長編 #3422の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
おれを移植した博士にも重大な問題があった。この博士は実は無償のいやらしい生 きが好きで、その上激しいドンパチをやらかすのが趣味だというばあさんだったのだ。 博士には世界中のマフィア、各国政府はもちろんのこと、隣人の女の子にまで命を 狙われているということだった。 隣人の女の子はちょっと可愛い感じがして、おれは気にいってたのだけど、あっち はおれのこと好きじゃなかったみたい。この間なんか、おれに隣人の女の子がにっこ り微笑んでおいでおいでするから、よっていったら、おれの腹に出刃包丁もブスリと 突き立ててくれたこともあったしな。そのときはおれは驚いたよ。おれは生涯女の子 から恨まれるようなことはしていない。おれは女の子は優しくくどく、両者の合意の 元に円満解決、別れるときも恨みっこなしと云うポリシーを持っていたりしたものだ。 おれの腹に出刃包丁を突き立ててくれた隣人の女の子に驚かさないようにじっくりわ けを聞いてみるとばあさんが何かとてつもない悪さをしたらしい。ばあさんへの恨み に付け込んで邪悪な気配が荷担して、女の子を操っていたということなのだな。邪悪 な気配は邪魔なおれを消そうとしたらしい。おれがちっとは他の人間よりも強い身体 を持っているからと云っても、出刃包丁を突き立てられるのはあまり好きではない、 それに痛い、身体の感覚器官も人間と同じものを持っているのだから、快いものは快 い、痛いものは痛い、単純にして明快な理論から発している結論である。ばあさんも いやらしい生き物たちのことを考えずにたまにばあさんの研究室に寄らなければなら ないおれのことを少しは考えてくれたらちっとは近所付き合いも円満にしておけと云 いたくなるよ。そんなこんなでいつあの世に走るかわからない博士のためにおれの移 植を急がしたというのは当然といえば当然の成行といえるね。今でも博士の家は床の 間に招き猫型重装備の兵器がならび、その上であのいらやしい生き物たちがにゃーに ゃー鳴いているという無茶苦茶な光景を骨の髄までよく知っているおれは、博士がま だ殺されていない間に脳髄の移植をさせてしまうね。 おれが死んでから25時間13分32秒後に、目を真っ赤に張らした博士がおれの 脳髄をガラスの容器から出したのだ。そしておれの脳髄と博士が彼らがどうしてもと いうから造ったおれのボディとの接続をちょいちょいとやってしまった。おれの移植 がどんなものかわからない。記録によると内部構造はすべての神経繊維と神経パルス を各ボディの節々に温点、冷点、圧点、痛点、霊点、各感覚機能まで接ぎ、まったく 普通の人間と同じ、いやそれ以上の感覚を感じるようにしてくれた。更に外見はうぶ けの一本に当たるまで完全な人工物なのに特殊な機械で計ってようやくわかるような 外見を与えてくれた。へたなロボットにでもされたら泣くにも泣けないが、脳髄の反 応で股間まで調節してくれているので。これは一応感謝している。 おれが再びこの世に生を受けたとき、初めに見たのは白い壁だけだった。次にみた のは肉食獣がもつ精悍な顔がまえ、黒い髪、黒い瞳、男の敵、女を惑わす究極の二枚 目の顔だった。おれは見知らぬ男の顔をどれぐらいそれを見詰めていただろうか。横 から見て、右から見て左から見る。それでも飽きたらず、下から覗いたりした。おれ は見知らぬ男を見るのを止めると次に頭を抱えた。こんな奴しらん。こんなのおれじ ゃない。しかし、目の前にあるのは鏡という認識があった。つまりこの見知らぬ男は おれだと云うことだ。おれはおれの昔の顔を思い出すことができなかった。よくよく 考えればおれは昔の記憶そのものを失ってしまっていたのだ。 脳髄にまったく損傷がなかったとは云え、胴体と頭が離れるほどのショックを受け たのだ。脳髄が驚いて記憶喪失になるぐらいわけないことだ。今、少しずつ前の記憶 を思い出すことはできるが、まだ十分ではない。前の名前、どこに住んでいたのかす らわからない。まあいいさそのうちわかるだろうとは思っているけどね。 おれの腕と接続されている生命維持装置の音に混じって、微だがおれ以外の寝息を 聞き取ることができた。おれは持ち前の好奇心に駆られて、微調整も済んでいない身 体のまま、隣のベットに寝ているものを見ようとしたのだ。 腕のチューブを外す、血液が逆流して床に赤い染みをつける。おれはゆっくり歩き だした。 おれの隣のベットに少女が横たわっていた。少女は、顔はやや細く、髪は栗色、唇 は紅を塗っていないのに真っ赤、そしてこの少女はすっぽんぽんだった。 少女を見たとたんうぶな少年のようにおれの胸はきゅんと鳴り、知らず知らずに少 女の身体を触ろうとした。