長編 #2745の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
夜明け近くマイクロ生体維持装置が非常パルスを発しメイホワは目を覚ました。 目を覚ました時もあの石の壁,長城と昔の人々が名づけたそれが遠くにかなえてそ びえていた。消えない蜃気樓。 待って,あれは。 メイホワの判断は一瞬だった。その長大な構造物の幻はゆっくりとこちらへ近づいて くる。あれは古代の遺跡などではない。あれこそ敵の主力移動要塞「ウォール」。 速射レーザー砲の洗礼がメイホワのまわりに砂柱をたちあげた。 ミノフスキー粒子がばらまかれていなければコンピュータ射撃が目標をはずす筈はな い。メイホワの身体はとっくにプラズマ化消滅していただろう。 かろうじて助かったが,エネルギー兵器が使えないなら次には目視誘導ミサイルがや ってくる。 たった一人の武装歩兵が小国家の総軍事力にも相当するほどの火力を持つ移動要塞と 対抗する方法をメイホワは今即座に思いつかねばならなかった。 あたりは砂漠である。メイホワが身を隠せる場所などどこにもない。 死んだふりしてやろうか,メイホワはマジでそう思った。彼女の国が生んだ世界で 最も有名な戦術家はまず戦わない事を最良の方法と説き,次に逃げることをためらう なと説いた。 もし剣や徒手でのみ戦争が戦われるなら自分達の祖先はとっくに世界を制服してただ ろう。メイホワは舌を噛んだ。 メイホワの家系は代々武術を伝えることで時の皇帝に仕えてきた。一族の女性の中に はそれがつながりとなって皇族と婚姻したものもいるという。 おそらく遠い先祖であるその彼女も自分と同じじゃじゃ馬娘だったに違いない。メイ ホワはその話を聞いた時そう感じた。それとも夫に仕える貞淑な妻だったのだろうか。 感情をさしはさむ余地ない要塞「ウォール」の火器管制プログラムはスケジュール通 りに次のミサイルを発射した。 目標はメイホワである。 ========================= どうすればあの人のもとへたどり着くことができるだうか。 秦の暴兵が我がもの顔に跋扈する城内の市場で,メイホワは先祖伝来の薬草を売 る細商いをしつつずっと夫にめぐりあうそのことだけを考えていた。 メイホワにとっての望みは秦の始皇が行おうとしている長城建設の事業の中身で あった。人類史上未だかつてない最強の暴君はそれまでに各諸国が方々に造って いた城壁を一つに繋合わせ巨大な要塞帝国をこの世に築こうとしていた。 それならば。 メイホワはけなげな決意を心に秘めた。 三千里千万里も厭わずその長城を辿ってゆくならばいつかは夫のいる場所に行き あたるであろう。たとえどれほどの年月がかかろうと。 夫を苦役に陥れているその事が皮肉にも二人に再会の可能性を与えていた。現実の 険しい山河風雪酷暑などものともしない想像の翼は,しかし旅の商人の一声でその 飛翔を遮られた。 「いい竜骨が手にはいったんだが」 秦による全土の征服と統一がただひとつ民に益をもたらしたとするならば遠い他 国の物産品が容易に流通するようになったことであろうか。地大物博という言葉 をメイホワも聞いてはいたがこれほどのおびただしい珍品奇品がこの地上に存在 するとは思いもよらなかった。 不老不死の妙薬を皇帝が血道をあげて求めていたこともあり,なによりも盛んに 取り引きされだしたのが薬品であった。 自分の調合した秘薬を愛しい夫に飲ませることをメイホワは幾度も夢に見た。 しかしそれは許されなかった。 有史上いまだ現出したことない厳格な法治体制が時の宰相である李によって敷かれ ていたのだ。 後世,天才政治家とうたわれた李であったが少なくとも二千年は生まれるのが早す ぎたかもしれない。またその人が授かった生涯は彼の理想を完成させるにはあまり にも短すぎた。 立法による秩序の確立を目指した彼は気づいていなかった。法が秩序ではなく束縛 となってやがて己の身を滅ぼすはめになろうとは。近代的三権の分立を彼は頭から 胴が離れる間際に思い得ただろうか。 メイホワがもし法を冒し出国すればもちろん同じ運命が待っていた。けれどその危 険を冒す日はすぐそこまで来ていたのだ。 旺春峰
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