長編 #3763の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
日付が変わって、三月一日の早朝に、釘竹はもう一度、アクセスした。 (今度こそ!) 目をぎんぎんにして、気合いを入れる。気合いで片づく問題ではないのだが、 眠らずにいたから冷静な判断能力を欠いているのだろう。 「……おい」 タイトル一覧の要求に対して示されたのは、またも「新しいメッセージは、 ありません」であった。 「岸平さん……あんた、まさか眠ったんじゃねえよな」 届くはずのない声を、見えない相手にぶつける釘竹。鼻息も荒い。 「俺は徹夜して待ってたっつーのに、あんたがもし寝てたら、怒るぜ!」 独り暮らしとは言え、朝っぱらから大声でわめのは、近所迷惑だろう。 「いいかい。俺はあんたのために譲ってやったんだぜ。それを、こんな、無に しやがって」 ぶつくさ言ってから、釘竹は、自分の作品をUPしてやろうと、決心しかけ ていたのだが、すんでのところで思い止まる。 口元に、にたりと笑みを浮かべながら、釘竹はある考えを頭に浮かべていた。 (そうだ。俺が非道なことをしでかしても、決していい結果になるまい。言っ てみれば、俺と岸平は同罪になっちまう。ここは一つ、岸平だけを糾弾できる 形に……。それには、問題提起、これが一番だ) 思い付きにほくそ笑みながら、釘竹はログアウトした。 そして、エディタを立ち上げ、「問題提起」のための文面を練る。 「うーむ」 気分だけは大作家気取りの釘竹は、パソコンで文章を作るときにも、鼻の下 にペンを挟んでいる。だが、そもそも、鼻の下にペンを挟んで文章を考える作 家が、今、どれほどいるのやら。勘違いも甚だしい。 「やっぱ、穏やかに切り出すべきだな。怒鳴り散らしたって、逆効果だ」 自分で自分に納得したとばかり、大きくうなずくと、釘竹は入力を始めた。 * 長編ボードの利用について 釘竹 ホワイトデーまであと二週間、お返しに頭と懐を痛めてます。 ……という空しい冗談はさておき。 長編ボードの利用に関する些細な疑問が浮かびまして、皆さんの意見を拝聴 したいなと思い、書いてみます。 皆さんご存知の通り、長編ボードは、複数のメッセージに跨る、完結した作 品をUPする場です。で、そこにUPする作品は、一連の完結したものなのだ から、そのタイトルは1から完結編まで連続して並んでいるべきでしょう。 ところで、次のような場合を想像してみてください。 自作を長編ボードにUPしようと思い、アクセスしてみたら、ちょうど他の 人が作品をUPしている最中だった。マナーとして、その人のUPが終わるの を待って、自作をUPするのが普通ですよね? ここまではいいんです。では、 もし仮に、その人が通信の初心者であるか何かで、作品全部をUPし終わるの に、物凄く時間をかけてしまっている場合は、どうしましょう? 十五メッセ ージをUPするのに二時間も三時間もかかる、とか。特に、自分自身が「明日 から出張。今日中にUPしないと、次の機会は一週間後になってしまう」とい うような切羽詰まった状況にあるとしたら、これはかなりいらいらが募るんじ ゃないかなあ? そういうときでもやはりマナーを守って、UP中の人が全て をUPし終わるまで待たなくちゃいけないものでしょうか。 「三時間程度なら、辛抱すべきだ」という意見も、もちろんあることでしょ う。では、三時間が三日間に置き換わったら、どう判断します? 長編UPを 開始したはいいが、勝手が分からなくてかれこれ三日も費やした。その間、他 の人に迷惑をかけたとも知らずに。 三日は極端かもしれませんが、ある人が五時間以上かかって全部をUPでき ないのなら、私だったら「乱入」UP(タイトルが入り乱れて不細工になるの は承知の上)したくなりますよ。 要するに、長編のUPにかけていい時間は、どれぐらいが限度かってことに なるんですが、それを厳密に決めちゃうと、逆にもめそうな気も。制限時間を オーバーした場合、中途までUPした分の削除を強制できるかどうかも怪しい し。 まあ、これまでにこういうトラブルがなかったようですから、気にする必要 なんてないのかもしれませんが……。