長編 #2889の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
田村君の家は、大金持ちです。渋谷のNHKの裏の民青同盟ビルの隣に、敷地2 00坪/床面積350坪の『田村ビルヂング』を所有しています。1階はコンビニ エンス・ストアに貸しています。2、3、4階は賃貸マンションです。最上階と屋 上のペント・ハウスが田村一家の住居です。ペント・ハウスは建築基準法では禁止 されています。 田村君の友達は、遊びに来る度に、口を揃えて、「不公平だ」「土地は誰のもの だ」「今度の選挙では共産党に入れてやる」などと愚痴を垂れます。だけれども、 ペント・ハウスから見える民青同盟の駐車場の入り口にも『私有地につき立入禁止』 と書いてあるので、「貧乏人は麦を食え!」と、田村君は、豪語します。そうは言 っても、友達が帰った後で、一人になってしまうと、「やっぱり、世の中は間違っ ているのかなあ」と反省します。「俺に都合よく間違っているので、気が付かない 振りをしているのかなあ」という良心の呵責は、マグネシウムの様に、心の中に積 もって行きました。 ある日の午前中の事です。田村君のお父さんは、愛車のシーマにWAXをかけて いました。自転車操業的人生を歩んでいる店子の諸君から巻き上げた家賃で買った 車です。 田村君は、お父さんに言いました。「なんでシーマなんて買ったんだよ。そんな のより、ベンツかBMの方が良かったじゃないのか?」 「馬鹿たれ、外車じゃあ、中国残留孤児に自慢出来ないじゃないか。すげー輝きだ、 朝鮮人に見せびらかしたい」と言いながら、上着の袖でボンネットを撫でているお 父さんを見ていたら、田村君は、ムラムラと胸が焼けました。バナナを10本食っ たみたいです。 「おかしいんじゃねえのか、糞親父、テメーは日産の社長か、圧産の会長か?」と 田村君は思いましたが、口には出しませんでした。スネかじりだからです。 田村君のお父さんは、戦中派の愛国者です。ロッテの菓子は食べません。愛読書 はポール・ボネ全集で、野球は巨人ファンです。その日の午後、田村父子は、日本 シリーズ第4戦をテレビ観戦しました。お父さんは、巨人がリーグ優勝出来なかっ たので、ヤクルトを応援していました。だけれども、今日は西武に負けそうです。 そこで、お父さんは、「どうせ、鹿取だって元ジャイアンツだし、森だって元々は 川上の弟子だ」と言いました。 田村君は、カチンコチン、来ました。 「おかしいんじゃねえのか、糞親父、テメーは巨人のオーナーか、読売の会長か?」 と田村君は思いましたが、口には出しませんでした。スネかじりだからです。 だけれども、この思いが、マグネシウムへの火花となったのです。 田村君は、立ち上がると、ガレージに行きました。そして、ポケットから、ギザ 10円玉を出すと、シーマのボンネットに、「バカ」とか「ハゲ」とか、落書きを しました。ところが、賃貸マンションのベランダから見ていた店子の一人が、田村 君のお父さんに密告してしまいました。こういうのを、造反有理と言います。 「という訳で、家を追い出されちゃったんだよねえ」と、田村君は、恋人の葉子に 言いました。 ここは、葉子のアパートです。田村君と葉子は、裸でベットの中にいます。さっ きまで、セックスをしていたのでした。田村君は、フェラチオをねだったのだけれ ども、葉子は、「そんなのは変態だ、変態だ」と言って、なかなかしゃぶってくれ ませんでした。そこで、田村君は、「『現代用語の基礎知識』にも、フェラチオは 変態では無い、と書いてあるよ」と、説得しました。 葉子は、上智大学の学生です。前に、「細川“馬鹿殿”モリヒロもソフィアよ」 と自慢していたので、「そーいえば、ド・ド・ドリフの大爆笑の志村ケンの馬鹿殿 に似ているなあ」と言ったら、ものすごく軽蔑されました。葉子は細川“藩主”の 事を言ったのでした。 葉子はソフィアのソフィストなのです。とても口が立つのです。だから、フェラ チオをして欲しかったのです。 田村君は、オナニー過多の遅漏なので、葉子の顎はガクガクです。顎をマッサー ジしている葉子を見ながら、田村君は満足でした。実は、カシオのストップ・ウォ ッチ腕時計で計っていたのです。25分03秒15でした。腕時計のガラスを擦り ながら、「こんなに優れた時計を作れるのは、世界でも日本だけだろうなあ」と呟 きました。 「田村君、何時からカシオの社長になったの?」と葉子が言いました。「田村君っ て、お父さんに似ているのね。血は争えないわね」 又しても軽蔑されてしまった、と思った田村君は、胸にぶら下がっている24K のネックレスを外すと、「これ、あげるから、泊めてよ」と言いました。 