長編 #3950の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「もし犯人が目撃さえされなけりゃ、俺達を見逃してくれるってんなら、通信 機器を壊さず、さっさと連絡を取れるようにしてくれてもいいじゃないか」 「……そうね」 「それにだ、俺達は島から出たら、真っ先に警察に通報するぜ。当然、この島 には警官がわんさか訪れ、大規模な捜索の始まりだ。犯人の奴、あぶり出され るのは目に見えてる。そんな状況になるのを、みすみすやり過ごすもんかよ。 俺達全員を殺す気でいる、間違いない」 免田の断定に、場はしんと静まり返った。 しばらくの時間、咳一つ出ず、沈黙が支配する。雨音と風が、騒がしいほど に耳に届いていた。 「どうなんだ?」 免田の声が、空気を破った。 応じるのは力沢。 「おまえの主張は正しい。だが、そのことが即、単独行動を可とすることには 結び付かないぞ」 「そうだよな。俺も少し、考えを改めたさ」 にやりと笑う免田に、力沢らは怪訝そうな表情をなした。 「二人がやられたのは、確かに、油断があった。意表を突かれたと言うべきか な。だから、これ以後、みんなしっかりと防衛意識を持ってだな、全員で行動 を共にすれば、犠牲者を出さずに乗り切れるかもしれん」 「じゃあ、単独行動は」 「やめた。テントに戻って一息ついたせいだ。寝袋だけで過ごすのは、あまり にもつらい」 再びにやりと笑った免田に、力沢も苦笑を返した。 「よし。じゃあ、一丸となって、三日間を生き抜くと誓おうっ」 雨は夜になって、上がった。だが、空を見上げれば星は全く見えず、曇り。 一丸と言っても、寝る場所、つまりはテントは男女別のまま。 初日の夕食−−やむを得ず昼を抜いたから、これが島に来て最初の食事でも ある−−のあと、再度の話し合いが持たれた。 見張りを置くべきか否か。これが議題である。 「当然の措置だな」 賛成派の先鋒、免田が主張する。 「犯人がどんな武器を持っているか、こっちには分からねえ。可能性は低そう だが、ひょっとしたら、俺達を一度に殺せる飛び道具を持っているかもしれな い。万一に備えて、見張りを立てるべきだ。見張りがいれば、襲撃された瞬間 にでも、皆に知らせられる」 「俺は反対だ」 力沢が自説の展開を始めた。 「体力をいたずらに消耗するだけで、いざというとき、損だ。それに、見張り をしている一人だけが襲われ、殺されてしまう危険もある」 「では、二人一組で見張るとしよう。男女ペアでいいだろう」 免田が案を出すと、力沢は顎に手をやり、考え込む様子。 「二人か……。二人まとめてやられる危険性、なきにしもあらずだが」 「大丈夫だっての。こんな状況で幸いと言っていいかどうか分からんが、懐中 電灯は人数分ある。見張りを置かないより、置いた方がいいに決まってる。み んなも、なあ?」 免田の呼びかけに、皆一様にうなずく。力沢は、軽く両手を挙げた。 「分かった。俺も賛成に回ろう。全員一致だ」 こうして見張りを立てることとなり、直後、その組分けが以下のように決め られた。八人だから四組ができ、それらで午後十一時から明けて朝七時までの 八時間を、二時間ずつ分担しようという算段だ。 二十三時 〜 翌一時 力沢・柚木 一時 〜 三時 免田・寺西 三時 〜 五時 保永・神野 五時 〜 七時 野村・岸井 第三の惨事が起こったのは、五時過ぎだった。 叫声に、力沢は目を覚ました。気配を感じて隣を見ると、免田もほぼ同時に 身体を起こしていた。 「聞こえたか?」 「ああ」 小さな声で確認し合い、傍らに置いていた懐中電灯と金属製のパイプ−−テ ント設営のための輔助パーツ−−を二人とも取り上げた。 免田はさらに、ナイフを取り出したようだ。テント内の薄明かりに、一瞬、 光った。 「……野村も神野もいない」 時計を見ながら、そっとつぶやく力沢。 「ちょうど交代の時間だ。まさか、二人、いや四人まとめて襲われたのか?」 「冗談じゃないぜ」 隙間を作り、外を窺いながら免田が否定する。 「四人もまとめて、殺せるものか」 「殺人鬼が複数いたら、どうだ?」 力沢の嫌な想像に、免田も押し黙ってしまう。 「……何も見当たらねえ」 免田が中腰の体勢から、立ち上がった。慎重な手つきで、テントの出入り口 を開け、身軽に飛び出した。 力沢も後に続く。 「おかしいな。誰の声だった? 分かるか?」 「さあ……男か女かも、はっきりしない」 もうやられたのかもしれないという予感を押し隠し、力沢は周囲に注意を行 き渡らせる。 「女のテントに行ってみよう。心配だ」 免田の提案に賛成し、二人で少し距離を置いたもう一つのテントに向かう。 「無事か?」 なるべく脅かさぬよう、テントの出入り口を揺らしながら声をかけた。 中にいる女性陣は過敏に反応したらしく、程なくして応答あり。 「だ、誰ですか」 寺西の声。テントの布越しに会話を続ける。 「俺だ、力沢だ。免田もいる。寺西さん、全員いる?」 「−−いません。典子と先輩、保永先輩が」 「何だって? ちょ、ちょっと、中を見ていいか?」 答はなく、一瞬間のあと、寺西が柚木とともに姿を見せた。 「目が覚めたら、私達だけでした。ねえ?」 「うん」 寺西の横で、柚木が呼応する。 「何かあったんですか」 「寝ぼけてんじゃねえ。さっき、叫び声があっただろっ。聞かなかったのか?」 免田が我慢しきれなくなったように、大声で言った。 力沢は免田を落ち着かせてから、改めて女性二人に問う。 