いっそ、タイトル一覧の表示が不細工に なってもかまわない無法地帯を公認すれば、すっきりするかな。 * 文章を書き終えた釘竹は、読み直してから、首を捻った。 (何だかなあ……お気楽に書き始めたのが、最後までお気楽で終わったような。 全然、問題提起になってない感じだ。そもそも、騒ぐほどの問題じゃない気が してきたぞ。他の人達って、俺みたいに気を遣ってるのだろうか? 背景がど うなってるのか見えないから、俺の苦悩が伝わらない可能性も、大いにあるよ なあ。 ここはやはり、具体的に岸平氏の名前を挙げて、困ってるんですけどーって 書くべきか? しかし、岸平氏の方に何か、どうしても動かせない理由があっ たとしたら、俺、ただの粗忽者になっちまう。 メール、出すか? 岸平氏に事情を聞いてからでも遅くないよな。 ……待てよ。向こうがメールを読んだ時点で、『五連続殺人事件』が中途半 端なまま放置されてたとしたら、それはすでに、不誠実な行為じゃないか。逆 に全部削除されているか、最後までUPされていた場合、振り上げた俺の拳は、 勢いがなくなっちまう。どうも、やり取りがしっくりこない) 悩んでいる内に、考えるのが面倒になった。 「あー、決めたっ!」 一声叫ぶと、釘竹は文書を保存し、通信ソフトを開いた。 (もう一回アクセスして、岸平氏が『五連続殺人事件』をそのままにしておい たら、この文章をUPしてやる。みんなの反応が鈍けりゃ、岸平氏の名前を出 す。これで行くぞ) 清々しい笑顔になって、釘竹はキーを叩く。一発でつながったので、ますま す気分いい。まだ早朝と呼べる時間帯なので、空いているのは当たり前と言え るのだが。 早速、長編ボードに向かう。例によって、未読メッセージのタイトル一覧。 「ふん。やっぱり、『新しいメッセージは、ありません』か」 やけっぱちのように笑いながら、彼は長編ボードを抜け出て、雑談用のボー ドに行こうとした。が、そのコマンドを実行する前に、手が止まる。 「待て……何か、見落としている……」 しばし黙考。 「そうだっ。1から16までが、全て削除されているかもしれないんだ。それ を確かめねば」 急いでコマンドを打ち直し、既読・未読に関わらず、これまでの登録作品全 部のタイトルを見てみる。 「おお……消えている」 感心した口振りで、釘竹はつぶやいた。 一覧の中、昨夜、UPされていた『五連続殺人事件 1』〜『五連続殺人事 件 16』のタイトルは、どこにもない。 「危ない、危ない。これを見落としたままだったら、とんだ恥をかいていたな」 大げさに胸をなで下ろしながら、その動きに合わせて息をつく。 「よし、ひとまずこの問題は横に置いて、さっさと自分の、UPしようっと」 脳天気につぶやくと、釘竹は自作のUPを始めた。 生来面倒くさがりで、一つのことに集中しがちな釘竹は、自分の「超大作」 を無事にUPできた頃には、長編ボードの使い方についての疑問なんてものは、 頭から消してしまっていた。 それから六日後には、岸平しずお作の『五連続殺人事件』も二十四メッセー ジに渡る全編がUPされた。 評判は、百メッセージに及ぶ釘竹の作品が敬遠されたせいもあるのだろうが、 『五連続殺人事件』の方が上のようだった。 その後、しばらく経って、オフラインミーティングが企画された。 目玉は、岸川しずおが初めて顔を見せるという点に尽きる。東京に出て来る 機会を得たので、ぜひ皆さんに会いたいと、岸平自身が申し出て決定したのだ から、確実に対面できるはずだ。 「乗った! 俺も参加だ!」 このオフ会のことをボードで知るなり、釘竹の気持ちは決まった。 『五連続殺人事件』の好評が遠因となって、このところの釘竹は、中途半端 にUPされたときのことを思い起こすようになっていた。 (直接会って、聞いてやろう。メールだと時間かかるし、言葉の行き違い、あ るかもしれんから、踏ん切りが着かなかったんだよなあ、俺) 自分にとって都合のいい展開に、自然と笑みが広がる。 (あんな中途半端なことして、結局、みんな消したのか、その理由を聞き出し てやるんだっ) −−続く
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