長編 #3766の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「この子が欲しい」 ご主人様がおっしゃる。 私は耳を澄まして、続きを待つ。が、何もない。仕方なく、自ら口を開いた。 「髪を二つにくくっている、緑のドレスの人ですね」 「おまえも、私の好みが分かるようになったね」 その甘い声だけでも、心地よさに鼓膜がとろけてだめになりそう。加えて、 お褒めに与るなんて、今日は何て幸運な日だろう。 「いつものようにすればよろしいのですか」 「その通りです。確認して、合格であれば連れて来なさい」 「今回、合格でない場合はいかが致しましょう。前回のあの人のように、身を 清めさせるか否か−−」 「よい。改めさせるほど執着を覚える美しさが、あの子にはありません」 凛とした口調に、身震いする。 「−−分かりました」 感情の変化を押し隠し、了解し、行動に移す私。 「早速、確認します」 ご託宣は絶対だ。神のお導きには従わねばならない。 * 「何するのよ!」 理々子は相手を怒鳴りつけた。 スカートの中が不意に風通しよくなったと感じて、急いで振り返ったら、ク ラスの男子の一人が、端っこをつまみ上げ、めくっていた。 「へっ、*******かよ」 その男子はテレビアニメのタイトルを言って、からかいながら逃げていく。 他にも数名の男子が見ていたらしく、向こうで何やらにやにやと話し込んでい た。 「すけべ! 言いつけるから!」 舌を出す理々子。騒ぎを察したらしい女子が何人か集まってきた。 「全く、男子は子供っぽいんだから」 「そうよねえ。こんなことして喜ぶなんて」 「理々子、大丈夫?」 「平気。頭に来ただけよ」 男子の方を睨みつけながら、大きな声で吐き捨てた理々子。 「気にしてなんか、いないもん」 「気にしないんなら、もっとめくらせろーっ」 男子はまるで反省の色を見せず、調子に乗って騒ぎ立てる。 「ばーか! 誰がっ」 「嫌なら、最初からスカートなんか穿いてくんな!」 スカートめくりをした張本人が減らず口をたたくと、他の男子もそうだそう だとシュプレヒコール。 「いい加減にしなさいよ! ばかっ」 * 「理々子の胸、大きくていいなあ」 身体の表面の水滴を拭き取り、水着の肩紐を外したところで、いきなり言わ れたので、理々子は胸を腕で隠した。 「何よ、急に。小夜だって、大きいじゃない」 「気を遣わなくて結構。明らかに大きいじゃない、あなた。ブラジャーするの も当然なぐらい」 「じゃあ、言うけど……。邪魔なだけで、最低よ。こすれると痛いし、男子に はからかわれるし」 全裸になる。大きなタオルケットで改めて全身を拭い、台の上の下着を手に 取った。 「……」 「? 小夜、どうしたのよ」 視線を感じて、問い返す理々子。 相手の少女は顔から笑みを消して、淡々と言った。 「下の方の性徴は、まだなのね」 「−−やだな、じろじろ見てると思ったら、そんなことを」 「上と下で、差があるもんなのね。私と逆。胸の方も追いついてくれないかし ら、全く」 「さ、小夜もその内、大きくなるってば」 うらやましげな視線をやめない友人に、理々子は背中を向けた。 「そ、それより、早く着替えなきゃ。帰るのが遅くなっちゃう」 スイミングスクールが終わって、更衣室に残っているのは二人だけになって いた。 * 「ほう。これは素晴らしい」 歯科医は感心した口調になっている。 「虫歯が一本もない」 理々子の後ろに続く者から、感嘆の声が上がった。 理々子は口の中から金属の匙が抜かれるのを待って、笑顔を作った。 「色も白くて、歯並びも実にきれいに整っているな。毎日、きちんと歯磨きし ているんだろうね」 「あ、はい」 椅子から立ち上がる理々子。口を閉じたまま、舌で歯に触れてみた。 「いい子だ。これからも歯を大切にすることだよ。大人になったとき、役に立 つから」 「はい、分かりました」 保健室を出る理々子の足取りは、軽かった。 「次の人」 * 「どうしてこんなことをなさったのですか?」 思い切って、私はご主人様に尋ねた。声が震えなかったのは、自分のことな がら立派だと誉めてやろう。 「違う」 荒っぽい声で、乱れた息づかいで、私にとっての神は答を下された。 「違っていたのです。私が求めたのは、この子ではない……」 「お言葉ですが、彼女に間違いありません」 「見た目はそうであろう。しかし! 中身がだめなのです」 ご主人様は私を指さしてきた。 「確かめたのではなかったのですか? 確かめて、合格であるとおまえは言っ ていたではありませんか?」 「そ、そんな……合格していたはず……です」 「こちらに来て、よく見よ」 ご主人様は私の肩を掴むと、強い力で引っ張る。 私はふらつきながら、ベッドの脇に進み出た。 一瞬だけご主人様へと視線を送り、ベッドの上に横たわる少女を見下ろす。 仰向け、口をだらんと開け、大の字にぐったりしている。 「ああ−−」 私の口から勝手に漏れる声。 ここにいる少女は、合格ではなかった。ご主人様が逆上されたとしても、無 理はない。 「確認したのはいつ?」 「は?」 「何日前に確認したのか、言うのです」 「……二週間……になります」 恐る恐る答えた。そうせざるを得ないほどまでに、ご主人様の剣幕は怒気を 含んでおり、殺気さえ感じられた。 「なるほど。ふん」 はっきり聞こえるほどの鼻息をさせ、ご主人様は投げ出すようにソファへ座 られた。 私は自分の身体が、勝手に震えていると気づいた。 「あ、あの……」 「びくつくでありません。これは不可抗力のよう。この少女が合格か否かをお まえが確認した時点では、まだ合格の部類に入ったのであろうな。だが……時 間とは恐ろしいもの」 私の喉からは、安堵の息がこぼれた。 −−続
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