 前へ出ようとする僕を誰かが後ろから掴んだ。 振り返ると、予想通り石塚が怖い顔で睨んでいる。 「落ち着けよ」 そういって、人垣の中から僕を引きずり出す。そして、人垣からだいぶ離れたト イレの近くまで連れていく。 「なにすんだよ! 彼女がかわいそうじゃないか」 振り上げた拳を下ろすことができない悔しさを、目の前の友人にぶつける。石塚 が悪いわけじゃないことはわかっていた。だが、このままじゃおさまりがつかない。 「二人の問題だ。俺たちは口を挟んじゃいけないんだよ」 石塚は掴んでいた手を離す。 「暴力を黙認するのか? どんなに宇佐見先輩が正しかったとしても、暴力をふる った時点でそれは間違っているんだよ。話し合うことを放棄した人間に味方なんて できるか!」 「わかったフリなんかしないほうがいいぞ。物事を理解していない人間が口を挟む のは最低のやり方なんだから」 「わかってないのはおまえだけだよ。暴力をふるった宇佐見先輩はどう見たって間 違ってるよ」 「純粋になりすぎておまえの方こそ物事が見えなくなっているんだ」 「なんだと!」 怒りがこみ上げすぎたのか、気づいたら石塚の襟元を掴んでいた。何か言いたげ な視線。 「わかっているよ。暴力はいけないだから……」 ゆっくりと手を離す。完全に負けだ。 「もっと冷静になってみろ。熱くなりすぎだよ。おまえらしくもない」 僕はその言葉を背中で聞き、何も答えず自分のクラスへと向かった。 夕暮れの家路。 廃屋の角を曲がれば、彼女はいるだろうか? 偶然は何回も続かない。恋に偶然を期待している自分が情けなくなってくる。 −マァーオ この前聞いたあの黒猫の鳴き声に似ている。 まさかな。 それでも、わずかな期待を込めて角を曲がる。 夕陽の朱色の光が眩しい。 彼女の顔がこちらに向く。 「天野クン」 寂しげな表情をごまかそうと、無理に作り笑いをする。 胸が苦しくなる。僕は彼女に何もしてあげられないのだろうか? 「や……やあ、また会ったね」 なるべく明るく彼女に応える。 「天野クンにみっともないとこ見られちゃったね」 彼女は恥ずかしげに視線をそらす。 「あ、いや……」 かすれて、それ以上声が出なくなる。何か優しい言葉をかけなくてはいけないの に、こんな時に。 違う。 声のせいなんかじゃない。声が出たとしても僕は何も言えなかった。彼女に何を してやれるというのだ。 「気にしないでね。彼……怒りっぽいから……わたしも……悪いところがあったし」 今にも泣き出しそうに、彼女は途切れ途切れに言葉を発する。 そんな健気な彼女の態度を見ていても、胸の苦しみは増すばかり。 「ねぇ、宮内さんは今しあわせなの?」 もしかしたら聞いてはいけないことなのかもしれない。でも、どうしても訊きた かった。 「え?」 「宇佐見先輩といてしあわせなのかなって? この前見ちゃったんだよ。二人で腕 を組んで歩いているときの宮内さんの顔」 「やだ」 彼女は両手で顔を覆うと背中を向けてしまった。 「宇佐見先輩の前でも、ここで見せてくれたような……いや、それ以上の笑顔を見 せたことがあるの?」 そんな事は大きなお世話かもしれない。でも、肯定して欲しかった。 彼女は何も答えない。しばらく沈黙が続く。 答えは聞かなくてもわかっていた。 「一つだけ聞かせてくれないか。なんで宇佐見先輩なんかと付き合ってるんだ?」 「それは……」 彼女が口を開きかける。 困ったような口調。もしかして、結局は僕も彼氏と同じなのかもしれない。彼女 を困らせて苦しめている。 「言いたくないなら言わなくてもいいよ。本来なら赤の他人がこんなことを聞ける 立場じゃないんだから」 少しだけ反省して、そう言い直す。 「そのうちわかると思う。だから……」
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