長編 #2901の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「そがいな大声、出すな。オフレコや」 「誰も客いとらんから、ええ。はよ、話せ」 「おまえ、留美香のファンか」 「ちゃう。けど、一気に興味が湧いてきたわ」 「やる気になってくれて、結構結構。にわとりの鳴き声はコケコッコー、雨降 りでも運動会をやるんは雨天決行や」 「しょうもないこと聞いとったら、興味がしぼんできたわ。買うて一日経った 夜店の風船や」 「ヘリウム入れたろやないか。実はな、見つかった遺体には首がなかったんや。 首がない言うても、ほんまに首だけがなかったんちゃうで。首から上がなかっ たんや」 「それぐらい、言われんでも分かる。首なし遺体って言うたら、イコール顔が 分からんちゅうこっちゃ」 「イコール言うたら、あれやね。酒に入ってる……」 「それはアルコールじゃ!」 「コンサート終わってから、観衆がわめく言葉」 「アンコール」 「『ジャッカルの日』で命を狙われたフランスの……」 「ドゴール! ええ加減にせいよ」 「気を取り直して……遺体の検査が終わって、まあ、諸々のいきさつはあった らしいけど、とにかく、さっき、遺体は内藤留美香らしいと」 「内藤留美香の頭部は見つかってへんのか」 「パリーグで」 「西武ライオンズ! 頭部とは全然ちゃう!」 「先回りせんといてえな。ボケられへんがな」 「少なくとも今は、ボケんでええ。話が先やろ」 「……頭部は未発見のままや。ここで不思議なんは、何で頭を切断したのかが 分からんこっちゃな」 「身元を不明にするためとちゃうんか?」 「現にこうして、身元は判明しとるで。それにな、警察の言うことには、イニ シャルの入ったハンカチなんかの、身元を示す品が手つかずにあったそうやで」 「それなら、凄い恨みを持たれて殺されたとか」 「警察もその線で追っとる。無理矢理に聞き出したんやが、容疑者はすでに出 揃うとるそうや。三人おる。名前は……このナプキンに書いてええかな?」 「かまわん」 「村井静男、賀来行洋、楠木原サリオの三人や。村井っちゅうんは、写真週刊 誌のカメラマンでな。留美香がらみのネタを二度ほど激写したのを、二度とも その場で留美香に見つかり、カメラを叩き壊されたそうや」 「留美香は、そんな怪力女やったんか? イメージと合わへんぞ」 「グロッキーのボクサーが負っているのは?」 「ダメージやろ。それより、そのカメラの件は臭いぜ。たかだかフィルムを感 光させられたぐらいの話が、大きくなっとるんとちゃうか」 「俺もそう思う。まあ、それはええ。大事なんは、村井が留美香に対して、え ろう怒っとったっちゅうこっちゃ。村井にしたら、飯の種を潰された訳やから、 殺しの動機としてうなずけんでもない」 「なるほどな」 「二人目の賀来は、駆け出しのコメディアンちゅうか、お笑いタレントや。留 美香の同じ事務所所属で、留美香の付き人をやっとった。これがまた、徹底的 にうまが合わなんだらしい。具体的には、賀来がしょもないこと言うて、留美 香の方が呆れる、馬鹿にする。それがエスカレートしてもうて、留美香は賀来 を付き人から外させたって話や。精神的に悪いとかでな」 「そないな理由で、賀来が留美香を殺すか? 賀来はタレント生命を絶たれた んじゃないんやろ?」 「そや。今も同じ事務所におる」 「ほしたら、動機にならんで。そりゃあな、賀来が留美香を殺すことで、彼女 に取って替われるんならともかく、殺したかてなーんの得にもならん。留美香 に散々馬鹿にされ、精神が抑圧された挙げ句にしても」 「いや、この賀来って男、結構、危ない性格らしいんやね。やから、ちょっと きれたら、どないなるか分からんそうや」 「……まあ、認めとこ。最後のは?」 「あれ? 知らんか? サリオやで。こっちもきれいなタレントや」 「知らん。外人の血が混じっとるんか?」 「ちゃうちゃう。芸名っちゅうやつ。何たらいう企業のイメージガールとして デビューしよった。