長編 #3582の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「基本的なブロックは、できるようだな。では、本当の魔法というものを、見せてやろ う」 夕闇を貫く、宵の明星のように、エリスの金色の瞳は、冴えた輝きをみせる。空間が 撓むように、あたりの光景が歪み始めた。 物理的な音にはならないが、耳の奥で空間のきしむ音が、確かに聞こえる。立ち尽く す闇のようなドルーズの周囲に、ぽつり、ぽつりと、光の粒が出現し始めた。 微細な光の粒子が、粉雪が降り積もってゆくように、ドルーズの周囲に集まってゆく 。それは麻薬の幻覚のような、この世のものではない、実に鮮やかで美しい色彩を出現 させ始める。 ドルーズの周囲に球状の宇宙が、姿を現しつつあった。ドルーズの視界には、天上世 界のような、極彩色の光景が開けつつある。 宝石をはめ込んだように、透明で明るく煌めいている青い空。ガラス細工のように繊 細で、肌理の細かい漣をたてる湖が、足元に広がる。夢の中で描く為の顔料から着色さ れたような、赤や黄色の花々が咲き乱れ、宝石で羽を造られたように、透明で清冽に輝 く鳥が、頭上を舞っていた。 それが、いかなる世界かは、判らない。ただ、今まさにドルーズにとって実在する世 界であるのは、間違いなかった。 魔法と幻術は、よく似ている。ほとんど同じ、といってもいい。ただ一点を除いては 。 それは、幻術の場合、幻はあくまでも、幻であるが、魔法は、幻を見せられている当 人にとっては、まぎれもなく実在しているのだということである。 ドルーズは今まさに、物理的に存在する、別の宇宙へと送り込まれようとしていた。 ドルーズの周囲は、宝石で造られたカレイドスコープのように輝いている。ドルーズの 目には、ゆるやかな波紋が渡ってゆく静かな広い湖が映っていた。 頬を撫でる湿った風、頭上を舞う鳥の声、すべてが本物である。今や地底の宮殿、ナ イトフレイムは遠い夢のようであった。 こうして魂が別の世界と同調した時、人間の肉体もまた別の宇宙へと同調する。かつ て暗黒王ガルンをオーラ軍が迎え討った時、数万もの兵士がガルンの魔法の術中に陥り 、鎧だけを残し肉体ごと別の宇宙へと消えたことがあった。その鎧は墓標のように、い まだに戦場に残されている。 ドルーズは完全に、極彩色の球体に包まれた。その球体は、次第にしぼんでゆく。 人間の頭ほどの大きさから、拳大へ、そしてあぶくほどの大きさになり、完全に消え ていこうとした。 「この程度のものか」 エリスは、侮蔑の笑みを見せた。突然、光の球が炸裂し、あたりに光の渦が巻き起こ る。 「何!」 エリスは、思わず後ずさる。水球が弾け、水がまき散らされるように、無数の色を持 った光があたりに流れてゆく。そして瞬く間に、光は消えていった。後には元の通り、 影のような黒衣に身を包んだドルーズが、佇んでいる。 「どうやった、貴様」 エリスの問いかけに、ドルーズは凄絶な笑みを持って応えた。 「簡単ですよ」 ドルーズの美貌は、内から溢れようとする何物かによって、歪められている。それは 、笑いの形をかろうじてとっていた。 「私自身の、内側を見つめていたんです。そこにある真っ黒な死のリアリティは、あな たの見せた宇宙より、あるいは、この宮殿よりも遥かにリアリティを持っていたんです 」 「馬鹿な」 魔法のつくり出す世界、それがそれを見る者にとって、単なる幻と化せば、魔法はた だの幻術となる。エリスが呻いた時、ドルーズは静かに言った。 「あなたの術がこれで終わりであれば、こちらから反撃させていただきますよ」 ドルーズはすっ、と黒衣の胸元をはだける。陶器のように白い肌が露になった。エリ スは、目を見張る。その胸に、女の顔が
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