長編 #3639の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
すると、相手は被っていた物を脱ぎ去り、初めて顔をさらした。金髪に大き な耳が印象強い、どこか疲れた表情の男だった。口には球状の黒い物体をくわ え込んでいるが、何に使うのか見当も付かなかった。 その何かをくわえたまま、男は繰り返した。 「君達。待ってくれ。話を聞いてくれ」 ヴィルとスタンは目を見合わせると、うなずいた。相手は見たところ、武器 らしき物は一切身に付けていないようだ。 スタンに抜刀させてから、ヴィルは彼と共に距離を詰めた。 「訳あって、簡単には人を信用できないのでな。話を聞いてほしければ、地に 両手両膝を着いてもらおう。それができなければ、さらばだ」 「分かった」 存外あっさりと、相手の男は四つん這いになった。さっきまで被っていた丸 い物体が、風にからんと揺れた。 「よし。話せ。最初に名前だ」 「ドグ、私の名はドグだ。ある者を追っている。そのことで、君達に聞きたい のだ。まず、見てもらいたい物がある。腕を動かすことを許してくれるかな?」 「待て。おい、スタン」 ヴィルの言葉を受けて、スタンは四つん這いのドグの左側に立った。 「左腕だけ使え。が、妙な動きをしたら、即座に斬る」 「ありがとう」 ドグは左腕を使って、衣服の前を開けると、その懐から三角形の黒光りする 物体を取り出し、地面に置いた。 「三角の点、どれでもいい。触れてみてくれないか。危ない物では決してない」 「……よかろう」 「ヴィル?」 慌てたような声を出したのはスタン。ヴィルは仲間であり親友でもある彼へ、 視線を向けた。 「平気だ。何かあったら、おまえがこいつを斬ってくれ」 ヴィルはそのまま指先で三角形の一点に触れた。 途端に、頭の中に何かが流れ込んでくる感覚が起こった。 「これは……何だ、ドグ?」 「見えない? まだ見えないか? しばらく待ってほしい。きっと、脳裏に画 像が結ばれるはずだ」 「訳が分からぬことを−−あ」 急に、「それ」が見えた。人の顔だ。 「こいつら……ドゴーにイェスマじゃないか!」 「何っ?」 反応を示したのはスタンもドグも同じ。無論、驚きの種類は違っていたが。 「知っているのか、ドゴー達を?」 ドグが立ち上がりかけるのを、スタンが制した。 「動くなと言っただろう。−−ヴィル、何が起こったのか、さっぱり分からん。 教えてくれ」 「……代わろう。その三角に触れたら分かる」 短く言って、抜刀したヴィル。そしてスタンのいた場所に立ち、ドグを見下 ろした。 「どうもおかしな格好をしていると感じてたが、ただ者じゃないね、あんた」 ヴィルがドグに話しかける間に、スタンも先のヴィルと同様に三角の物体に 触れた。 「−−あ、こいつは……」 やがてうめき声を上げたスタン。ヴィルの方へ振り返った彼は、訳が分から ないと言いたげに、しかめっ面を作っていた。 「説明してもらいたい。ドゴー達とあんたはどういう関係なんだ? この奇妙 な物は何だ?」 「その前に……君達は、ドゴーやイェスマを敬ってはいないのか?」 「誰が敬うかよ!」 スタンが大声で否定した。ヴィルも続けて言った。 「自分も同じだ。あのような者に支配される覚えはないし、ましてや敬うつも りなど全くない」 「ならば……ドゴーとイェスマに、この国がどの程度支配されたのか教えてく れないか。急がないといけない」 「……何を急ぐと」 「彼らの目的は、君達の星を支配することだ」 「……聞き間違えたのか、星と聞こえたのだが」 ヴィルの言葉に、スタンも「俺も聞こえた」とうなずいた。 はいつくばったままのドグは、目だけ上を向いて早口で言った。 「間違いではない。まず、私はドゴーやイェスマと同じ星から来た。この三角 形状の物は精神に画像を見せる道具。気付いているだろうが、私が口の中に含 んでいる物体は、君達の言語を話すための翻訳機械であり、耳には逆方向の翻 訳機械を仕込んでいる。これらだけでなく、私達の星の技術はこの星とはかな り違っているみたいだが……」 「ドゴーが見せた復活の術といった力も、あんたには簡単にできるって訳だ?」 「復活とは……死んだ者が甦るという……」 「そうだ。首を切断して、また蘇生した。そういった特殊な力を見せつけられ て、たいていの者がドゴーやイェスマに従うようになっちまってる」 「まずい」 苦しげにうめいたドグ。 「村を訪ねた際、村人全員から石を投げられたり袋叩きにあったりしたが、す でにこの国のほとんどがそうなのか……」 「さっぱり飲み込めねえ」 スタンが、うんざりしたように言った。 「話す気があるんなら、きちっと全て話せよ。ややこしいのは御免だからな。 一番大事なのは、おまえがドゴー達の敵なのか仲間なのかってことだ。どうな んだ、ええ?」 「私はドゴーとイェスマを……もっと正確に言えば、私達の星にいるほとんど の者達の意志を止めるべく、やって来た。ドゴー達を止めたとしても、また別 の者が現れることは、想像に難くないのだが」 「まだ話は見えないが」 と、ヴィルは刀を引くと、鞘に収めた。 「信用してもいい。な、スタン?」 「しょうがない」 スタンも刀を仕舞った。が、こちらは柄に手をかけたままだった。 「話から推測してみると、ドゴーとイェスマの二人は、ドグ、君の星を代表し て、この星に来たということかな? どうやって星と星の間を行き来できるの か知らないが、そっちの星には特別な技術があるんだろう」 「ああ。私もドゴーと同じ手段でやって来たんだ」 ようやく不自由な体勢を解くことができたドグは、地面に腰を落としたまま、 話を続けた。 