それなりに売れとるんやけどな、ここ一番の肝心なときに、 いつも留美香に競り負けとったんやて」 「どういうことやねん?」 「例えば……映画の主役をオーディションで選ぶのって、あるやろ。ああいっ た類の競争でな、いつも留美香がサリオを押さえてかっさらいおったんや。ど や、動機になるやろ」 「待て待て。待たんかい。留美香に負けたって、そりゃあ実力差いうもんやろ が。そんなんで殺したとしたら、逆恨みもはなはだしいわ」 「裏があるねん。さっき言うたコンテストのほとんどは、出来レースだったよ うなんや。最初から留美香を一位にすることが決まっとって、サリオら他の参 加者は踏み台や」 「ふうん。そのことを知ったら、恨みを持っても当然か……。だけどな、殺し たかてサリオはどうにかなるんかい、その場合」 「どうにかなる点もある。留美香主演が決まっとった映画の撮影が一つ、まだ 始まっとらへん。留美香が死んだことで、ひょっとしたらサリオにお鉢が回っ てくるかもしれん」 「確定はしとらへんのやな。……どうも、誰にしたって、殺しの動機としては いまいちとちゃうか。いや、人の心なんてもん、完全には分からんけどな。少 なくともや、留美香を殺してその頭部を切断するほどのもんじゃあない」 「んなこと言うても、容疑者はこんぐらいらしいで。誰かおんねん。こん中に 犯人が。あ、おんねん言うても、『恨めしやあ』の『怨念』と違うで」 「分かっとるわい。……おい、そもそも、どんないきさつで、留美香は失踪し たんや」 「かん口令が厳しくて、情報が断片的なんやが、おおよその状況はつかめとる。 どうもな、失踪直前まで、留美香は『疲れた』『頭が重い』『休みたい』とい うようなことを、よう口にしとったそうや。マネージャーら事務所の者は、だ んだんと大物になっていく芸能人によう見られるわがままかと見なして、相手 にせんかったらしいねん。事務所は働け働け言うて、それにますます反発する 留美香。そんなこんなである日、ぷいっとおらんようなった」 「強制的にどこかへ連れ去られたっちゅうんと、ちゃうんやな?」 「ああ、自発的な行動いうんが、大方の意見や。内藤留美香、何たらいうマン ションに住んどったんやけど、その部屋にも争いがあったような痕跡はなかっ たいうことやで。留美香の今の付き人の証言によると、衣類やら小物やらがな くなっているらしいが、これは留美香自身が持ち出したもんやろという話やね」 「その衣類やら小物やらは、遺体と一緒に見つかったんかい?」 「んにゃ、未発見のままやて」 「なるほど、よう分かった。ほしたら、どこぞへ留美香はかくまってもろとっ たいう可能性が出てくるわな」 「そこらはまだ調べ始めたばっかりで、はっきりしとらへんのやけどな。身を 隠すて簡単に言うたかて、芸能人や。そうおいそれと隠せるもんやない。だい たい、可能性のある場所は絞られてくる」 「まずは、実家やろ」 「そや。けど、実家いうても二つある。一つはほんまもんの実家、つまりは両 親がおるとこや。も一つは、従兄弟夫婦の実家。この二つはすでに調べとるん やが、どちらの家の者も、留美香は姿を見せとらんと、こう言うとる」 「そしたら、他にどこがあるんや?」 「……りんご汁のお代わり、くれ」 「何や、ええときに。喉、乾いたんやったら、お冷やで我慢せい」 「冷たいお方。これがほんまのお冷やや」 「ごちゃごちゃ言うとらんと、続きを喋れ」 「他の候補地は、昔ロケに行った土地で気に入ったとかで、蓼科が考えられと る。もっとも、かくまってもらえるような関係の知り合いはおらんはずやけど な」 「何日、隠れとったんか限定できんのやから、旅館みたいなんでもええ訳か」 「そういうこっちゃ。だけど、留美香失踪は割と早く公にされたで。旅館側も 気付くんとちゃうやろか」 「その辺は分からん。他にも可能性はあるんか?」 「あとは失踪したと見せかけ、その手引き者がすぐに殺したいう説や。これな らかくまう場所なんかいらん」 「しかし、せめて、頭部を切断する場所はいるぞ。原っぱでやる作業とちゃう。 まさか、遺体発見現場で頭部切断の痕跡があったとか?」 「いや、なかった。