長編 #4141の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「先輩達、どんなことをやってたんだろ?」 相羽の振りに、勝馬が答える。 「ああ、誰でも知ってるような話をやるんだってさ。小説……何て言うか、ほ ら、伊豆の踊り子だっけか? そういうのとか、桃太郎とか」 「他には、流行ってたドラマとか映画ね。有名人の真似をするってのもあった んだって」 前田が続けて例を挙げる。 「有名人て、歌手なんか?」 「それもあるでしょうけど、スポーツ選手や政治家も入るみたい」 「ああ、なるほど。面白いかも」 「でも、それだとバランスが悪くなりそう。つながりがなくて、ごちゃ混ぜっ てイメージね」 仮装行列では、三十秒ほどのアピールタイムが各班に与えられる。アピール をうまくするには、有名なお話の一シーンを模すのが手っ取り早いに違いない。 「だいたい、僕らの中で、有名人に似てるのがどれだけいることやら。お面の 化け物みたいな、かぶり物は嫌だぞ」 立島の一言で、物真似は却下。 「結構、本気で狙ってるのね、上位を」 白沼が感心した口調で言う。 「それはまあ、恥ずかしい思いをして出るからには……なあ?」 立島の言葉に、相羽達男子がうなずく。 「だったら、本当に票を入れてもらえそうなのを選ぶのがいいわね」 選挙対策のような白沼提案に、一同、呆気に取られた。 「運動会に来た父兄や先生達が入れるんでしょ? 圧倒的に多いのは、お母さ んやお父さんだろうから……」 「いや、そんなに来ないんじゃないか? 中学生にもなったら」 「分かんないわよ。少なくとも私達は初めての運動会なんだから、たくさん、 親も来ると思うけど?」 「待ってくれよ」 立島と白沼の議論に、相羽が割って入った。 「もしそうだとしたら、父兄の大半は、僕ら一年生の親になる」 「そうよ」 「だったら、たいていの親は、自分の子供のいる班に票を入れるものじゃない かな?」 「あ……かもね」 見落としを気付かされた形で、白沼が首を傾げる。 相羽は、少しすまなさそうに目を伏せがちにしながら、言葉を重ねた。 「それにさ、ここまで話を進めといてから言うのは悪いとは思うんだけど、見 てる人のことを意識して計算尽くめでやるより、自分達がやりたいことをした いな、僕は」 「そうよね」 相羽が言ったからか、実に簡単に引き下がる白沼だった。それから彼女は何 かを閃いたらしく、両手を合わせて、意見を述べた。 「とにかく、みんなで希望を言ってみない? 具体的に名前を挙げられなくて も、どんな風なことをやりたいかでもいいから」 「賛成」 といういきさつで、順番に希望を言っていくことに。 白沼は、分かり易さ優先で、有名なおとぎ話なんかがいいんじゃないかと言 った。『白雪姫』や『竹取物語』といった作品を挙げたところから、お姫様が 登場するのがいいらしい。 清水は、アクション物の映画か刑事ドラマ、もしくは付け足しとして野球選 手の物真似を希望。 相羽は、あくまで個人的希望だと断って、推理小説の名探偵物を挙げる。 勝馬はこれまでにないようなのがいいらしい。大げさな仕掛けを作って、た とえばネッシーとかUFOなどをやってみたら受けるかもと主張。 町田は、受けを狙うんだったら、ドラキュラ物のパロディなんかいいんじゃ ない?と来た。 前田と立島は事前に相談していたのか、同じ物を口にした。それが何と『厳 流島の決闘』。短時間で見せられるし、たいていの人が知っているという理由 からだ。 純子は、何でもよかったんだけれど、とりあえず女役がたくさんあるのを言 っておこうという気持ちが起こって、『若草物語』を挙げた。 「そんなに有名かなあ」 「有名は有名でも、内容はあんまり知られてないじゃない?」 