長編 #3952の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
女性陣のテントの中で目を覚ますや、力沢は腕時計を見た。 「四時……四十四分?」 縁起が悪いという思いがよぎったが、すぐに打ち消す。 今、大事なのは、交代の時刻を過ぎているということだ。 声をなくして、慎重に起き上がる力沢。物音一つ立てぬよう、そろりそろり と、泥棒のように。 汗ばむ指先を、布の隙間に立て、外の様子を窺う。 「……」 見えるはずの二人の姿がない。影も形も見当たらなかった。 (やられた? 信じられん、二人同時にか?) 確かめるべく、頭だけを出した。 その瞬間、力沢は頭部に衝撃を受けた。 前につんのめりそうになったが、その勢いに任せて跳び、思い切り外に転が り出る。 受け身の要領で半身の姿勢を取ると、力沢は襲撃者の方を照らすため、頭に 手をやり、初めて懐中電灯を点けた。そう、ライト付きのヘルメットを装着し ていたのだ。 「同じ手に、引っかかるかよ!」 まだ判然とせぬ敵に向かって、叫ぶ。 一対一でも、相手の正体が割れた今では、自分の方が有利だと考えていた。 と、その刹那。 「ぐっ!」 瞬時にして左肩の辺りに、どんという重みを感じ、次に火の出るような痛み が襲ってきた。 痛みのある付近に右手を持って行くと、何か固くて細長い物が突き立ってい るのが分かった。 「弓矢……か。いや、これはボーガン?」 声に出しながら、状況把握に努める力沢。寺西や柚木をあっと言う間に倒し たのは、この武器があったためと想像できた。 「惜しいな!」 夜の闇に、胴間声が鳴り響く。力沢も知っている声だった。 (……何だって? 神野じゃない!) 目をしばたたかせ、敵の正体を見定めようとする。無論、ライトは消した。 点けっ放しでは、いい標的になるのがおちだ。 「心臓を狙ったんだが、外れたらしい。百発百中ならぬ三発三中を狙ったんだ が、うまく行かないものだな」 相手の嘲り口調を耳にし、確信を得た力沢は、萎えそうな気力を振り絞る。 「貴様……免田か?」 応答は早い。 「ふん、驚いたか、力沢?」 「死んだはずじゃ」 「案外、簡単に引っかかって、拍子抜けしたぜ。いくら俺と神野の体格が似て いるからと言ったって、おまえら、ほとんど死体に触ろうとしないのはよくな いな。子細に調べれば、テントの中の遺体が神野だということは、分かったは ずだが」 「顔が潰されていたのは、そのためか」 「ああ。神野を犯人と思わせておいた方が、俺も動きやすいと考えたもんでね」 免田が一歩、前に踏み出すのが分かった。 迫り来る足音を嫌でも耳にしながら、力沢は疑問点を口にした。 「夜中に悲鳴が上がって、俺が目を覚ましたとき、おまえ、横にいたじゃない か。おまえ一人でやったとは思えん」 「あー、あれか? 野村にちょいと、吹き込んでやっただけさ。『おまえが見 張りのとき、叫んでみろ。俺が他の連中の様子を観察して、誰が犯人か見極め てやる』ってな」 「何? じゃあ、おまえは内部犯行説を自ら伝えたのか」 問いかけに、免田は愉快そうに受け答えする。 「ああ、そうさ。野村だけじゃないぜ。保永にも神野にも、岸井にも言ってや ったのさ。力沢、おまえと寺西と柚木の三人の中に、殺人鬼がいるという風に 口先三寸で丸め込んだんだよ。アリバイについてもっともらしく話してやった ら、簡単に信じやがった。政治家でもやって行けるな、俺」 「つまり……見張りにかこつけて、『容疑者』たる俺や寺西、柚木から遠く離 れた場所に落ち合おうと持ちかけたんだな? そして、集まったみんなを、隙 を見て殺した……」 「その辺は、想像に任せよう。口八丁手八丁ってやつだ」 「理由は何だ。どうしてみんなを殺した?」 「おっと、残念だ。サービスはここまでだ」 眼前まで来ると、免田は力沢にボーガンを突き付けた。 「逃げていいぞ。だが、その矢にはトリカブトが塗ってある。動けば動くだけ、 回りが早くなる」 「やはり、そうか……」 うめくや、力沢は相手に飛びかかった。 ボーガンの矢が、頭頂部をかすめ、後方に飛んで行く。 「せめて、おまえだけは道連れにしてやる!」 上になり、首に手をかけようとした。 が、ぞっとして力を入れられない。何故なら、犯人が高笑いを始めたから。 