長編 #3552の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「 魔 術 師 」 金剛寺 零 1 1960年の中頃、山奥にあった平地に、1軒の館が建てられ た。建てられた館のまわりの土地は削られ、その館だけが孤立す るように建てられた。一ケ所だけ、つり橋がかかっている。それ だけがもともとこの館の建つ土地も、山の一部だったという証拠 なのである。 館を建てたのは、御鏡玲於奈(みかがみれおな)という人物で ある。御鏡の建てる館は、他のものとは全く違っていて、まず、 建物自体が変わっているのである。しかし、そんな所が良いのか 御鏡の建てる館は評判が良いのである。 1960年代に御鏡は3つの館を建て、自分の館を建て終わる とほぼ同時に、死んでしまったのである。その後、その館は、園 田啓二郎という人物に引き取られ、後の世に残ってきたのである。 1996年の夏、伊集院翔は御鏡玲於奈の建てた館を訪れた。 その館は長野県の近くの山奥に、静かにたたずんでいた。伊集院 の友人園田和巳は、園田啓二郎の子孫で、夏休みに伊集院をその 館に招待してくれたのである。 「このなに山奥に建ってるの?」 伊集院は和巳に訪ねた。 今伊集院は、和巳と一緒に車に乗って、その館に向かっている。 この車は園田家のものらしく、駅まで迎えに来ていた。 「えぇ、もうちょっとすると見えてくるわ」 和巳はそう言うと車の窓を開けた。 外の空気は都会とは比べ物にならないほど美味しかった。伊集 院はそんな空気を風景と一緒に味わっている。 今、車が走っているのは高い樹木に覆われた自然のトンネルの 中で、木々の間から差し込まれる木漏れ日が、辺りの景色をより いっそう引き立てていた。 伊集院翔。体形はやや痩せていて、身長は高い。頭の切れ味も なかなかのもので兄は警察官である。伊集院も将来、兄と同じ職 業についてみたいという願望を持っている。 園田和巳。園田家の令嬢で、伊集院と同じ大学に通っている。 頭の良さなかなかで、スポーツの方も万能である。すらっーとし たスタイルで、女性からも憧られるほどの美人である。 車に乗ってから何分たったかわからなかったが、ようやく自然 のトンネルを抜けた。明るさが何倍も違うため一瞬目がくらんだ。 伊集院はそれでも目を開いてそこに広がる景色を見た。 緑の色が見たこともないくらい青々としている。そして、太陽 の日の光を葉一杯に受け止めている。そして、御鏡の建てた館が、 そんな緑の中に埋もれてそびえている。屋根の色が真っ赤なので、 青々しい緑の中でも一目でわかる。 「何て言う名前の館?」 「確か”紅館”て、言う名前だったと思うわ」 「”紅館”か・・・」 伊集院はそんな風景に見とれていた。 それから10分後、やっとのことでつり橋まできた。 このつり橋だけが、唯一の連絡橋である。しかし、そのつり橋 も見た目は大分古くさく、いつ壊れてもおかしくなかった。車が その上を通ると少ししなっていたが、見た目よりも頑丈で頼もし いつり橋だった。 つり橋の下は水が溜っている。ダムか何かなのだろうと伊集院 は思いながら覗いていた。それにしても、その水の表面までの距 離は数十mはありそうである。もし、つり橋が無くなったらここ に飛び込むしかないと伊集院は考えていた。 伊集院が色々なことを考えているうちに車は”紅館”の前に到 着した。2人は車から降りると、”紅館”の玄関まで歩いていっ た。車は2人を降ろすと建物の裏側に進んでいった。和巳は、” 紅館”のドアを開けて、中に入っていった。 中は長方形の大きな空間になっていて、少し歩いていくと、6 0cmほど低くなった場所があった。造りは、ロビーのような造 りになっていた。 そこに1人の男が座っていた。 「叔父さま」 和巳がそう呼びかけると、男は立ち上がって2人のことを見た。 「おぉっ、和巳ちゃん。よく来たねぇ、そっちの人は?」 和巳の伯父がそう言った。 「伊集院翔と言います。和巳さんの同級生です」 「これはこれは、和巳のわがままで。私は園田時夫と申します」 園田時夫。和巳の伯父で、身長は伊集院よりも低く、少し太っ ている。 時夫はそう言うと和巳と何か話していた。伊集院はその間に、 この建物の内部を見渡していた。1960年に造られたにしては、 妙に古さを感じさせないなぁ、と、伊集院は思った。 今も建物よりも天井との高さが大分違うように思える。外から 見た感じでは、4階建てに見えたのだが、この分だと3階建てく らいだなと、検討をたてて伊集院は1つ1つ見ていた。 「翔君、先に部屋に行くわよ」 和巳がそう言うと伊集院はあわてて自分の荷物を持って、和巳 の後を走っていった。 「”紅館”て、何階建てなの?」 「今いる中央部が3階建て、両サイドが2階建てよ」 和巳はそう言いながら”中央部”にある、階段を上っていった。 階段は”中央部”の右端についている。幅は普通のものの2倍は ある。赤い絨毯の敷かれた階段を1段1段上っていった。 伊集院の部屋は2階であった。2階は1階と同じ縦長の長方形 の空間で、それを横に3等分した部屋からなっている。その中で 玄関側の部屋が、伊集院にあてがわれた。 