長編 #3823の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「負けた、ぐうの音も出ないくらいに、俺の負けだあ」 午後になって、ポイントを変えてからの真月は、ひっきりなしに優一郎の元に来 ては、魚をはずし、えさをつけてもらっている。当然優一郎は、真月が自分より遥 かに多い数を釣っているのを知ることになる。 「でもお兄ちゃん、すごいよ。こんなの釣っちゃうんだもん」 真月が、バケツの中の一匹を指さして言った。 優一郎の釣り上げたフナの中に、一匹、赤い色をしたのが混じっていたのだ。 誰かが放した金魚か、それともヒブナなのかは分からなかったが。 「ときどき、赤いのが泳いでいるのは、みかけるけど。めったに釣れないんだよ。 それなのに、はじめて来て釣っちゃうなんて、お兄ちゃん、すごい」 負けた優一郎を慰めているのではない。 真月は、本気でそう言っているようだ。 素直に気持ちが伝わって来るだけに、負けた優一郎としては、なんとも照れ臭い。 「それはともかく、約束は約束だ。真月ちゃんの言うことを、きかなくちゃね。何 をすれば、いいのかな?」 「まだ言わない………とっておくの。いいでしょ?」 そう言った真月の仕種が、妙に色っぽい。 『おいおい、相手は小学生だぜ。全く俺は………この姉妹、一人一人にいちいち… …』 「いいけど、俺が真月ちゃんちに居る間に、言ってくれるのかな」 「うん」 応える真月は、少し寂しそうだった。 釣り上げた魚たちは、逃がす事にした。 二匹だけを残して。 真月は、優一郎の釣った赤いフナを持ち帰る事を希望した。庭の池で飼うのだと 言う。 そして一匹だけでは可哀想だからと、自分の釣ったなかから一匹、小さなフナを 選んだ。 スポーツ・フィッシングと言う言葉を習った優一郎としては、小さな魚は逃がす べきだと思ったが、真月の気持ちに対して野暮すぎる。黙って従うことにした。 「さあ、帰ろうか。バケツ、俺が持つよ」 「ううん、いいの。わたしが持ちたいの」 優一郎は二本の竿と、空になったバケツを。真月は二匹のフナの入ったバケツを 持ち、帰路についた。 「つまんない、ヤメヤメ」 あと一つ、なんでも技が相手に当たれば勝利というところに来て、大野佳美はゲー ム機の操作レバーから手を離した。 それまで佳美の操っていた、猫のスタイルをしたゲームの女性キャラクターは、 巨漢の相手の一方的な攻撃を受けて倒れる。 反対側のゲーム機に座っていた、学生風の対戦者は顔を上げ、怪訝そうに佳美を 見た。 何か言いたげな男を無視し、佳美は電子音の飛び交う、うるさいだけのゲー ムセンターを後にした。 黒いレザーのベストのポケットから、ガムを取り出し、口へ放る。 短めに刈り、前の方を立たせた髪を無造作に掻き上げる。 「あーあ、何してるんだろ、おれ。高校生活、最後の夏休みだっつうに」 駅前の書店が目に止まる。 特に読みたい本が有る訳でも無いが、暇つぶしに立ち寄ってみようか、そう思っ た時。 背後から、誰かが肩を叩いた。 「誰だ」 睨み付けるような視線を、背後に送る。 「ああ、やっぱり大野さんだった」 鳥肌の立つ、嫌らしい声。 洗った事があるのかと、疑いたくなる、フケだらけの髪。 金縁眼鏡を掛けた男、田邊がいた。 「なんだ、お前か。鬱陶しい」 不快感を露にして佳美は言った。 反射的に、田邊に触れられた肩を、手で払う。 「大野さんの私服姿って、男っぽいんだね。初め、誰だか分からなかったよ。その ジーパン、カッコいいね」 そのまま気がつかないでいてくれれば良かった、と思う。 この男にみつかるくらいな、生活指導の教師にみつかった方が、どれほどマシか。 「用はそれだけか、じゃ、急いでるんでな」 とにかく一秒でも早く、田邊と別れたかった。この男と同じ空気を吸っていると 思うだけで、気分が悪い。 「まあ、ちょっと待ってよ。ねえ、大野さん、これからぼくのマンションに、遊び に来ないかい?」 「なんだと、ざけんなよ、この馬鹿が! なんで俺が、貴様なんかのマンションに 行かなきゃなんねえんだ」 唐突な田邊の言葉に、腹が立った。 親しいどころか、露骨に嫌っている相手を誘う神経が苛つく。 この男、とうとう頭をやられたのか………そう思うと寒気がする。 佳美は足早に、田邊の前から離れようとした。 「優一郎くんがさあ………」 「陽野が……」 田邊の口から、秘かに想いを寄せている男の名前が出て、佳美は足を止めた。 「陽野が、なんなんだよ」 「知ってるだろ? ぼくと優一郎くんが、仲のいいのは」 「ああ」 とりあえず、頷いてみせる。 どう見ても、嫌がっている優一郎に田邊が付きまとっているようにしか、思えな かったが。 「でね、いま優一郎くん、ぼくのマンションに来てるのさ。パパが受験用にくれた マンションさ。そこで優一郎くんと、勉強してるんだ」 「おい、確か陽野って、就職組だったろう」 「それがさ、夏休み前の日に、先生に説得されて、大学を受けることにしたんだっ て」 「ふーん、陽野って頭いいからな………でも、それが俺となんの関係があるんだよ」 「ふふっ」 田邊が薄気味悪く、笑った。 