免田が真の狂気に取り付かれたのかと、力沢は身震いが起こった。 「いいぜ! 俺が望んだ通りの結末になる!」 「……何だと? いい加減なことをぬかすなっ」 放した片手で顔面を殴りつけた。 「おお、痛いね。本気だよ、俺は。俺一人が生き残ったって、どうにもならな いことはようく分かってるからな」 「……最初から、死ぬ気だったのか? 俺達を皆殺しにして?」 「ご名答だ、力沢。おまえも毒で死ぬのは、確実だ。おまえが俺を殺してくれ るなら、それだけ楽に死ねて、目的を達成できる。さあ、やれ」 だらんと両手を広げ、仰向けに力なく横たわった免田。 力沢は、最後の選択を決めようとしていた。 「……免田。おまえが俺達を襲った理由を言えば、望み通り殺してやる」 「嫌だね」 薄笑いを浮かべるのが、暗がりの中でも分かった。目が慣れたのかもしれな い。 「それだけは御免だ。馬鹿馬鹿しくて、誰も信じないに決まっている。俺の動 機は、それだけふざけているのさ」 「そうか」 力沢は免田の身体から離れると、海を目指して歩き始めた。 「どこへ行く?」 「おまえの思う通りにはさせない。逃げられるだけ、逃げてやる」 立ち止まり、呼吸を整える力沢。肩の痛みはますます激しくなり、痺れたよ うな感覚も起こっている気がした。 「免田、おまえは勝手に死ね」 力沢の言葉に、免田は横になったまま、片手を挙げて、別れを告げるかのよ うに大きく、何度も振った。 どれぐらい時間が経っていただろうか。 東の方角が白みつつある。 小鳥のさえずりに、免田は起き上がると、自殺する方法を今さらながらに考 え始めた。 「力沢も、死んだだろうな」 自分の声が、阿呆のように聞こえた。 「あいつら、全部の遺体、見つけてくれたのか?」 そんなことが気になったが、考え直した。どうでもいい。 「折角だから、これまでにない死に方をしたいな」 自らの手元を見る。トリカブトの毒とボーガン、ナイフ。テントに戻れば、 金属パイプやロープが入手できるだろう。包丁やガスバーナーもあるはずだ。 起きてから、また長い間考えていた免田だったが、結局、独創的な自殺方法 は浮かばなかった。せいぜい、様々な手段を組み合わせるぐらいのこと。彼の 頭に、独創の神は降りてこなかったらしい。 「独創性か。俺に最も欠けていて、最も欲しているものだな」 自嘲気味に笑う。 「ひねくれたこの性格さえ、借り物のポーズだ」 太陽がはっきりと顔を出した。 そろそろ死のうと思った。 「これで死ねるかどうか、不安だぜ」 免田が考えたのは、ピストル自殺よろしく、ボーガンの矢を自らのこめかみ から貫通させる手段。 かまえてみたら、かなりやりにくいことが知れた。 確実に死ねるように、安全策を設けておくことを免田は思い立った。 ナイフで手を傷つけ、トリカブトを塗り込む。残った分は、嚥下してやった。 トリカブトの毒は、血中に混じっても、口から体内に入っても、効果を発揮す ると記憶していた。 「これでよし」 いかにも満ち足りた表情をなし、免田は矢をつがえたボーガンを手に取った。 その先を、己の右こめかみにぴたりと当てる。 時間を置かずに、引き金に掛けた指に力を入れた。 テントに残された免田のノートには、以下のような創作メモがあった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− お題>無人島>テン リトル インディアンズ メンダー琢也 無人島 むじんとう MUZINTOU ひとがいないしま 12345678 タイトル候補 12576438 MUNOTIZU 無の地図 62145738 ◎TUMINOZU 罪の図 34562817 ZINTUUMO 陣痛喪 26817534 UTUMONZI 鬱文字 62381475 TUZUMION 鼓音 62571438 TUNOMIZU 角水 14623785 MITUZOUN 密ぞうん(ゾーン) 62348517 TUZIUNMO 辻雲母 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− もしも完成していれば、パソコン通信の文芸ボードに書き込むつもりだった らしい。 −−終
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