だが、細いきゃしゃな少女を触ったとたん、背に得も知れ ぬぞくぞくと寒気が走った。な・・なんなんだこの感じは、おれは驚き、手を引っ込 めた。こ、この少女はなんなんだ? おれの理性はあきらかにやりたいと思っていた ようだ。だが本能はこいつには触りたくない、触れたくないとはっきり拒絶している。 いや、反対か、おれの本能がやりたいと云って、理性が嫌だ、嫌だ、嫌だ、近づいて くれるなと云っていたのかも知れない。ええい、もう分からん。分からん。分からん。 今でもおれはわからん。 と、とにかくおれは眠れる少女に触れた。少女はあの目をおれに向けた。大きくあ くびをして、両手で目をこすっていた。そしておれを見て、ニャーと云ったのだ。お れも少女につられてニャーと答えてしまった。忌まわしき言語を使ったのはこれが初 めてだったのだ。おれのか弱い理性がショートしてそのままおれは気絶した。 おれの移植はどうやら成功だったようだ。女の子も簡単にたぶらかすことのできる 甘い顔、強靭な肉体、とってもいい性格のおれにふさわしい肉体を手にいれることが できた。 だが、一つだけ重大で恐ろしい問題がある。おれの移植をするついでに、こちらが 博士にとって本分のような気がするのだが、お産で死んだ子猫の移植も一緒にやって しまったのだ。それも先に子猫の移植をやって、そのまま手を洗わずにおれの移植を やってのけた。 その結果、おれは猫の脳髄エキスがおれの脳髄に入り込み、おれは・・・おれは・・ ・おれは考えるだけで恐ろしい。 おれが次に気がついたときおれの枕元にしわくちゃのばあさんが座っておれの脈を とっているところだった。 ばあさんが猿よりも無気味な笑顔をおれに向けてきた。おれはばあさんの無気味な 笑顔よりもばあさんの肩に止まっているいやらしい生き物に目を向けた。いやらしい 生き物、人が抱きつこうとするときまって爪を出して醜い傷跡を創ってくれる。餌を やっても礼の一つもしようとしない恩知らずの生き物、人がどこにいようともおれの 目の前にやってきては、あの無気味な声で鳴く生き物。小さな猛獣、獰猛で自分勝手 な生き物たち。言葉にするも恐ろしい猫が、ばあさんの肩に一匹ちょこんと留まって いたのだった。 それも可愛らしい猫ならまだましだ。肩に留まっていたのは普通の猫よりも大きい 一回りも二周りも大きいでっぷり太った黒猫で、おれの一番嫌いなタイプの猫だ。黒 猫、黒猫は不幸を運ぶって聞いたことがないか。それに黒猫でも西洋の話に確かあっ ただろう。壁の中から自分を殺した男に復讐する首の輪郭だけが白い無気味な黒猫の 話だ。 とにかく博士の肩にはいやらしい黒猫がとまっていた。首の輪郭だけが白い復讐を 遂げた黒猫を見て、おれは驚き、いやらしい黒猫をどこかにどかすようにばあさんに あらん限りの罵倒を使った。ばあさんは眉をしかめておれを見た。可愛がっている猫 を侮辱されたばあさんはおれを再び脳髄に戻すとかわけのわからないことを云ってい た。 肩にとまっているいやらしい生き物はおれを見て面白そうに笑っているのがわかっ た。ばあさんとおれのやりとりが血を見るところまでくるとおれに向かって一言ニャ ーと云った。おれは即座にそのいやらしい生き物の言葉を翻訳した。奴が何を云った のかわかったのだった。 猫のやつおれのこと「大馬鹿野郎」だと云って笑いやがったのだ。 おれの脳髄に猫のエキスがほんの少し入ったおかげで、おれはこともあろうにあの いやらしい生き物の言葉を理解できる人科猫族翻訳型のサイボーグになってしまった のだ。 ばあさんはおれがサイボーグになったわけを説明してくれた。説明だけでは納得し ない点もあるが、記憶がないのだからばあさんの言葉を信じるしかないだろう。おれ は天涯孤独の若者で、おれは博士から聞いても信じられなかった。信じることができ ると思いますか、信じられないでしょう。 目が覚めるとサイボーグになっていただなんて、泣きたくなりますよ。それも猫語 が理解できるサイボーグだなんて、悪夢だ。 博士のしわくちゃな手がおれの身体に伸ばしてきた。おれはぎこちなく身体を避け て、博士の診断を拒否しようとした。博士の手がゆっくりとおれの股間をさわってき た。おいやめてくれよ。おれは博士に抗議しようとした。ああん、博士の熱い息がお れの唇に向かってくる。やめてくれえ。おれは婆さんは嫌いだあ。しわくちゃの猿に おれの大事な股間をさわられたくない! おれは叫ぼうとした。でもそれはできなか った。 博士の唇がおれの唇に触れようとした瞬間、おれの部屋に向けて、邪悪な気配が襲 いかかってきたのです。おれは博士の首根っ子を掴み、外に放り投げた。博士は青い 空に飛んでいくのが見えた。 おれはニャーと叫んだ。