長編 #4043の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「あれは、新手の電子兵器ではないでしょうか?レーダーやセンサーにだけ反応 し、実体の存在しない架空の存在としか思えない。攻撃すべきなのは、あの輸送 船では?」 バセスカは苦虫をかみ殺したような顔で、答える。 「しかし、それでは龍の姿をしている説明がつかない。おそらく奴は、伝説にあ る通り、生体宇宙船というやつだろう」 「生体宇宙船?」 「宇宙生命体を利用し、宇宙船にしたてるというやつだ。コンピュータでは無く 宇宙生命体の超感覚に基づき航行される為、宇宙船としての回避能力、運動能力 が通常の宇宙船より優れている。ただ、この船の装備はあの戦争当時より、遥か に精度が向上している。こんな事は、」 「ありえないですか、しかし、」 「目標、さらに接近。後、120秒後に本艦に接触します」 目の前の現実を否定してみても、話にならない。バセスカは、指示を下した。 「牽引ビームと斥力ビームを照射して、目標を固定しろ」 「了解、目標を補足しました、ビーム照射」 「接近速度に、変化がありません。ビームでは目標を固定できません」 「本艦に接触します」 すでに、スクリーン上から龍の姿は、消えていた。巡洋艦に衝撃が走る。スク リーンに、無数の警告メッセージが表示された。警報が鳴り響き、照明が非常灯 に切り替わる。 振動は、接触の瞬間以降も続いていた。派手に警告メッセージを表示していた スクリーンは沈黙してしまい、コンソールもひとつひとつ消えていく。そして、 振動は次第に大きくなっていった。 「奴は、船内を移動しています」 「多分、ここを、目指しているんでしょう」 振動は、揺さぶられるような激しさになっている。バセスカは、かろうじて言 った。 「全員退避だ」 轟音。スクリーンが砕け散り、派手に火花を上げる。そこに出現したのは、巨 大な龍の頭だった。 空気が裂け目から、抜けていく。バセスカは、薄れていく意識の中で、龍の口 から一人の男が姿を現すのを見た。 男は、ヘルメットのバイザーを上げる。バセスカは朦朧とした意識の中で、龍 の口から優男が微笑みかけるのを見た。 「やあ、悪いな、あんたの船を壊して。すぐに全員退避させてくれ。その後にエ ンジンをぶち破るから」 (夢だな、これはきっと) そう心の中で思いながら、かろうじて優男に答えた。 「これはきっと、惑星ザルドスでトカゲの丸焼きを食い過ぎた祟りだろうな」 優男はけらけら笑うと、ヘルメットのバイザーを下げ、再び龍の口の中へ消え た。 リンは、うんざりしたような顔で、ブリッジに戻ったビリーを出迎える。ビリ ーは、涼しげな笑みを返した。 「満足したかい?」 リンは、ビリーの言葉に不思議そうに答える。 「何のこと?」 「わざわざ宇宙港でおれの名を出したという事は、おれの手の内を、見たかった んだろ。銀河パトロールのデータベースで、極秘にされているものを検索したと しても、おれの戦い方は判らないはずだ。何しろそんなものは、銀河連邦が押収 した地球軍の記録から、抹消されているんだからな」 リンは不機嫌そうな顔になり、ビリーを見る。ビリーは相変わらず恋人をベッ ドへ誘うような笑みを見せたまま、リンに囁く。 「あんたは、おれの能力を見極めたかった。しかし、よく憶えておけ。あんたの おかげで、死人がでてるという事をな」 「うんざり、させないでよ」 リンは、嘲るような笑みを見せる。 「そんな事は、言われなくても知っているわ。戦争中に何百万も殺したのは、あ なただけじゃないのよ」 ビリーは、リンの脇のブースへ腰を落ち着ける。ヤンが言った。 「エンシェント・ロードへのアクセスポイントへ着きました。超光速空間へ移行 します」 「まかせるよ、ヤン」 ビリーは、投げやりに指示する。 エンシェント・ロードとは、銀河先住民族が作り上げた星間航路であった。星 系間には光の速度を超えなければ、到底たどり着けない距離がある。ただ、銀河 先住民族と呼ばれる種族は、星系間に超光速で移動できる亜空間ネットワークを 作り上げた。 我々はこのエンシェント・ロードにアクセスする事により、一旦この宇宙から 外へ出る。これは、比喩的な言い方であり、むしろ通常の物理法則から解き放た れると言ったほうが、いいのかもしれない。 エンシェント・ロード内は超光速で移動する事が、できる。これは、エンシェ ント・ロード内に『流れ』が存在する為だ。この『流れ』にのる事によってのみ、 エンシェント・ロード内の移動は可能である。 エンシェント・ロードにはアクセスポイントがある。このアクセスポイントに アクセスしさえすれば、後はかってに別アクセスポイントから通常空間へと放出 される。 このアクセス方法であるが、疑似生命体である『ダイモーン』に指示を出す事 によって、行われる。すべての宇宙船の内部にはこのダイモーンが、格納されて いる。ダイモーンは、銀河先住民族の退化した姿ともいわれており、地球人はこ のダイモーンをかつて太陽系の木星上で発見した。 地球人はエンシェント・ロードを辿って、他星系へ植民地を広げていった。そ の結果、各植民星系は独立し、地球政府とは別に銀河連邦を築く。地球政府と銀 河連邦の戦いが、先の大戦ということになる。 ビリーは、眉をしかめた。超光速空間へ移動する時に特有の、奇妙な感覚に襲 われたせいだ。 超光速空間に入り込んでしまえば、パトロール船も追跡する事はできない。基 本的に船は、エンシェント・ロードの流れに入り込むだけで、コントロールは不 能になる。