こういう議論は、主に女子の間でのやり取り。この年頃で『若草物語』を読 んでいる男子は少ないらしい。 「見事にばらばらねえ。遠野さんは?」 仕切っている白沼が、最後に遠野に聞く。 「あのね……アニメなんか、いいんじゃないかなあって」 「アニメ?」 小さな声の遠野に、みんなが聞き返す。 遠野はびっくり目になって、返事するのに間が空いた。 「え、えっと。だからね……小さい子供も見に来るかもしれないでしょう? 小学生とか幼稚園児とかも。その子達を喜ばせたいなって考えてたら、アニメ が思い浮かんで」 「ああ、納得。いいかもしれない」 相羽が感心したように、何度もうなずいている。 「だけど、アニメとなったら、それこそぬいぐるみみたいな仮装になるんじゃ ねえか?」 清水がもっともな反論をする。 「アニメによりけりだろ?」 「人間が主役のアニメなら、行けるんじゃない?」 「そうかあ? どう考えても、顔は似ないぜ」 もめ始めたところに、立島が言葉を差し挟む。 「ストーップ。まだアニメに決まったんじゃないんだからな。全員の意見が出 たところで……多数決か、やっぱ?」 そうしましょ、と相成った。 挙手による採決をやってみたら、アニメ五票、ドラキュラ三票、アクション 物一票という結果に。当然、アニメに決定だ。 「町田さん、どういうこっちゃ?」 ドラキュラ物に手を挙げた勝馬が、首を捻っている。それも道理で、ドラキ ュラ物を提案した町田自身は、アニメに賛意を示したのだ。 「町田さんが裏切らなきゃ、同点になったのに」 「このっ、裏切りとは、人聞きが悪いわね。いいじゃないの。こっちの方が面 白そうだと思ったんだから。文句ある?」 「いえ……ありましぇん」 町田の一瞥に、背を丸くしてうなだれた勝馬。 「じゃ、何をやるかだけど」 今度は前田が皆に聞く。 「私、よく知らないんだけど。小学生や幼稚園の子に人気あるアニメって?」 「弟がいるんじゃなかったっけ?」 立島が聞くが、前田は首を横に振った。 「うちの弟もアニメ、それなりに見てるみたいだけど、何て言う番組なのか、 さっぱり分からないわ」 「普通は……」 辺りをはばかるかのような小声で、遠野が始める。 「男の子は『武の魂』や『グラン=ハザード』で、女の子は『フラッシュ・レ ディ』か『まあるい物語』といったところだと思う」 「あ、『武の魂』なら観てる」 勝馬に続いて、他の男子も続いた。 「男子って、中学生と小学生で、そんなに変わらないってことね」 純子が面白半分に言うと、当然のように反論が出て来た。 「じゃあ、そっちは、アニメ、観てないって言えるか?」 「そ、そりゃあ、観るわよ。『フラッシュ・レディ』なんかだと、凄く人気あ るから、男子達だって知ってるでしょうが」 「……まあな」 至極あっさりと認める男子達に、純子ら女子は、気抜けしたように笑った。 「それだけ人気あるんだったら、そのフラッシュでいいんじゃない?」 前田は本当に知らないらしく、適当に番組名を言う。 それはつまり、『フラッシュ・レディ』に出て来るキャラクター達がどんな ものか、まるで知らないということにつながる。 「えーっ、結構、恥ずかしいよ」 目の前で片手を立て、左右に振る白沼。 (白沼さんがあの番組を観てる? 意外な感じ!) 驚きついでに吹き出しそうになるのを、必死に我慢する純子だった。 「おいおい。それよか、男の俺達ができる役、あるのか?」 心配げな響きの口調で、清水が質問。 「ちゃらちゃらした格好の女三人が主役だってのは、知ってるけどよ」 「あるわよ。悪役の手下かボス」 町田が答えて口をつぐむと、遠野が一瞬、不思議そうにきょろきょろしてか ら、付け足した。 