長編 #3089の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
ベストナイン たがみ けんじ プロローグ <雨天順延> もうあれから十年たった。いや、これからの人生を考えると、まだ十年というべき かもしれない・・・ 忘れもしないあの日、僕はお母さんと一緒に車で買い物にでかけた。 いつもは歩きだが、その日は雨も降っていたし、買うものも多いらしいので車での買 い物だった。 このころの僕は車が好きだった。レーシングカー、トラック、クレーン車、みんな好 きだった。このころの夢は車を作ることだったくらいだ。 その中でも一番好きだったのはお母さんの車だった。 お母さんの運転する車の助手席に座り、お気に入りのTVアニメのテープをかけ、お 母さんと二言、三言交しているときが一番落ち着いた気分になれた。 親父がいうには僕は兄弟の中で一番お母さんに甘えていたらしい、しかしうちは八人 兄弟だ。普段家にいるときはお母さんは家事におわれ甘えるどころじゃなかった。 唯一甘られ独占できる時間というのが二人で車ででかけるときだけで、それ以外は大 抵、他の兄弟と一緒だった。 買い物もおわり、妹と弟を迎えに行くために保育園に向かう途中、僕はなぜか言い表 せない孤独感に襲われ怖くなった。ずっとお母さんと一緒にいたいと思った。 「しゅんちゃん、どうかしたの?」 微妙な表情の変化に気がついたのか、お母さんは運転に集中しながらも優しく声をか けてくれた。 「ううん、どうもしないよ、それよりさぁ、ちょっとまわりみちしてドライブしよ。」 僕は平気なふりをしたがまだ不安がぬぐいきれず、知らないうちに甘えていた。 「それじゃ、しゅんちゃん、町内一周したら、あいちゃん達迎えにいこ。」 ちょうど信号待ちだったのでお母さんはこちらを向き微笑んで同意してくれた。 この時のお母さんの笑顔は今でもまぶたの裏に焼きついている。 五分ぐらい走ると雨が一段とひどくなり、視界が悪くなった、お母さんも口数が減り 運転に集中してるようだった。 車は町と町の境にあたる片側一車線の車道を走っていた。 僕は何気なく右側に座っているお母さんの方を見た。その時!目の前にトラックが飛 び出してきた。 「おかあさん!」 声に出したかどうかはわからないが、心の中で思いっきり叫んでいた!お母さんの車 がトラックに触れた気がした。 その瞬間、僕は空を飛んで、そして落ちた、そこで意識を無くしたようだ。 これは夢だ、夢を見ているんだ。夢の中の僕はそう思った。 あたりは白色で染まっている。真っ白とはちょっと違った白さだ。 まわりは誰もいない。僕は淋しくなった、急に独りぼっちになった気がする、ふと気 がつくと体が思う様に動かない、足をロープで縛られている、というよりは足その物 自体が無い気がして自分の体を見てみる。 僕は何も無くただ白いだけの空間に浮いていた、少しも動かずその場で佇んでいた。 その目の前にある自分の体には腰から下が無かった。 僕は怖くなって泣いた。 声も出せず、涙も出ず、ただ泣いてると感じた。 夢だとわかっているのに孤独で、怖くてまた泣けてきた。 しばらく泣いていると遠くの方から何か声が聞えてきた。 とりあえず泣きやみ耳をすましてみる。 「…。・・・。・・・。シュンジ。しゅんじ!」 誰かが僕を呼んでいる。この声は・・・。 そこで僕は目がさめた。目をあけるとお父さんがいた。 そうだ、この声はお父さんの声だ。 「青治、気がついたか!俺が誰だかわかるな?」 お父さんが目に涙をため早口に話しかけてきたが質問の意味がイマイチわからなく、 勢いにおされるままゆっくりうなずいた。 それだけでお父さんはずいぶん安心したようだった。 僕はここが自分のベッドでないことに気がついてあたりを見渡す。 壁も天井も真っ白だった、よく見るとお父さんとの間に透明なビニールの壁があり、 ベッドのわきには見慣れない機械がならんでいて、そこから何本かのチューブが自分 の体につながっているようで、TVの特撮物の改造手術という感じがした。 ふと、夢とおんなじように足の感覚が無かった気がしたのでお父さんに聞いてみた。 「ねぇ、あしがうごかないけど、どうしてなの?しゅじゅつのさいちゅうなの?」 と、はっきり喋ったつもりだったが実際はかすれたようなすごく小さい声だった。そ んな声ながらもお父さんは一言一言聞き漏らさないように聞き、そしてしばらく考え 込み、 「いつかは分かってしまうことだ・・・。隠してもしょうがない・・・。」 と、聞こえるか聞こえ無いかぐらいの声でつぶやいて淡々と話し出した。 「青治、今から言うこはすべて本当の事だ、どんなに信じられないことでも現実なん だ・・・。」 お父さんの顔は怖いぐらい真剣そのもので、冗談を言うときとの顔とは全然違った。 「青治とお母さんののった車が事故にあった・・・、そしてお前は三日間死ぬか生き るかの所を行ったり来たりしていた・・・・、しかしお前はこうして命を取り留め た、ただ下半身不随になってしまったが・・・。 つまり、腰から下が動かないことだ・・・。 そして・・・・、お母さんは・・・・、死んだ。」 ぼ、僕の足、動かなくなった・・・歩けない・・・走れない・・・立てないかもしれ ないそれにお母さんが死んだ?オカアサンガシンダ? オカアサンて僕のお母さんの事だよね?シンダ?死ぬって事? 死んでるということはもう生きていないということ? 生きていないって事は・・・・・・。 僕は9歳にして母親を亡くし車いすの生活になった。
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