又、エンシェント・ロード上の船は観測不能となる為、他の船がどこ のアクセスポイントへ向かっているかを知る術は無い。 ビリーは、リンに笑みを投げかける。 「ああ、そういえば思い出したよ。大戦中に、地球軍の戦略支援システム『フェ ンリル』にデジタル・ダイブを行った、双子の姉妹がいたとか。確かにあれをや ったのがあんたらなら、地球軍が百万近い戦死者を出した戦いの原因を造ったわ けだな」 ビリーは、ジゴロのように悪魔的に優しい笑みをうかべ、リンへの囁きを続け る。 「あれは、あんたらが7つか、8つの時の事か?」 「そうよ」 リンは、平然といってのけた。 「私とメイが生き延びる為なら、銀河系じゅうの都市を廃墟に変える事だって、 やってみせるわ」 「やれやれ、とんだ疫病神に見込まれたね。なぁ、ヤン」 「何言ってるんですか、キャプテン」 ヤンは、コンソールから手を離し、くつろぎながら言った。 「疫病神はお互い様でしょ。私にとっちゃ、キャプテンも嬢ちゃんも似たような もんですよ」 「冗談じゃない」 ビリーとリンは、ほぼ同時にそういうと顔を見合わせ、そっぽを向く。 メイは、ガイ・ブラックソルから与えられた部屋にいた。そこは、惑星グラン ノアール上に設置された移動要塞と呼ばれるギガンティスクラスの戦艦の、一室 である。 士官用の居住スペースとして造られた部屋らしく、それなりの調度は整ってい た。無機質的ながらも、設置されているベッドやソファ、デスクは高級ホテルに 置かれているもののように、上質の家具だ。ただ、窓のかわりのように壁に設置 されたスクリーンに映し出されている地表の風景は、荒涼としている。 惑星グランノアールは、生物の住まない星であった。その地表は、砂嵐の吹き すさぶ灰色の大地が延々と広がるばかりである。 荒れ果てた風景を見つめるメイは、ドアをノックする音を聞いた。メイが答え る前に、扉を開き黒い革のバトルスーツを身につけた男が入ってくる。年は若そ うだ。黒く長い髪をグリースで固め、痩せており、どこか飢えた獣を思わす顔を したその男は、不良少年といった雰囲気を、持っている。 「迎えにきたぜ、メイ・ローラン」 メイは、無表情な瞳でその不良少年を見つめる。そして、うんざりしたように 言った。 「一体、あなたたちは、私に何の用があるの。私をどうするつもり?」 「ああ、そいつは、ボスがこれから説明する。来れば判るよ」 「ボス?」 「ガイ・ブラックソルさ」 メイは、立ち上がると言った。 「ようやく、ボスとお話ができるわけね。いいわ、行きましょう」 メイは、不良少年の後を続く。 二人は、昇降機に乗った。それは、どんどん下へと降りていく。おそらくこの 巨大な戦艦の、最下部へついたと思われる頃、二人は昇降機を降りた。 二人のついた場所は、巨大な工事現場を思わせる空間だ。高い天井と広大なフ ロアに、大地を掘削する機械が、設置されていた。おそらく、元々は船底にあっ た倉庫なのだろう。そこに、建築機材を設置し、船底を穿ち、さらに地下へと掘 り進んでいるようだ。 幾つかの端末が設置されており、その端末から建築機材をコントロールしてい るらしい。端末の前に座っている男たちは皆若く、組織の人間というよりは、街 のチンピラふうであった。 一人の男が、メイを見つけ近寄ってくる。その男に、見覚えがあった。ガイ・ ブラックソルと名乗った男だ。 コンサート会場で見た時よりもその男は若く、野性的に見えた。漆黒の瞳が、 黒い炎のように輝いている。メイにはその少年が、黒い火焔に覆われているよう に見えた。 ガイは、メイに向かって狼の笑みを見せる。 「行こうか、メイ・ローラン」 メイは、うんざりしたように言った。 「どこへ行くというのよ。それに、一体私になんの用があるの」 ガイは、昏く光る瞳でメイを見つめたまま、言った。 「ついてくれば、判る」 ガイは振り向くと、歩きだした。メイはため息をついて、後に続く。ガイの向 かっているのは、掘削作業の行われている現場の中心だった。そこには、ワイヤ ーで吊されたゴンドラがある。そのゴンドラで地面に穿たれた穴へ、降りていけ るようだ。 ガイは、無言でゴンドラに乗った。メイは、そのゴンドラに乗り、ガイを真っ直 ぐ見つめる。 「この惑星の、地下に降りるの?」 ガイは無言で、頷く。メイは、月の精霊のように神秘的に輝く瞳で、ガイを睨 む。 「そこに何があるかは、行ってのお楽しみというわけね」 ガイはげらげら笑いながら頷くと、端末の前に立つ男へ指示を出した。ゴンド ラはゆっくり降り始める。 そこは、液体のような闇の中であった。ゴンドラの内部だけが、微かな照明で 照らされている。メイは、漆黒の宇宙に浮かぶ黒い天使のようなガイを、見つめ た。 この闇の世界では、ガイと自分自身の二人しか存在しないような気がする。圧 倒的な重量感を持つ岩盤に周囲を覆われ、深海のような闇をゴンドラは静かに降 下して行く。 メイとガイは無限の宇宙のような闇の中で二人きりであった。そこは、原始宗 教の儀式の前のように、神聖に静まりかえっている。 天上に輝く月のような地上への口が、しだいに小さくなっていき、ついには消 えた。二人は完全な闇の中に居る。メイは、随分長い間、闇の中に居るような気 がした。 「随分、深い所へ行くのね」 メイの言葉に、ガイは嘲るような笑みを見せて答えた。 「心配するな。もうすぐ着く」
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