「それと、いい者役で、セシアっていう王子様も」 「セシア? へーんな名前。どっちかって言ったら、女っぽいぞ」 「格好いいのよ。清水には無理無理」 だからさっき言わなかったのよとばかり、笑みを浮かべる町田。 「何をぅ」 「じゃあ、やってみる? マントを羽織って、ステッキを持ってるのよ」 「……それって、探偵っぽくないか。だったら、相羽にやらせようぜ」 「勝手に決めるなよ」 相羽が額に手を当てるのと同時に、遠野が言い添える。 「マントにステッキと言ったって、探偵っぽい服装じゃなくて、あれは……馬 上の騎士っていうイメージかな」 「ばじょー?」 どんな漢字なのか浮かばなかったのか、清水と勝馬が声を揃えて聞き返す。 純子は呆れ顔になって、答えてやった。 「馬の上ってことよ。馬上。騎士と来れば、分かるでしょうが」 「そんなこと言われたってなあ、俺は詳しくねえんだから」 「えーい、もめるなっ」 立島が釘を差す。 「要するに、『フラッシュ・レディ』で決まりか?」 確認を求める言葉に、前田を除く女子が賛成、前田自身は棄権。男子は、ど っちでもいいという態度を取った。即、決定。 「よし。『フラッシュ・レディ』なら、男子が目立たずに済みそうだもんな」 何だかんだ文句を付けてきながら、喜んだのは清水。 「アニメだったら、その他大勢の敵の下っ端でいいぞー」 「俺も。演技するなら、派手にやられてみせましょう」 笑いながら、勝馬も言った。 「顔が見えないようにしてくれー」 「それだと、仮装の意味ないぜ」 相羽が呆れた様子で肘を机に突く。 「まず調べないと。資料を集めて、どんな材料がどれぐらいあればできるか」 「そういうの、女子に任せる」 「何でよ」 「漫画とか雑誌を手に入れるんだろ? 恥ずかしくて、買えるかよ」 しょうがないので、ここは純子達が折れる。 「代わりに、材料はそっちが集めてよ」 二日目、肉じゃが。三日目は魚の味噌煮。純子の出前は平穏無事に進んだ。 そして四日目。 (お母さんも意地悪というか、考えなしというか) そんなことを思いながら、すたすた歩く純子。目指す相羽の家まで、徒歩は ちょっとつらい。 (よりによって、汁物にしなくたっていいのに。私の迷惑も考えてよ) 今日のメインはシチュー。三日目までと比べて、圧倒的に液体部分が多い。 冷凍物ならともかく、できたてなので、これまでみたいに自転車で運ぶのには 抵抗がある。故に、こうして歩いている次第。 やがて、マンションのエレベータ入り口に到達。扉が鏡の役割を果たしてい る。 風呂敷に包んでいるとは言え、小さな鍋を持っている自分の姿に気恥ずかし さを感じた純子は、辺りを見回しつつ、扉が開くのを今か今かと待つ。 幸い、降りてきたエレベータには、誰も乗っていなかったので、安堵。 そのまま五階に直行できた。 (ここでこぼしたら、洒落にならない) 唇を噛みしめると、純子は慎重に廊下へと出た。 五〇三号室前に立ち、鍋を床に置いてから、チャイムを鳴らそう−−と、そ の前に深呼吸。まだまだ慣れなくて、緊張する。 ボタンを押し込んで、中からの声を待つ純子。また深呼吸をした。 「……あれ?」 小首を傾げる。返事が遅い。いつもはすぐに応答するのに。 (おかしいわ。また電話か、今日こそトイレとか?) もう一度、チャイムを鳴らす。が、やはり返事はない。インターフォンによ る会話もない。 純子はドアノブに、そっと触れてみた。動く。 (出かけたわけでもなさそうだし……どうしよう) 少し考え、ドアを軽くノックしてみた。 「相羽君。いる?」 やや大きめの声で、ドア越しに呼びかけ、さらにみたび、チャイムのボタン を押した。 −−つづく
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