下の芝生からニャーと返ってきた。どさりと博士が無事落 ちた音が聞こえてきた。おれはにやりと笑って、外から来る邪悪な気配を迎え撃つ準 備をしました。それは目に見えぬ空激砲という形でやってきた。おれの横では尾を二 つに分けて黒猫が邪悪な気配を迎え撃とうとしているのが見えました。おれは黒猫に 先導されて【素質】の記憶にもれていた反撃方法を取ることにしました。邪悪なる存 在を消すためにです。 大変恥ずかしいですが、おれは初めて邪悪なるものの存在を知り、【聖なる】エキ スを出しました。邪悪なる気配はおれの【聖なる】エキスのために中和されました。 おれと黒猫のブラックはお互いの顔を見つけあい、にやりと笑いました。そしてその 後地上三階の部屋からふわりと飛び降りたのでした。 おれたちが飛び降りた後、今までいた部屋に空激砲が飛び込んできたのですが、先 におれたちが邪悪なる気配を【聖なる】エキスで中和したために、普通なら建物ごと 吹っ飛ぶ空激砲は、部屋一つ潰すだけで済んだのでした。 おれは邪悪なる気配を察知した瞬間どうなったのか、わかりません。身体が自然に 動いて行動を起こしていました。おれは全身の毛が逆立つのを感じました。にゃおん、 にゃおん、にゃおん、おれの肩にあの黒猫がおれの耳に語りかけてくるのがわかりま す。おれは軽く黒猫の喉をくすぐります。黒猫は目を細くしています。おれと黒猫は 超感覚で敵の気配を逆探知したのです。窓際から角度三十度上空にある隣の建物から 銀色の空激砲を担いで、逃げる男の姿をみたとき、おれは次の行動を起こしました。 おれと黒猫ブラックは、三十三階から飛び降りました。ふわりと軽く一回転して地 上につきました。特殊強化した肉体と猫族の持つ超感覚が邪悪なる獲物を捉えたとき おれの中で何かがかわってしまうのです。それまでの猫嫌いのおれはどこかにぶっと び邪悪なるものを滅ぼすハンター、この猫嫌いのおれが猫そのものとなって、獲物を 追い詰め【聖なる】ものとなり滅ぼすのです。おれは黒猫を肩に止まらせ一気に隣の 屋上まで登っていきました。 非常階段から降りてきた黒づくめの男がおれたちとぶつかりあいました。黒猫のブ ラックは大きな口を開けて敵を威嚇しています。黒づくめの男がわけのわからない言 葉をはき、手に持っている空激砲をおれたちに向けて発射しました。 ふわりと黒猫がおれの肩から降りました。毛を逆立てています。そしておれはニギ ャァァァァァ吠えました。おれの【聖なる】ものが勝つか、奴等の邪悪な気配が勝か、 あたりの空気が緊迫し、普通のものなら発狂ものの緊迫感を伴っています。 ぐいぐい、おれの両手に凄じい気配がぶつかりました。おれの両手に聖と邪がぶつ かっているのがわかりました。 ぎゃああああああ、おれの口から気合いが漏れているのがわかりました。おれは涙 を出して耐えました。手の中で空激砲の威力が弱まっていくのがわかりました。やが ておれの手にはただの鉄の塊となった空激砲が残るだけとなりました。 おれはただ奴等の操り人形となっただけの男をみたのです。黒猫ブラックは早く済 ませろと云っているのが聞こえました。おれは嫌々男の尻へ【聖なる】エキス、抜け 殻となった男の大腸へ注入しました。 おれは初めて奴等とぶつかりあい、そしておれの股間には脳髄の神経組織からフェ ロモンとして出される特異な【素質】を持っているのを初めて黒猫ブラックから聞か されたのでした。 おれと邪悪なるものとの初陣が終わり、地上に降りたとき、あの美少女がたってい ました。おれの顔を見ると美少女が嫌そうな顔をして、おれの方を見ません。 おれは、博士を抱いて頬をぺろぺろなめているあの少女を見詰めました。 するとどうでしょう。少女はおれを見て、にっこり笑い云いました、にゃおんと。 黒猫が少女の肩によじ登りにゃおんと鳴きます。黒猫の尾はすでに閉じられていまし た。おれはこのとき悟りました。今まで嫌で嫌でたまらなかった猫嫌いのおれがこ ともあろうに猫の不死身のエキスを得て、移植に成功したことを、そして何よりこの 目の前の美少女が猫叉おやじの娘で博士によって猫型サイボーグで、猫嫌いのおれの 苦悩はこれから始まったのです。 ねえ、あなたこれ信じることができます。おれはまっとうな人間でありつづけたい と思っているのですが、邪悪なる気配を感じただけで、猫族の血に反応してしまうの ですよ。 おれがどうしてここにきたかって、わかっているはずでしょ? そうです。あなた の背中に邪悪なるものがとりついているのです。なんとかしてくださいよ。そうしな いとおれは、おれは・・・・・にゃおん、にゃおん、にゃおん、にゃああ! ふぃん
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