長編 #3276の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
ここは、何もないただ白い雪原。ここで死のう、そう思った自分は、 意志を書き記した手紙をそっと置き、その場に仰向けになった。 背中が冷たい・・・。 目をつぶると、微かな風の音と鳥のさえずり、そして何時しか雪が 降り始めたようだ。自分はそのまま眠りにつこうとしていた。 ”ザクッザクッザクッ” 足音・・・−。 意識が薄れていく自分に、何かが近寄るのがわかった。 @@@ どのくらい経ったろう・・・。体全体に温もりが感じられる・・・ ”パチッ・・・パチパチッ・・・” 火の燃える音が聞こえる。何だか暖かく、ふわふわとした感触が背中 に有った。瞼に微かな赤い光がさしこむ。死んだのだろうか、瞼が重く、 目が開かない。何とか体を動かそうとした自分は、その痛みから死んで いないという事を察した。 「う、うう・・・」 だが、微かな声しかでない。耳を済ますと木の燃える音が聞こえる。 誰かに助けられたのか、それとも、夢なのか・・・。 「ガタッ」 近くに人がいるらしい。自分の動きを察したのか、椅子が倒れる音と共 に、人がこっちに近づいてきたようだ。瞼からでも人が近くにいること がわかった。風の動き右から左に向かっている。 ”ビシッバシッ” 誰かが自分の頬を叩いているのだ。何故叩くのか、どうして叩くのか、 痛い。生きている、そう口を開いて言いたかった。 「あ、うう・・・」 精一杯力を振り絞った結果の声。情けない唸り声だった事が、自分の精 神力の弱さに情けなく思えた。ふと、聞こえたのだろうか、頬を叩く手 はぴたりと止まった。 「おい!意識は戻ったか?おい!」 男のようだ。幸いにも目が微かに開いた。うっすらと見える暖かい光。 「おお、とりあえずは安心したよ。そこでもう少し温まるといい」 男はそう言うと自分の視線から消えていった。山小屋のような天井が霞 んで見える。誰かに助けられた事に間違いはなく、身体中が軋むような 感じがする事も間違いない事実のようだ。風の音が聞こえないのを察す るに、よほどきちんとした作りの山小屋なのだろうと、いらぬ考えをし ていた。考察しているうちに、自分は静かに目をつぶった。 @@@ ”ゴトンッ” 耳もとで何かが落ちた。 「ん、・・・何だ・・・?」 声が出たのに気づいたのは数秒経ってからだった。はっとして目を開 くと、自分の側に黒く長い髪の女性が立っていた。綺麗な肌の女性。見 入ってしまいそうだ。視線は紛れもなく反れた。 「あら、ごめんなさい。起こしてしまったみたいですね、動けるかしら?」 起き上がることが出来た自分は、回りを確認し、あの人物が居ないのに 気づいた。きっと自分を何かから助けてくれたのに違い無いのに、礼の 一つもせずに眠りについてしまったのだから。 「あの、・・・男の人・・・」 今気づいたのは、自分の近くにいた男、そして・・・ 「・・・えっと・・・」 女は台所に戻って何かを作っているらしく、いい香りがした。 自分は考えた。何故助けられたのだろう、何故助けられる事をしてい たのか、何故ここにいたのか、自分は何をしにここに来ていたのか、こ ことは何処か。 「・・・ここは、どこ?」 「ミスウィップという山岳地帯の」 「思い出せない・・・俺は、一体誰だ・・・」 女は包丁を叩くのを止めた。 「お父さんが知ってるかもしれませんから・・・」 そして、また何かを切り始めた。いやにあっさりとしているのを尻目に、 近くにあるリュックを手に気がついた。見覚えはある。 「そういえば、リュック。あなたのらしいですから、何かわかればいい ですね」 自分の物らしい。 ”ヂィー” ファスナーをけると、何やら書いてある封筒が目についた。しかし、水 に濡れたような感じになっているようで、ぐしゃぐしゃになっていた。 @@@ 「おお、目が覚めたか。」 帰ってきた男は、帽子をかぶった髭の長い中年の紳士だった。男は、 テーブルの近くにある椅子に座るとこちらに振り向き、言った。 「私の名はクレセント=ホフマン、娘の名はクレセント=クリス。君の 名前は?」 「・・・・・・わからない」 思い出せなかった。当たり前という葛藤が頭に舞っているのがわかった。 親も、名前も、住んでいる所も、何故ここにいるのかさえも。どうして 思い出せないのか、確かに手応えのある質問であったはずなのに、人で あるならばそんな質問は、何気なく答えられるはずなのに。 「どうぞ、お二人とも」 そんなとき、クリスが暖かいミルクを運んでくると、テーブルにそっと カップを置いた。白く暖かいゆげは、心を和ませてくれるようだった。 「・・・ほら、飲むといい。暖まるぞ」 「記憶、無いわけじゃない・・・。思い出せるはずなんだ。喉まで出て いる、だけど、だけど・・・」 ホフマンは、息をつくとミルクをすすった。すこしだけ、ホフマンの頬 が赤らむ様子が伺た。 「まあ、いいじゃないか。きっと何か訳があって雪の中にいたんだろう。 べつに、すぐ出ていけなんて事は言わないから、ゆっくりと思い出せ ばいいだろう」 「そうよ、気長に考えなければだめですわ。ごく自然に、ふとした事が 思い出す切っ掛けという事もありますし」 「すいません・・・」 「とにかく、ゆっくりと回復を望もう」 情けなかった。見ず知らずの人に身を託す事が、これほど弱い事だった 事に、自分自身が崩れてゆくのがわかった。
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