長編 #3169の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
事務所に流達が戻って来たときには、すでに東も調査を終えて戻って来てい た。東は流に、 「すみません。言われた二人のうち一人は指紋を取れたんですが、もう一人の 方は取るような物がなくて取れませんでした」 と告げた。流は残念そうな顔をして言った。 「そうか、それなら仕方がない。しかし困ったな。これでは証拠が無くなって しまう」 それから、しばらくして吉田刑事から電話があった。流秋子が出る。 内容は、死体は前川宮子の胴と森本和子の首、胴であったということであっ た。それを聞いた流が言った。 「やはりそうか。あとは証拠だけなんだがなぁ。そうだ、盾野さんあなたはM 会社の、社長秘書だったから、何か会社のパーティの記録なんかがある場所を 知っているでしょう。誰の記録かと言えば……」 「言わなくても分かりますわ。ビデオじゃないけどカセットテープがあります」 「それは良かった。頼みます」 「どういたしまして」 盾野未来は、いたずらっぽく笑っていつた。次の日の朝早く、流と私はマン ション管理人の渡辺のところへ、盾野はM会社の庶務課のところへ行った。東 は、流からアメリカにいる、ある人にあることを頼んであるから、その報告を 聞くように、と言われたので事務所に残った。流は管理人室に着くと、渡辺に 向かって言った。 「僕は探偵の流次郎です。こちらは、作家の平野年男君。それで今日伺った用 件ですが、もうすぐ事件が解決できそうなので、その謎解きを、このマンショ ンのロビーで、やらせてもらえませんか」 「は、はあ、まあ、いいですけど」 と、渡辺は突然のことにドギマギした様子で言ったのだが、流にはよく聞こ えなかったのか、 「えっ、いいんですか、悪いんですがもう一度、大きな声でお願いします」 と、嫌みたらしく言った。 渡辺は少しムッとした顔付きで、 「ええ、いいですよ」 と、大声で返事する。 流はそれを聞いて、 「そうですか、どうもすみません。では、また後日」 と、笑いながら言って部屋を出た。 外には既に会社からカセットをとってきた、盾野未来が待っていた。 流は、盾野を見るとうれしそうな笑顔になった。 「わざわざ持ってきて下さって、どうも」 「いえ、かまいませんわ。それよりも、流さんと同じ様に考えることができて、 私うれしいんです」 盾野が、流にカセットを渡す。 「ありがとう。それでは警察に持って行き調べてもらうとしましょう。平野君、 君は盾野さんを事務所に送ってください」 と、流は言って警察に向かった。私達が、事務所に着くと、吉田刑事が来て いた。 「流さんはいるか。事件を解いたんだ」 「流なら、警察に証拠とやらを持って行きましたが、会わなかったんですか」 「きっと、行き違いになったんだ。それより、わしの謎解きを聞いてくれ。こ の事件の犯人は森本夕造と森本和子だ」 「何、言っているんですか。二人とも死んでいるじゃありませんか」 「そこが、甘いんだよ。いいかね、森本夕造の胴は発見されたが、首は見つか っていない。その胴も血液型と身に着けていた時計、それに共犯である和子の 証言しか、断定できる材料はないんだ。つまり、あの夕造の胴と思われた死体 は、森本夫婦が金に物をいわせ買い取った別人の死体なんだ。我々は和子の証 言の為、夕造だと信じ込んでしまっていたんだ。そういう訳で、前川宮子を殺 したのは夕造だ。夕造が前川を呼び出し、薬で眠らせノコギリで首を切断、胴 を山に捨て首はマンションの前川の部屋に置いた。そして、和子は買い物に出 かけたふうに装って、買い取った死体を前川の部屋に置いて来たのだ。そして 夕造は、今度は和子を山に呼び出し、気絶させノコギリで首を切断。その首を 前川の胴の側に置いた」 「仲々面白い推理でしたよ、警部さん」 「あっ、流さん、いつ帰ってきたんです」 「警部さんが、事務所に向かったと、聞いたもので用を済ませて、すぐ帰って きたんです。だから、ほぼ最初から聞かせてもらいましたよ」 と、流は言った。続けて、こうも言った。 「でも、面白いだけで、違っていますね」 「何ですと。どこがですか」 「言わせてもらえるならば、夕造の死体ですが結局は、首が見つからねばなり ません。ついでに言うと、足の指の指紋を調べれば、本人かどうか分かるはず です。