「翔君の部屋はそこね、カギは机の上に置いてあるから」 「ありがとう」 「私はもう1つ上の階の同じ位置の部屋だから」 和巳はそう言うと階段を上っていった。どうやら、3階も同じ 造りになっているらしいと、伊集院は考えた。部屋に入った伊集 院は荷物を置いて一休みすることにした。 10分後、外から車の音が聞こえてきた。1台だけではなく、 数台の違う車の音がこの”紅館”に向かって聞こえてくる。伊集 院は窓から外を見た。外には3台の車が見えていて、色は、白、 黒、赤の3台である。 コンコン。 伊集院の部屋のドアを誰かがノックした。 「はい。どうぞ」 ドアを開けて入ってきたのは、和巳だった。 「いい部屋でしょう」 「うん。とても良い部屋だよ。それと、外の車は何?」 和巳はそう言われると、窓から外を見た。 「アレ、おじさんの知り合いとかじゃないかなぁ?」 それから2人は、伊集院の部屋で話をしていた。日が暮れ始め、 伊集院の部屋には夕日が綺麗にさし込んでいる。部屋中が夕日の 色に染まった。 「そろそろ下に行かない?」 「そうだね」 2人は部屋を出て、階段を降りていった。 さっきまで時夫が居たロビーには、今は誰もいなかった。静ま り返ったロビーには、天井から照りつけている蛍光灯の光だけが あった。 2人はそのままロビーを通り過ぎ玄関に向かって左に曲がった。 目の前には部屋の入り口が見えている。振り返ると、向かい側に も同じドアがついている。2人はそのドアの前まで歩いていった。 まわりにはもう1つドアがある。 「その部屋は何があるの?」 伊集院が指で指しながら、和巳に訪ねた。 「そこはトイレ。こっちが食堂よ。後で一通り説明するねっ」 和巳はそう言うと、目の前のドアを開けて中に入っていった。 中には5、6人の人が集まっていた。その中に時夫の姿があっ た。時夫のほかに男が2人、女が3人、そのうち子供が1人いる。 2人は黙って席についた。 全員だかわからないが、この部屋に人が集まった。全部で15 人である。名前がわからないのはそのうちの13人だけである。 「全員集まったところでも、夕食会でも始めますか」 時夫はそう言って、皆に夕食を勧めた。 夕食をほぼ全員が食べ終わったのは、それから1時間後のこと であった。 「では、今ここにおられる方々の自己紹介でも・・・」 時夫はそう言って、自己紹介をした。 「私は、利根田隼人です」 時夫の右隣の男が言った。その男は小太りで身長の低い男だっ た。眼鏡をかけていて、ひげを生やしている。 「私の妻の菊子。そして、娘の燐子です」 菊子は痩せていて、若かった。髪の毛の長い女性である。燐子 は、伊集院達よりも年下で、中学生ぐらいに見える。髪の毛はシ ョートカットで身長は高い。 隼人はそう言って、となりに座っている女を立たせた。 「えー、私は、連条紀夫です。妻の静香と息子の哲也です」 紀夫は少し腹の出ている中年で、身長は低かった。静香は紀夫 と対照的で、背が高く、すらっとしている。哲也は茶髪で身長は 普通である。 そう言って3人は立ち上がった。 「私は、夏目幸助です。妻の萌と息子の慎治、娘の理津子です」 幸助はまだ若く、がっちりとした体格である。萌は小柄で綺麗 であるが、綺麗という言葉よりも、可愛いという言葉の方が似合 う女性である。慎治は眼鏡をかけている。体格はがっちりとして いて、長身である。理津子は、お嬢様というような趣が感じられ る。長身でスタイル抜群である。 前の人と同じで立ち上がった。 「私は、沖田誠治です」 誠治は、どことなく硬さが見える男で、眼鏡をかけている。 伊集院のとなりの人物が立ち上がっていった。 次に伊集院が、そして、和巳が自己紹介をした。 「私は、三田幸夫と申します。妻の陽子です」 幸夫は、白髪頭の男で、顎髭を生やしている。陽子は、眼鏡を かけいている。 2人はそう言うと軽く会釈をした。 自己紹介が終わると16人のうちの数人が、自分の部屋へと帰 っていった。伊集院もそのうちの一人である。 「翔君。”紅館”の中を紹介するね」 和巳はそう言うと、食堂を出て右へと歩いていった。 食堂の直ぐ横がトイレであることはさっき知った。 トイレのとなりに部屋があって、突き当たりにも部屋がある。 突き当たりを左に曲がるともう1つ部屋がある。 「トイレの隣と突き当たりは客室で、角の部屋はお風呂になっ てるの」 和巳はそう言うと、風呂場の前にある階段を上っていった。伊 集院もその後を追って上っていく。 2階も一階と同じ間取りである。 「2階は全部客室で、2階のトイレは1階と同じ位置にあるの」 「ふーん」 2人は反対側の階段を降りて、中央部に戻ってきた。 「次は、反対側の”西部”を案内するね」 和巳はそう言うと、食堂と反対側の建物へと歩いていった。 「こっちは1、2階とも客室になっているの」 2人は奥まで行って階段を上り、2階を通って1階に戻ってき た。”西部”は”東部”みたいに複雑ではなく、曲がり角の無い 一直線の造りになっていた。 「中央部は、全てが客室よ」 2人は伊集院の部屋へと歩いていった。 「この部屋が一番良い部屋みたいね」 「何で?」 「高さ的に良い位置なの、窓の位置が」 和巳は窓の外を覗きながらいった。
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