「保永さんと岸井さんが出て行くところは、見ていないのか?」 「はい。眠ってたみたいです」 代表する形で寺西が答えた。 「じゃあ……間違いなく、保永さんと交代した?」 「もちろんです。静かに起こしたら、すぐに目を覚まされて。『気を付けてく ださいね』って言って、見送りました」 「そうか……。おい、免田。おまえも確かに、神野にバトンタッチしたよな?」 「当然だ。あいつが外に出てから、しばらく、動き回ってる音が聞こえてきた しな」 「どういうことだ、これは。先に出た二人が相次いで襲われ、五時の交代のと き、呼びに来ないのを不審に思った野村達が、また新たにやられたのか?」 「襲われた証拠を見つけない内は、滅多なことを口にするもんじゃないぜ。明 るくなるのを待って、当たりを見て回るとしようぜ」 「朝まで待てない。今からだ」 「おいおい、冗談はよせよ。闇は向こうにとって武器になる。危険すぎる」 手で、まだ暗い空を示す免田。 「四人がどうなったのか、気にならないのか」 「なるさ。だが、生死が不確かな奴らのために、無事でいる俺達がわざわざ危 険に身をさらす必要はない」 「みんなで一塊になってりゃ、大丈夫だ」 「力沢ぁ、現実を見ろ。四人が一度にやられたかも知れないんだぜ? 今の俺 達も四人。同じだ」 「……」 力沢の声が途切れた。対して、さらに言葉を重ねる免田。 「一時間もしない内に、明るくなる。それぐらい、かまわないだろう」 「……その一時間が、生死を分けるかもしれない」 「ああ、そうかい! じゃあ、おまえら三人でやれ。俺はテントに入る。もう、 こりごりだ。止めるな」 弾かれたように歩き出すと、免田は一直線に男性陣のテントに向かう。 力沢には、まさしく止める間もなかった。 「仕方ない。あいつなら、一人でも平気だろう。三人で探すと……そうだ、君 達の意見も聞いておかないとな」 自分の声に気力が乏しいのを感じつつ、二人の後輩に尋ねる。 寺西と柚木は顔を見合わせてから、「探します」とうなずいた。 三人で調べて回った結果、相次いで部員の遺体を発見する。 まず、砂川の遺体を置いた場所のすぐそばで、俯せに倒れている野村が見つ かった。やはり岩で、後頭部を何度も殴打され、絶命したらしい。 「やばくなってきた……」 騒ぐ後輩の二人をどうにか鎮めながら、力沢はつぶやいた。 他の三人−−保永らを引き続き探すか、それとも免田に知らせに行くかを迷 った挙げ句、後者を選択した。 そして、そこでまた遺体を発見した。 もはや、力沢自身もパニックを起こしそうだった。 (免田がやられるなんて……あんな、警戒心の強い奴が) テントの中で見つけた死体は、寝床から身体を起こしたところを襲われた様 相を呈していた。左右の側頭部を何らかの凶器−−石よりも細長い物のように 思えたが判然としない−−で殴られ、そこから激しく出血していた。血塗れの 上、顔が原形をとどめずに潰れている。 (このままだと、三日も持たない……) どうしたら助かるか、懸命に考える力沢の背を、誰かがつついた。 「何だ、寺西……さん? 何かあったのか?」 「いえ。そうじゃなくて、おかしいんじゃないかって……」 テントの中を覗きたくないらしく、寺西は目をあちこちに泳がせながら喋る。 力沢は遺体をそのままに、外に出た。当然ながら、柚木もそこにいた。 「聞こう。おかしいってのは?」 「こんな簡単に、免田さんが殺されるなんて、信じられません」 「ああ、それは思った。だが、それが?」 「先輩、犯人は本当に、殺人鬼なんでしょうか?」 「ん? 意味が分からない」 聞き違えたかと思い、耳の穴をいじる力沢。しかし寺西は同じ言葉を繰り返 し、さらに言った。 「犯人は、私達サークルのメンバーじゃないかってことです」 「ば、馬鹿なことを」 即座に否定してみたものの、彼女の意見を聞いた瞬間、力沢はそれで説明が 付く点があることにも気付いていた。 「だって、免田さんに警戒されずに襲えるのは、部員だけだと思うんです。信 じたくないけど……」 「分かった。話は分かった」 何と応えるべきか、考える力沢。 免田の言葉を思い出した。シビアに行こう。 「可能性として認めない訳にいかんな、確かに。こんな離れ小島に人が密かに 住んでいることよりも、そう考えるのが現実的だ。つまり……行方不明になっ ている三人の中に、犯人がいるということか」 「いいえ」 寺西は、普段の口調からは想像できない、低い声で言った。 「私は……先輩も絵里も、疑っています」 「……やれやれ、だな」 ため息とともに肩をすくめ、力沢は柚木の方を見やった。 彼女は放心状態なのか、あるいは逆に極度の緊張状態にあるのか、目立った 反応を示さない。 「寺西」 力沢は言い終わってから、相手を呼び捨てにしたのを意識した。 「だったら、徹底的に考えてみようじゃないか。疑念を残したままじゃあ、生 き抜けないだろう。うまい具合に、そろそろ夜が明ける。もし万が一、俺達三 人の中の誰かが犯人だとしても、常に一緒にいれば、殺せないだろう。二対一 なんだから」 「そうですね」 淡々と返事をした寺西は、それからゆっくりと歩き出した。 「どうした?」 「ブレックファーストしながら、話をするのもいいでしょう?」 わずかに振り向き、にやっと笑った寺西。疲れているのか強がっているのか、 分からない。 −−続く
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