とにかく首が見つからねば夕造自身が疑われると、すぐ気付くはずです。 真犯人も、警部さんのように考えることを望んでいたでしょう。しかし、この 事件にはアメリカに留学中という、森本剣造が関係していると分かれば、そん なワナには掛からないのです。警部さん、明日、例のマンションのロビーで謎 解きをしますから、関係者を集めてください」 翌日、事件の関係者全員がマンションのロビーに集められた。 流次郎は、証拠を手に入れたのか自信満々の表情である。その側に、盾野未 来が寄り添うように座っている。吉田刑事は、自分の考えが違っていたので真 犯人は誰かということを、必死で考えているようだ。前田医師は気が弱そうに 肩をすくめて座っている。大家景も、初めは恐そうにしていたが今では老人特 有の興味深げな目付きで全員を見ている。大和邦行は、推理小説が好きな為か 楽しそうである。場所を提供した渡辺菊雄も、推理小説が好きなのであろうが、 何で関係があるんだ、という感じで、どちらかというと不機嫌のようだ。 そして流が喋り始めた。 「皆さん、謎解きに無理に付き合ってくれて、どうもありがとう。場所を提供 してくれた、渡辺君に礼を、まず言わせてもらいたい」 流に頭を下げられた渡辺は、それでも機嫌が悪いのか、みんなから顔をそむ けている。流が、再び喋り始めた。 「本題に入ります。この事件の犯人は誰か。考えられるのは、前川さんの恋人 だったように思われる前田医師の復讐か。夕造氏の運転手、大和君、お手伝い の大家さんの復讐か、それとも、マンション管理人渡辺さんの動機なき殺人か。 どれも違います。ある人は、森本夕造・和子夫婦の犯行と推理しましたが、そ れも違います。何故なら、その人は夕造氏の息子でアメリカ留学中の、剣造君 のことを全く考えていなかったからです。さて、ここで皆さんに重大なことを 言わなければなりません。この間、僕はアメリカに住んでいる友達に剣造君の 調査を依頼しました。その報告が昨日入ってきたのです。その内容は、剣造君 はアメリカに着くなり直ぐに整形手術をうけ、日本に帰国したということです。 夕造氏は仕送りしていたのですが、それは別人でした。残念ながら、どのよう な顔にしたのかは分かりませんが、恐らく、この事件に関わっているはずです。 この事件の犯人は少なくとも、森本夫婦、前川宮子、この三人と親しくなけれ ばなりません。もし犯人が、森本剣造だとすると当然、森本夫婦とは親しいの で、あとは前川宮子と関係をつくるだけです。この事件の関係者で前川宮子と 親しい者は恋人の前田医師とマンション管理人の渡辺菊雄君の二人だけです。 ここまでくると、整形手術をしたという関係で前田医師が怪しくなりますが、 僕は今までの二人の言動からみて、あえて渡辺君の方をとります」 「へえ、こいつは面白いや。僕が、森本剣造だって言うのかい。仮に僕が、森 本剣造だとして推理を続けてくれたまえ。僕はこれでも推理小説が好きでね」 「言われなくても続けるつもりだよ、渡辺君。そう断定した理由は、君が推理 小説好きだからさ。 ふふっ、これは冗談として、君は初めに前川宮子の首を見たとき、平然とし ていたそうじゃないか。それが、胴の発見の際は気分が悪くなって部屋に戻っ てしまった。これは、どうみてもおかしいんじゃないかね。これが逆ならまだ 分かるのだが。 そこで僕は、この二つの発見時での違いを考えてみた。その結論は君は森本 剣造の元の顔を知っている者に見られるのが恐かったのさ。態度や癖で見破ら れるかもしれないからね。現に渡辺君は顔をそらしていたじゃないか。 さらに言うと、君がマンション経営の資金にしていた金も、アメリカで別人 が受け取ってくれていた親の仕送りを又送ってもらったものなんだろう。 さて、森本剣造こと渡辺菊雄君は、金が欲しかった。親の金全部をだ。そこ で犯行をうまくするために母親の和子を味方につけた。和子の、浮気をしてい る夫とその相手の前川宮子への、恨みを利用したのさ。いくら和子夫人が金の 亡者でも、女の意地というのがあるでしょうからね。 そして君は、前川宮子が帰って来たところを、何か飲み物をのませ、睡眠薬 で眠らせて、首を切断。和子は、夫に朝早く出るように言っておき、買い物ど きに待ち合うようにしておいた。その際に一緒だったヒゲのサングラス面は、 渡辺君の変装なんだろう。整形手術のうえに変装とはご苦労なことです。