そりゃそやけど、そんぐらい、犯人が自分ん家でやったら ええがな」 「もしそうやったら、犯人は独り者か? 家族おったら、そんな作業、家では できん」 「そういう考え方もできるな」 「納得すな。そいで、死亡推定時刻とか、各容疑者のアリバイとかはどうなっ てんねん?」 「いつ死んだか、細かい結果はまだや。そやけど、二日前いうんは確実や」 「ええ加減なことを言うなよ。三日前に見つかった遺体が二日前に死んだんか い!」 「ああっと、間違うた。三日前の時点で二日を差し引いてくれ。要するに今日 から五日前に死んだいうこっちゃ」 「アリバイは?」 「サリオはあるらしい。その日はスケジュールが詰まっとったいう話や。もち ろん、殺害現場が確定しとらんのやから、完全に疑いが晴れた訳やあらへん。 一方、賀来は売れとらんからな。アパートで一人で寝とったいうことで、ア リバイなし。貧乏人は悲しいで」 「個人的感想はいらん。カメラマンのアリバイは?」 「で、三人目の村井は、特ダネ狙いで張り込んどったと、本人は主張しとる。 が、証人がおらんし証拠もないんで、こちらもアリバイ不成立や」 「全然、絞り込めんなあ」 「アリバイで絞り込めたら、警察がすぐに容疑者を逮捕しとるよ。おまえんと こに持ち込んだりせん」 「……聞いた限りやと、どうしても納得できん。犯人はなんで、頭部を切断し たんや。いや、ちゃう。切断しただけなら、まだ恨みいう言葉で片付けられる んやが、それを隠すんはどういう理由からや?」 「手元に置いといて、ぐちゃぐちゃいたぶるつもりとちゃうか?」 「気色悪いこと言うな。あのな、そんなことしたら、警察に調べられて一発で ばれてまうやろが」 「あ、そーかー」 「何か、訳があるはずや。どうしても首から上を持ち去る必要があった……。 あっ」 「ど、どないしてん、難波? 急に叫んだりして、何か悪いもん食うて頭にき たんか」 「古典的なボケをすな。閃いたんや」 「閃くいうたら、海の底におる、平べったい魚やな。目が左に寄っとる」 「それを言うなら、ヒラメじゃ! それによう似た魚がカレイで、そいつをご 飯にのせて食うんを、カレイライス言うんや!」 「おいおい、探偵がボケ始めてどないんするねん。俺、立場がないわ」 「好きでボケとるんとちゃう。おまえのせいや」 「悪かった。謝るから、続きを話してくれ。頼む」 「……まだ証拠があるいう訳やない。でもな、ある人物にとって、内藤留美香 の頭部は絶対に発見されてはならん物やったかもしれん。そういう可能性が見 つかったいうこっちゃ」 「誰や、それは? その理由は?」 「ちょっとは自分で考えんかい。お、ちょうどええわ。常連が大挙して来よっ たわ。あの子らをさばかなあかん。その間に、林、少しは考えろ。シンキング タイムや」 「うーむ。俺、頭脳労働は得意な方とちゃうからなあ……」 「こんにちはー!」 「やあ、いらっしゃい」 「難波さん、感謝してよ。今日は後輩、連れて来ちゃった」 「それはいい。新しいお得意さんになってもらえるよう、腕によりをかけて紅 茶を煎れましょう」 「……なあ、難波。さっぱり、分からんのや。教えてくれ。あ、おい。無視し やがって。気取って喋っても似合わんぞ!」 −−問題編.終わり さて、難波が言う「内藤留美香の頭部を持ち去る理由のある」人物とは? 分かった方は、巻末の回答用紙にその名前と理由を記し、推理研究会のボック スに入れて下さい。たくさんの回答をお待ちしています。 締め切りは一月三十一日。賞品は図書券一万円分です。 前回の犯人当て「トルコ石付き刀の冒険」に多数の応募、ありがとうござい ました。厳正な抽選で正解者の中から一名、当選者を選ばせていただきました。 幸運な当選者は以下の方です。おめでとう! 神取夏生さん (経済学部情報科学科一回生) *ご足労ですが、神取さんは推理研部室まで賞品を取りに来て下さい。 前回は、ちょっと正解率が悪かったようです。ぜひ、奮起を! −−−続く
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