長編 #4152の修正
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三章 蒼の魔導師 「おい、ソウ、どういうことなんだ!?」 突然現れた青年の台詞に、先に反応したのは言われたプリシアではなくスカイの方 だった。 「リュウサのいる場所は分かっていた。ただ、私とお前では解放することは出来ない から、彼女を待っていたのだ」 「リュウサの居場所を知ってただとお? お前、それをずっとこのオレに黙ってたの かっ?」 スカイが、ソウに詰め寄る。右腕が、今にも殴りかかりそうに震えていた。 少年の顔は、怒りで赤く染まっている。 ソウは、何の感情も顔に浮かべていなかったが、プリシアは不意に怖くなった。 昔一度、リュウサがソウにそっくりな瞳をしていたことを思い出したのだ。 「けんかは、ダメ!」 急いで二人の間に割ってはいる。 「仲良くしないと、ダメなんだから」 プリシアの取りなしに、スカイも何とか振り上げた拳を降ろす。 「……分かった、けんかはしない。でも、なんで黙ってたんだ?」 「言ったら、お前は行かずにいられなかっただろう」 「当たり前だろ! オレもお前も、リュウサがこのままでいたら消滅しちまうんだか ら」 「しょうめつ?」 プリシアが、少し不安げな顔をする。 「私もスカイも、リュウサの未来に属する意識の一部だ。リュウサ本体がこのまま夢 魔のいいように操られていたら、いずれ消えてしまうだろう」 「オレ達が消えるってことは、リュウサの意識が完全に現実から離れてしまうってこ となんだ」 「え、と……どういうことなの?」 混乱しているプリシアに、ソウが簡潔に答えを述べる。 「リュウサが、死ぬということだ」 「え…………!!」 ショックを受けて、真っ青になった少女を庇うようにスカイがソウの前に立つ。 「お前、もう少し言葉、選べよ!」 「私の存在意義は、お前とは異なる……仕方あるまい」 肩をすくめてみせたソウだが、プリシアの方は見ていない。 さすがに、少々気がとがめているのかもしれない。 「リュウサ、死んじゃうの?」 か細い声音で、プリシアが呟く。 柔らかそうな青銀の髪が、細かく震えていた。 「大丈夫だよ! オレ達は、そうならないためにいるんだから」 「プリシア、あなたにも協力してもらいたい」 あいかわらず、どこか感情の欠落した表情でソウがいう。 スカイは、同じ存在から生まれた青年を睨んだ。 だが、プリシアはまっすぐに蒼黒い瞳を見上げた。 「プリシア、リュウサと一緒に帰るの。そのためなら、何でもするから」 ソウが、微かに頷く。 「お前がいなければ、リュウサは救えない。くるといい、リュウサの元に、案内しよ う」 ソウがスカイとプリシアを伴って進んだその先は、プリシアが蝶に誘い込まれるよ うにして入り込んだ林だった。 純白の大地は、どこか乾燥してぽろぽろしている。 濃い影が、三人を濃緑色に染め上げる。 「こんな近くに、リュウサがいるのか? オレだってここら辺は何度も調査したんだ ぞ」 スカイは、少し不満げに呟いた。 「ここは、幻の発祥地。そして、この島で最も影の濃い場所だ」 「影……そう言えば、ここってあんまり影ないね」 プリシアが、ポンと手を打った。 「みんな、透き通ったモノで出来てるから、黒い影ってあんまり見てない」 「黒い影が出来るのは、私達リュウサの意識の欠片、そしてプリシア、お前だけだ」 そう言いながら、ふとソウは目を動かした。 黒みを帯びた蒼い視線のその先、濃い緑の空間に、淡い紫が幾つも舞だす。 緩やかな舞を舞う蝶達には、確かに影は存在しなかった。 「あ、ちょうちょ!」 プリシアが、声をあげる。 「あれは、幻だよ……あの蝶は、オレ達を惑わす為に夢魔が放ってる」 スカイが告げるのと、ソウの声が旧い言葉を紡ぎ出すのが同時だった。 ――血の流れを司る者よ、破壊と再生の母よ、我が血は御身の加護を受け継ぎしもの 紅き生命の流れに依りて、その力を我が身に降ろさん…… 魔法の発動には、「詠唱」と「呪文」の二つが必要となる。 古代語の「詠唱」によって、本来その力を持っていた神々をその身に降ろし、「呪 文」によって、その力を解放するのである。 魔法を唱える者の魔力により、一度の詠唱で数多く、強力な呪文を唱えることが出 来、また呪文そのものの威力もかなり異なる。 ソウが、両腕を大きく突き出す。 「光炎天舞<ライエ・スタノツ>!!」 激しい光の奔流が、瞬間プリシアに目を閉じさせた。 目の内側が、真っ白だったが、やがて赤に転じた。 「う、そ……」 おそるおそる目を開いたプリシアの前で、真紅の炎が踊り狂っていた。 炎は周囲の木々を焼き払い、紫の幻をも焼き尽くす。 だが、不思議とプリシアは熱くない。 炎の舌は、決してある一定の範囲以上に広がることはなかった。 ソウの立っている数歩先から、大きな円を描いて、そのうちに収まっている。 「これが、魔法か……」 隣に立っている筈のスカイの声が、遠くに聞こえた。 炎の乱舞は少女が数回まばたきする僅かな間に収まったが、プリシアは思わずその 場に立ちつくしていた。業火は、木々を地面を焼き尽くし、あたりを黒く染め上げて いる。 「これで、入り口が見えるはず」 息も乱さず、ソウが静かに告げる。 だが、ソウの背中が、何だかとても疲れているようにプリシアには思えた。 おもわず駆け寄ってソウの顔をじっと見上げる。 「……どうした。私が、怖くなったか?」 無表情にソウが問う。 プリシアは、ちょっと考えてにっこり笑った。 「んーと、火はやっぱり怖いけど、でもソウのことは好きだよ。ソウの目って、リュ ウサに似てるし」 だから、怖くないと笑う少女の顔を眺めて、ソウは低い声で答えを返す。 「リュウサに似てるのは、当たり前だ。私は、リュウサの一部なのだから……でも」 ソウが何か言いかけたとき、スカイの明るい声が響いた。 「おい、こっちに入り口が出来てる! ソウ、お前すっごいな!」 「え、ホント? ソウ、行こう!」 プリシアは、スカイの方に駆け出した。 その背を見つめながら、ソウは小さく微笑んでいた。
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