長編 #3250の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
殺気を感じて、セナは毛布を蹴り上げた。 暗がりの中、何かしらの人影に、毛布が引っ被る感触。 セナは横になったまま転がり、自分の剣を取ろうとした。が、枕元からわず かに離して置いたはずの剣が消えている。 「なっ?」 このままでは危険だ。理性で判断するよりも早く、セナは目を凝らし、脱出 路を求めた。 部屋の入り口は、襲撃してきた人影が立ちはだかっている。 庭に出るはずの窓も、その向こうには正体不明の連中がたむろする気配が、 ざわめきとなって伝わってくる。 その内、毛布をはねのけた襲撃者が、再び向かってきた。 いやに大上段に、棒状の物をかまえる相手を見て、力量を読み取る。 セナは相手の足下に滑り込み、その向こうずねを蹴り飛ばした。ひっくり返 ったところをのしかかり、棒だけ奪うと、すぐさま離れ、敵の頭部に一撃を加 える。昏倒した相手に再び接近、武器を持っていないか探ってみたが、何も出 て来ない。仕方なく、木の棒一本を手に、廊下へ出ようとした。 が、空気がおかしかった。まだ何人か、廊下側にいる。それでも、襲ってく る様子はない。 「誰だ!」 鋭く叫んでみたが、反応はなし。 セナは毛布をひっつかむと、適当に丸めて、部屋の入り口から廊下へ。ぽー んと放り投げた。 瞬間、どさどさと左右から飛びかかってくる者があった。それらの上を飛び 越え、一気にかけ出す。 二つ隣の部屋にジェンナーがいるはずだ。セナはそちらへ向かった。 が、当の部屋には誰もいなかった。それどころか、最初から誰もいなかった のごとく、きれいに整理されていた。 「ジェンナー!」 呼んでみるも、返事がない。 また廊下が騒がしくなった。 「ちっ」 舌打ちする間も惜しんで、セナは窓を蹴った。 「−−打ちつけてやがる」 セナはすぐに、棒を振るって窓を破った。木がささくれ立っていたが、問題 にしている場合でない。できた穴から、無理に身体を通し、外へ転がり出る。 幸い、周囲には誰もいなかった。この窓から出てくるとは敵も考えていなか ったらしい。 「村の連中はどうしたんだ?」 疑問が口をついて出た。村長の家でこれだけの騒ぎが起こっているのに、村 の様子は静かである。 「どっちへ行った?」 「分からん」 話し声が聞こえた。 セナは物陰に身を隠し、聞き耳を立てる。 「おまえは知らないのか?」 村長の声じゃねえか……。混乱しながらもセナは徐々に、状況を察してきた。 「怪我をしていた奴を寝かせていた部屋に逃げ込んだのを見た」 「では、その裏だ」 村長らが自分を捜して、こっちに来る。セナは訳が分からなかったが、身を 潜めるために場所の移動を決めた。家屋から離れ、庭の片隅にある、背の高い 何か穀物の薮の中に回り込む。 様子をうかがっていると、やがて手にたいまつを持った村長ら、村人数名が 姿を現した。 「いない……」 「だが、窓を破った跡がある。ここから逃げたのは間違いない。捜せ。見つけ 出して、もう片方の奴と同じく、食糧にするのだ!」 (な……んだって?) 声が出そうになるのを、すんででこらえるセナ。 (こいつら……ジェンナーを……) そこから先は考えたくない。セナは強く頭を振った。 (じゃあ、あの親切めかした態度は何なんだ? 俺達を油断させるためか? 最初っから、食糧がないんだったら、俺だって、無理にもらおうとはせん。そ れだけひっ迫しているのか、食糧不足は……) 己が身を隠す盾としている穀物を、ふと見てみる。やせ細っており、手で触 れたところから、ぼろぼろと皮が剥がれていってしまう。実が入っているはず の袋は、開いてみると空っぽだった。 (なるほどな。