とも かく夕造氏を殺し、首を切断。恐らく、まだ発見されていない夕造氏の首は森 本夫婦が犯人になるように、どこかにしまってあるんでしょう。 ここで渡辺君は金が目的だから独占するには、和子も殺さねばならない。そ れで、君は和子を山に呼び出し気絶させ首を切断。多分、和子夫人は共犯の渡 辺君が呼んだからこそ、あんな山に来たのでしょう。さあ、これであとはアメ リカに戻り顔を元に戻し、両親の死を知って帰国、財産を受け継ぐ、という筋 書きだったのでしょう」 「ますます面白いですが、肝心な点が抜けていますよ。僕が森本剣造だという 証拠を見せてください」 「ええ、いいですよ。あなたは、この点非常に慎重だった。森本家に、一つも 指紋を残さずアメリカに行った。だが、もう一つ大事なことを忘れていたのが 失敗でしたね。盾野さん、あれを出してください」 流が言うと、すぐ呼応して、「はいっ」 と言ってカセットテープ二本とテープレコーダーを出した。流が言った。 「まあ、とにかく聞いてください。一本目は、M会社のパーティで夕造氏が、 息子の剣造君を紹介し剣造君自身も挨拶をしています」 盾野がテープレコーダーのスイッチを、カチャッと押した。そこからは若者 らしい、はきはきした声が聞こえて来た。しばらくして、盾野は止めた。流が ニヤリと笑って、 「二本目は、僕と平野君が昨日、渡辺君を訪ねた折に隠し録りしたものです」 と言って、盾野にスイッチを入れてもらった。“えっ、いいんですか、悪い んですか、もう一度大きな声でお願いします。”……あのときそのままの声が 聞こえてきた。流が、再々度言った。 「なんとなく、似ているでしょう。剣造君と渡辺君の声。それで、警察に持っ て行って声紋を調べてもらったら、全く同じでした。渡辺、いや、剣造君もう 少しアメリカにいてから犯行をした方がよかったのにねえ。アクセントが変わ るだろうから」 そう言われて、渡辺菊雄はガックリと肩を落とした。 「ちくしょう。お前さえいなければ、全てうまくいったのに……」 「いや、うまくいきはしなかっただろうね」 「何?」 「君は、整形した顔を元に戻し、金を受け取るつもりだったのだろう。でも、 一度整形した顔を元に戻すなんてことは、不可能らしい。だから、僕がいなく ても、君の犯罪計画はこの根本的欠陥によって、失敗していただろうね」 渡辺菊雄こと森本剣造は、絶句してしまっていた。 夕造氏の首は、管理人室の冷蔵庫の冷凍室から見つかり、渡辺は逮捕された。 事件解決後、事務所での会話。 「見事解決できて、よかったですわね。私、流さんの観察力に驚かされました わ」 と盾野未来が言った。流も言った。 「おほめを頂いて、大変光栄ですよ。あなたも、仲々、名推理をされましたし ね。ところで、もういいですか、家の方に連絡して」 「いいですわ。もう十分楽しみましたから、私。ねえ、流さん、私、大きくな ったら何になりたいか、わかる?」 「うーん。分からないなあ、今だって大きいじゃないか」 「それはねぇ、私、大きくなったら探偵になるの、そのときは応援してくださ いね。好きですから」 そうして、彼女は爽やかな表情、軽やかな足取りで去って行った。 「何だか意味深な言葉だなあ、『好きですから』とは。主語は何なんだろうね」 流が、笑いながらこう言った。そんな流に私が聞いた。 「まだ、一つ質問があるんだけど」 「何だい?」 「犯人の、渡辺は何のために、ワザワザ、夕造氏の死体に女性の服を着せたん だろう。女だと思わせるにしては、スグにバレルから変だし……」 「やはり、それか。僕も正確なことは、分からないけど二通りの答えを考えて みた。一つは、全く単純だが捜査の混乱を誘うため。もう一つは、犯人は、そ のつもりはなく被害者が元々着ていた、つまり夕造氏はホモの気があったとい う考え方」 「少なくとも、後者ではないと思うな」 そのときであった。いきなりドアが開き、行ったはずの盾野未来が顔を出し たのだ。 「流さん、ホモって何ですか?」 「何だ、そこにいたのですか、ハハ……」 「言ったでしょう、探偵志望だって。それでホモって何です?」 「何というか、その、つまりだね……」 いやはや、名探偵も形無し。このお嬢さま、経験さえ積めば、かなりの探偵 になるかも? −−終
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