長編 #3578の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
剣の切っ先が見えている。 先頭に立っていた魔族の戦士が、剣を放ったのだ。魔族の戦士は、野獣のような優雅 さをもって、うずくまったゲールに近づく。頭を掴み、顔を上げさせると、無造作に剣 を抜いた。 ゲールは、屠殺場で殺される動物のように、力無く泣いた。ケインは一瞬、全身が凍 り付くような、冷たい波動を感じる。渦巻くような、強烈な瘴気があたりを満たしてい た。 麻薬の幻影の中にいるように、世界が歪む。その中で、魔族に頭をつかまれたゲール が、幾度か痙攣する。やせ衰えた老人のように変貌した、ゲールの死体を、魔族の戦士 はゴミ袋を捨てるように、投げ出す。ケインは自分の足が、震えているのを感じた。 残りの魔族たちが、ケイン達を見つめている。逃げようにも、足が動かなかった。後 ろをみせれば、ゲールのように、剣を投げつけられるような気がする為だ。「ま、ひと つやれるだけ、やろうや」ジークが、妙に晴れ晴れと言った。ケインも覚悟を決める。 本当に、家畜のように、黙って殺される気は無い。 ケインは、想念をまとめ始める。いきなり闇水晶で斬りかかるつもりだ。闇水晶で首 を落とせば、魔族といえ、生きてはいまい。 ジークも左手を掲げ、すり足で魔族達へ近づいてゆく。ケインはジークの後ろについ た。捨て身で戦って、活路を見いだすしかない。 突然、魔族の戦士達が、踵をかえした。ケイン達と反対方向へ、歩いて行く。ケイン 達など始めから存在していなかった、というように。 広間の反対側にも、階段がある。その階段の奥から、足音が聞こえていた。魔族の戦 士達は、散開して待ちかまえる。 「へぇっ」ジークが感心する。「やつらに、戦う気を起こさせる相手が、来るみたいだ ぜ」 確かに、ケイン達と対峙したときの魔族達には、鼠をいたぶる猫のような残忍さしか 無かった。今の魔族達には、戦う者の持つ、緊張感が感じられる。 そして足音の主達が、姿を現した。先頭は、煤色のマント纏ったブラックソウル、そ してその背後に長身の戦士が二人、さらにその後ろには、黒衣の魔導師ドルーズにクリ スが続く。 ブラックソウルは、パーティ会場に遅れて現れた主賓のように、微笑んでみせる。そ の体には、さっきケイン達が浴びたものとは比べものにならないような、暗黒の波動が 浴びせられていた。ブラックソウルは、常人であれば衰弱して即座に昏倒してしまうよ うな瘴気を、そよ風ほどにも感じていないようだ。 見ているケインのほうが、吐き気を感じ始める。広間の反対側であるにもかかわらず 、目眩を感じさせるほどの精神波を、魔族達は発していた。ブラックソウルは、楽しげ に言う。 「やれやれ、またですか。逃げ出してもいいんですよ、クレプスキュールの皆さん。あ なた達を殺すのは、本意じゃない。欲しいものさえ得られれば、さっさと帰ります」 魔族達は、無言であった。ブラックソウルは、微笑む。その笑みには、侮蔑が混ざっ ていた。 「家畜とは、口をきかない、ということですか。じゃあしかたありませんね」 ブラックソウルは、後ろへ下がる。剣を提げた、長身の戦士達が前へ出た。その戦士 たちは、異相の持ち主である。 その顔と腕には、炎を思わす形の入れ墨がなされていた。両腕の入れ墨には、何か呪 術的な意味を持つ文字が、組み込まれている。 体には、ごく軽い革の防具のみを、つけていた。頭の髪は、頭頂部のみを残し、全て 剃り上げられている。むき出しになった側頭部にも、火焔の入れ墨は彫られており、隈 取りされた顔は、伝説の魔物を思わせた。 そして頭頂部に残った紅い髪は、天に向かって逆立てられている。まるで、燃え盛る 炎が、頭上に乗っているようだ。
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