「いいわよ、泊まっても」ネックレスを胸の谷間に滑らせながら葉子が言いました。 「ここ、物騒なの。外国人労働者が沢山住んでいるのよ。下の部屋にはブラジル人 が住んでいるの」 田村君は、ボディー・ビルディングで鍛えていたので、喧嘩には自信がありまし た。しかし、葉子の怯えた様な物言いから、「きっと、ボボ・ブラジルみたいな奴 が住んでいるに違いない」と、勝手に想像してしまって、心配になりました。そこ で、夜中に下の階に行くと、ブラジル人の部屋を覗いて来ました。ブラジル人は、 マイケル・ジャクソンを色黒にした様な感じの子でした。「あれだったら勝てる」 と安心した田村君は、葉子の肉布団で、ぐっすりと眠りました。 朝、目が覚めたら、葉子は、YAMAHA音楽教室の受け付けのアルバイトに出 かけた後でした。枕元に、「玄関開けたら2分でご飯が冷蔵庫に入っているヨ」と いう手紙が置いてありました。田村君は、冷蔵庫から農協のレトルトご飯を出して、 電子レンジでチンして食べました。とても不味くて、「玄関開けたら2分で残飯、 だ」と思いました。 何にもする事が無いので、ファミコンのテトリスをやりました。「アメリカでも ファミコンは売れているんだよなあ」と思ったら、少し、うっとりとした気持ちに なりました。しかし、すぐに、白けてしまいました。それは、「自分は任天堂の社 長では無い」という事に気が付いたからではなくて、テトリスを開発したのがロシ ア人である事を思い出したからです。 午後になってから、田村君は、区民体育館に行って、ボディー・ビルディングを しました。喧嘩の用意です。 田村君は腹筋台で腹筋運動をしていました。上体を起こす度に、向こうのラット・ マシンで背中を鍛えているハーフと目が合いました。向こうでも、田村君の方をチ ラチラ見ています。「誰だろう」と考えながら、腹に力を入れていたら、思い出し ました。昨日の夜中に、覗き見たブラジル人です。 田村君は、あのブラジル人と喧嘩をする為に鍛えていたのに、何故だか、「ここ で疎外してしまったら、あの子はブラジルに帰ってから、日本人嫌いになるのでは ないか?」という国際親善の精神がカマ首を持ち上げて来ました。そこで、田村君 は、ラット・マシンの所まで行きました。行ったのはいいけれども、ポルトガル語 なんて「チャオ」しか知らないので、「俺、俺、206、お前、お前、106、俺 の下、俺の下、住んでいる」と、誰が見ても、馬鹿じゃねえのか? と思える様な コミュニュケーションしか取れませんでした。ところが、ブラジル人は片言の日本 語が喋れました。日系3世だ、という事です。 「それじゃあ、同じ大和民族の血が流れているんじゃないか」と安心して、田村君 は、色々聞きました。「お前は幾つだ」とか「日本では金を使わないで女に貢がせ ろ」とか「ちゃんと、貯金をしているか」とか「アパートに置いておいたら泥棒に 入られるぞ」とか「日本脳炎と破傷風の予防注射はしたか」とか「国に帰ったら大 統領になれるか」とか「ブラジルにはマクドナルドはあるか」とか「セナやジーコ にファンレターを書きたい人の為の翻訳サービスを始めたらいい」とか、です。 これだけ、根ほり葉ほり聞いても、分かった事は、なんとか・かんとか・コバヤ シという名前で、18才で、日野自動車で働いていて、今日は夜勤明けで、お爺ち ゃんとお婆ちゃんが日本人で、お父さんが2世で、お母さんがイタリア人だ、とい う事だけでした。 「だったら、お父さんも日本人じゃないか」と田村君は何回も言いました。 「お父さんはブラジィールだ」とコバヤシは繰り返しました。 「まあいいや、お母さんがイタリア人なら、シェーキーズでピザを食わせてやるか ら一緒に帰ろうよ」と田村君が言ったら、コバヤシは足下に置いてあった、ポンコ ツのラジカセを大事そうに抱えたので、「なんだ、こんなボロいラジカセ使ってい るのか、誰に貰ったんだ」と田村君は聞きました。 「あんちきしょう、あんちきしょう」とコバヤシが言いました。 田村君は、「何処かのあんちきしょうに騙されたのかなあ」と思ったけれども、 その内に、「アンティークショップで買ったのだ」と気が付いて、「俺がもっとい いのを持っているからプレゼントしてやるよ」と約束をしました。 田村君とコバヤシは、体育館を後にして、街に出ました。 街を歩いていると、田村君は、いい気持ちでした。コバヤシに対しては、丸で未 開人に文明都市を案内しているみたいな気がしたし、日本人どもに対しては、丸で 植民地を歩いている宗主国の総督の通訳になった感じがしました。 (2)へ。
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