「ドゴーの狙いは、この星の神になることなんだよ。神って分かるかい?」 「いや……初めて聞く言葉だ」 「定まった概念がある訳じゃないが、今直面している状況に即して大雑把に言 えば、人より上位の存在で、人を支配するのが神だ。人は神を崇めることで、 幸せを感じる」 「分からないな。幸せにしてくれるのはいい。だが、それがどうしてその神と やらの下に位置しなければならないとなるのだ? 対等ではだめなのか?」 ヴィルの疑問に、ドグは初めて笑った。 「何がおかしい」 「君達のような者がいるとは、まだ希望がある。みんながみんな、神の威光に ひれ伏すようになってしまっては、手遅れだから」 「何のために、あいつらは神になって、支配しようとしている? この星の乗 っ取りか?」 「……そうなる。私達の技術は発達しすぎたらしくてね。自分達の星だけじゃ どうしようもなくなってしまった」 自嘲気味に、ドグ。 「不死の術を見つけてしまったんだ。私達の星では、今や誰も死ななくなって いる。その結果、星が手狭になってしまった」 「それで、代わりにこの星を……」 絶句するヴィルに、ドグは追い打ちをかけるように言った。 「同じ環境の星は、なかなか見つからなかった。私もそれでいいと思っていた のだが……ついに見つかってしまった。ドゴー達が神として君臨に成功したあ と、次々と同じ『神』がやって来る手筈になっている。この星の住人を体のい い奴隷として使い、不要となれば皆殺しにしてしまうかもしれない」 「皆殺しなんて、できるものか!」 スタンが声を立てて笑うが、空回りしているような響きがあった。 「できるさ」 肯定したのはヴィルだった。スタンが目を見開くのへ、彼は続けて言った。 「手刀を一振りしただけで、首が落ちるんだ。皆殺しもたやすい−−だろう、 ドグ?」 「道具があれば、できるね。恐ろしいことに」 己の文明についてなのに、ドグは首をすくめた。 「さっき、あんたはドゴーを止めると言ったが、どうやるつもりだ? 俺達も それを願っている。協力する」 「君達の星の人達を巻き込んでいいのなら、話は簡単なのだが、それはしたく ない。君達も反対だろう」 「言うまでもない。だが……」 ヴィルとスタンは顔を見合わせた。 「ドゴーの奴、支配下に置いた者達を兵士に仕立てている。レグナと名付けら れたそいつらは空を飛ぶし、弓矢は凄腕だし、手に負えない」 「レグナ……なるほど、ドゴーらしい名付け方だ」 一人感心するドグに、ヴィルは怪訝な視線を向けた。 「何を納得しているんだ?」 「いや、こちらのこと。私にとって有利なのは、私はドゴーやイェスマを知っ ているが、向こうは私の顔も名前も知らないというただ一点。あとは五分五分 か、恐らくドゴー達の方が有利」 「全体として見れば、圧倒的に不利という訳か」 スタンが呆れた口調で言った。 が、ドグは自信ありげに言い切った。 「策はある。時間がかかり、一度しか通用しないが、最初さえうまく行けば、 あとは球を坂下へ転がすよりも優しい」 「ふん。聞こう」 ヴィル達に対し、ドグはにやりと笑う。 * * ドゴーの命で、イェスマは直接、その地へ赴いた。 村の片隅で、人を集めてものの道理を説いている男を認め、イェスマは近付 いた。 「あなたがディモですね」 今や、イェスマを知らぬ者はいない。ディモを取り巻いていた人の輪が崩れ、 新たにイェスマを迎える道ができた。 「さようですが」 ディモと名乗る男は穏やかに答え、腰を折るように深い御辞儀をした。 「イェスマ様が、このような土地にいかなる御用でございましょう」 「噂を耳にして参りました」 イェスマの言葉も、劣らず穏やかだ。透明感を含ませた声は、たいていの者 を魅了するであろう。 「博学で、人望厚い。誰彼を差別することもなく、難に当たっても冷静と」 「身に余る言葉です。どこで尾ひれが付いたのでございましょう」 「恐縮する必要はありません。それよりも、あなたと私の二人だけで話をした いのですが、よろしいですか?」 「私はもちろんかまいませんが……」 目配せの仕種を見せたディモ。集まっていた村人達に遠慮しているのか。 「おまえ達」 と、イェスマは周囲の者共を見渡した。 「こちらのディモとよきお話を交わしていたことは分かります。その時間を少 し、私にくれないものか」 イェスマの言葉に反発する者はいなかった。皆、納得した風にうなずくと、 わらわらと散っていく。 「イェスマ様。場所はいずこがよろしいのでしょう?」 「どこであろうと気にはしません。一つだけ条件を付けるなら、屋根と壁と床 に囲まれた空間が望ましい。誰にも聞かれたくありません」 「では、私の家へ……。狭苦しいところですが、よその者に話を聞かれること はありませんから」 手を恭しくかざすと、ディモは背後の、粗末だが頑丈そうな石造りの小屋を 示した。 「よいところではありませんか」 「ご冗談を」 中に入り、勧められるままに座るイェスマ。 「直接見た訳ではありませんが、イェスマ様のお暮らしの宮殿は、まるで楽園 だとか。そのような家に慣れた方なら、どんな建物もつまらなく見えるはず」 「そう卑下することもないでしょう。ともかく、今の私とおまえとは対等の立 場で話をするのです」 「何を勘違いされているのか見当も付きませんが、私はイェスマ様と対等に話 ができるほどの者ではありません」 「何を言いますか。皆を集めて、堂々の話ぶり。先ほど、遠くから見せてもら いました」 「参りましたね……」 わざとらしく頭をかくディモ。 −−続
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