だが、ジェンナーを殺したのは許せねえ……。俺達は、こんな 奴らのために、命を張ってきたんじゃないぜ) セナは、村人の一人が薮のすぐそばを通るのを見て、そいつに飛びかかった。 棒の一撃で半失神させると、たいまつを奪い、村長の家に火を着けた。木と 草で造られた家は、火の回りも早かった。 さらにセナは、村長の家を出ると、他の家々にも火を放っていった。 五、六軒も焼き討ちしたところで、彼はたいまつを捨て、火の出ていない方 向へとかけ出した。 そして手当たり次第に家に押し入り、剣を探したが、見つからない。仕方な しに、代用品として鎌を手に入れた。 「さすが、よく研いであるぜ」 その家の者の首を掻き切って、セナはつぶやいた。 それからも武器になりそうな刃物を奪い、刃こぼれする度に取り替えていっ た。 −−結果的に、村人全員の命を奪うのに、その人数の半分の刃物が必要であ った。 「ふん。これだけ死体があれば、食糧には困らないだろうが? えーっ!」 そこここに横たわる村人の遺体をざっと見渡し、セナは狂った。 彼は村長の家の焼け跡から、自分の剣を見つけ出した。しかし、それはもう 熱でぼろぼろとなっており、使い物になりそうもない。 代わりに、ジェンナーの鎧の一部−−肩当てを灰の中から掘り出した。 それだけを持って、セナは離れた。村からも、部隊からも。そして、ルズウ ェル国の民である誇りも捨てた。 * * 草の海の中、目を覚ましたセナは、少し早すぎたなと思った。太陽はかなり 傾いたものの、まだ周囲は明るい。 「ま、よかろう」 そう声に出しながら、身体を起こす。 (今宵の獲物は、まだ決まってない。じっくり、品定めさせてもらおう) セナが狙いをつけるのは、原則として貴族等の金持ち相手だ。だから、大き な屋敷が目に留まれば、簡単に標的は決定する。 そういった屋敷が見つからない場合は、いつかのように、道の脇で待ち伏せ し、馬車を襲う。そして積荷を調べるのだ。このご時世、積荷の送り先はほぼ 確実に貴族であるから、標的とすべき敵を教えてもらえるわけだ。 貴族の他に、村や町の有力者も、セナは目の敵にしている。ジェンナーを殺 したのは『村』という単位だ。そんな意識が強いためであろう。 もちろん、町村の有力者すべてが、村人のためならよそ者を平気で殺すはず もない。むしろ、セナが遭遇した事態は特異例のはず。そのことは、セナもよ く分かっていた。だから、滅多なことでは村や町の有力者を標的にすることは ない。ただし、荷馬車を襲った際に、その荷物がどこかの村や町宛だったとし ても、届けてやることはない。そこまで面倒を見る気は、毛頭なかった。 (お……。でかい建物だ) 目の前、やや右手方向に、狙い目とするにふさわしそうな石造りの建物が見 えた。セナは、下見のためにそのまま歩き続けた。 近づくにつれて、建物の『正体』が分かってきた。そして、正面入り口に掲 げられた、これも石でできた看板を見て、セナは落胆した。 (……ちっ。病院じゃないか) さすがに病院まで襲う気は、セナにはない。 (やるとすれば、病人相手に汚く儲けている連中だな。そう言えば、この間の ……何だっけな? そう、オルテガだ。オルテガみたいに、薬を高値でさばい てる輩もいるんだよな) そのことを思い出して、気が変わったセナ。 (よし、調べてみるか。この病院で、ごうつくばりがうまい汁を吸っていない かどうか。もし『当たり』だったら、そいつを次の獲物にしてやる) 決心したセナは、わずかの間、作戦を考えた。その結果、見舞い人として正 面から入り、そのままどこかに隠れて、夜までやり過ごすのが手っ取り早いと 考えるに至った。 −−続く
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