「夕べね、二人で好きな子の話をしたんだ。そしたらね、優一郎くん、どうやら大 野さんに気があるみたいなんだよ」 「俺をからかっているつもりか」 佳美は拳を握って見せた。 しかし田邊は憶する様子もなく、話を続けた。 「だからね、これから大野さんを、連れていって、優一郎くんをびっくりさせてや りたいんだ。君だって、優一郎くんのこと、好きなんだろ? 来てくれるよね?」 話が本当なら、優一郎と会いたい。会って気持ちを伝えたい。 だが、この男は信用できない。 どこで知ったか、佳美が優一郎に好意を持っていると分かり、からかっていると しか思えない。 仮に百歩譲って、本当のことを言っているとしても、この男のいる前で告白した くはない。 「来てくれるんでしょ?」 もう一度、田邊が訊いてきた。 当然断るつもりだった………。 「ああ、分かった行くよ」 佳美の意志とは反対の言葉が、口を出た。 『そんな、どうして?』 「じゃあ、ぼくについて来て」 田邊が歩き出すと、佳美の身体も後を追って歩き出した。本人の意思を無視して。 『嫌だ………俺は行かない。行きたくないのに、身体が?』 心は精一杯拒んでいるのに、身体がそれに従わない。 顔の筋肉一つ、自由にならない。 『イヤ………誰か』 道行く人、誰でも良かった。必死で助けを求める。 だが、声にならない佳美の声を、訊いてくれる者はいない。 そのマンション以外、周囲に人の住んでいるような建物は無かった。 幾つか建設中の物はあったが、作業員の姿は見あたらない。 建設途中、何らかの理由で中断されたままのようだ。 佳美は形になる抵抗を、何一つ出来ないまま、11階にある田邊の部屋に誘われ た。 がたん。 背後でドアが閉ざされる音がした。 鍵とチェーンも掛けられたらしい。 「さあ、奥へ」 言われるまま、佳美の足は奥へ向かって歩を進める。 「あっ」 ようやく自分の意志で出せた言葉は、小さな悲鳴だった。 部屋の中に、三人の裸の女性が倒れていた。 死んでいるのかと思った。裸の女性たちは、身じろぎ一つしない。佳美が部屋に 入ってきても、視線の一つも動かさない。 しかし良く見ると、微かに胸が上下している。呼吸をしている証拠だ。 「堀江………堀江香奈じゃないか!」 見知った顔をみつけ、佳美は駆け寄って堀江香奈の躰を抱き起こした。 「どうして、あんたがここに? あんたの彼氏は、釘崎はどうしたの?」 香奈は何も応えない。 僅かに唇を振るわせはするものの、それ以上、躰の自由が利かないようだ。 「これは………」 抱き上げた香奈の躰が、ねっとりとしている事に気がついた。 見ると、香奈の全身は白濁した液にまみれ、それは抱き上げた香奈の服にも付い ていた。 周りを見渡すと、他の女性たちも同じだった。 中には、腿に赤い血の跡と白濁を混じらせた者もいた。 それは陵辱を受けた証。 「ようこそ、ぼくの牧場に………大野佳美さん」 振り向くと、狂気に歪んだ顔で笑う田邊がいた。 「陽野なんか、いやしないじゃないか」 恐怖をぐっと噛み殺し、精一杯の虚勢を張って田邊を睨み付ける。 「んんんっ、そんな事言ったかな………覚えてないや」 しゃあしゃあと、田邊は言ってのけた。 「この子たちに何をした」 「そんな恐い顔、しないでよ。これから楽しい事をするんだから………ほら、ベッ ドはそっちだよ」 田邊はベッドを指さした。 『いまなら………』 佳美は自分の身体に自由が戻っている事に気づき、思った。 いまなら逃げ出す事が出来る。 外に出れば、助けが呼べるかも知れない。 せめて廊下まででもたどり着ければ、大声で叫び、他の住人を呼べるかも知れな い。 どんな手を使ったか分からないが、再び自由を奪われる前に。 そっと香奈の躰を寝かせ、佳美は立ち上がった。ゆっくりとベッドの方を見やる と、田邊は満足そうに頷く。 次の瞬間、佳美は力一杯床を蹴り、田邊を突き飛ばすと玄関へと急いだ。 「上手く行った!」 ノブに手を伸ばしながら成功を確信した。だが……… 突然脚の力が抜け、身体ががくんと落ちる。 両膝が床に着き、重くなった手が上がらない。 「誰か、誰か助けて!」 精一杯の声で叫ぶ。 万に一つの望みに賭けて。 「無駄だよ、誰にも聞こえないさ。この部屋の防音は完璧だし、この階にはぼく以 外、誰も住んでいないからね」 後ろから近づく田邊の声。 絶望と恐怖が佳美を包む。 「いやあああああっ、誰か、誰かあ!!」 「無駄だって言ってるのにな」 短い佳美の髪が片手で掴まれ、そのままベッドまで引きずられた。 恐ろしい力で、ベッドの上に投げられる。 「何度も言わせないで欲しいね、叫んでも無駄。何で声だけ自由にしてやったと思 う? 抵抗されるのは、面倒だけど、せめて怯える声くらいは訊かせて欲しいから なんだよ」 「いや………お願い………助けて」 「うんうん、それだよ、それ」 恍惚とした笑みを浮かべながら、田邊は服を脱ぎ始めた。 先端だけが異様に膨らんだ、いびつな形のペニスが姿を現す。 「いや………」 これから行われるだろう行為に恐怖し、佳美の目から涙が溢れ出た。
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