長編 #2736の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
マリ・アンヌ嬢が夫のおられない隙に、よその殿方を寝室に引き込まれて十月十日 後、お二人の愛の結晶のお子様キリ・ストーロ様がお生まれになってから、一千百八 年と十月十日がすぎた東洋の神秘黄金の国ジパングという国、治安が大層悪うござい ました。 なにしろ狸の子孫が王となるぐらいの国ですから治安が悪くなるのは当然でござい ます。昔、坊主の肉を食べるのが大好きな変態親父とすたこらさっさと山から降りて、 人間様の草履を暖めるのが大好きなお猿と人間様の雌に直接マーキングをするのが大 好きな狸がおりました。三者それぞれ皆様々大いなる野望をかけて戦いあったのでご ざいますが最後には狸が勝ちました。結局精力があった狸が一番勢力があったという ことでしょう。精力が伸びて「あうあうあう、ぷしゅ、ぷしゅ」とこすりあわせてや りすぎた結果、あれが大きくなってしまいました。狸の大将は笑いながらあれをゆび さし、ここまで大きくなったのだから、何か記念になるものを作ろうと言い出し、狸 一族がいつでも、どこにいても見れるように、とっくり片手の異様にでかいあれを持 つ狸の置物を全国各地津々浦々に見れるようになったのはこのころからでございます。 狸のマーキングのために必然的に人間様との混血児が増え、その子孫が王となり、 その手下は大きな刃物を振り歩き、子孫繁栄万々歳を願う逸物には白い布を一枚かぶ せるというお粗末な身なりというもの。 その上文化を交流しようと南蛮のものが参ろうとすれば、狸の子孫の子分どもは刃 物を持って抵抗し、そうはさすかと南蛮のものは大砲をもって敵方の基地に打ち降ろ す日常が続きます。 肝心の庶民の方はどうかと聞かれますと、こちらもまた新興宗教というものにかぶ れまして、恥ずかしくもすっぽんぽんで『ええんじゃないか』と踊り出すありさま、 関係筋によれば、『ええんじゃないか』踊りは貧乏な漢方医がばっこんばっこんとも うけるために、効率よい風邪のかかり方として編み出した踊りとか、そうじゃないと か、そんな噂もありました。 これではいくら狸の子孫が刃物を振りかざしても、南蛮から大砲も持ち込もうとし ても、とうてい治安をよくしようと思うのが間違っているのでございます。 これから話すことは、そんな東洋の神秘ジパングの大都市、お江戸にあったほんの 些細な出来事でございます。 空には漆黒の闇が包み、星がきらきら輝いているお江戸の町に、刀をふりまわす舞 踏団がありました。 「えいっ」 「やー」 「とう」 「おめん」 今日も闇夜の中、光の攻防が繰り広げられております。 ぽたぽたぽた、汗をも握る凄まじいまでの踊り。 「うわあああ」 「ぶしゅ」 「ひでぶっ」 すごい。すごいです。月の光を受けて輝く残像光のラインが神秘的で美しい。 ぼとぼとぼと、道端には汗どころが血をも滴るほどのすさまじいまでの踊り方。 人間が行えるはずのない技の数々、非道なまでの剣の斬れ、だが舞踏団のメンバ−は 刀を持った正真正銘の人間でした。 舞踏団の踊りの輪には観客も含まれております。 お江戸を巣くう悪者集団、一般庶民をはじめ、年貢を納められない哀れな農婆、果て は逢い引きの途中帰りが遅くなった町娘の姿もありました。 刀を使っての最大のパフォーマンス、観客をも参加できる最大のパフォーマンス、首 が飛び、胴体が裂ける、人様の命を大事にし息の根が止まるまで競演者のために最大の パフォーマンスが夜な夜な繰り広げています。 過激なパフォーマンス一団、その名も新番組!!。 「うわああああ」 「どうしてええ」 「助けてくれろ」 舞踏が無事終わりほっとした新番組の足元に真っ赤な手が延びてきます。 先ほどまで共に踊っていた観客の一人です。 表向きは狸の子孫から治安の安泰、南蛮の人の侵入の防止、夜に歩く不逞の輩の処分 などのもっともらしいおたっし状が述べられておりますが、裏を返せば、刀を振り回し て真の踊道、舞踏術の真髄をつかむこと、単刀直入にいえば、血だぁ血だぁ血だぁ、こ の刀が血を啜るのは楽しいな、けーっけっけっけっけ、美しいものは美しい、醜いもの には死をという暗黙の法が彼らの中に毒々と息づいていました。 「まだ生きていたのかっ」 足で血まみれのそれを蹴飛ばします。 「あー汚れてしまった。誰ですか、こんな美しくない踊り方をしたのは」名乗り出る ことは新番組の観客になる権利を勝ち得るというのに誰も手をあげるものはおりません 。 「それではわたしが見本をみせましょう」刀を大きく振りかざし、ぴくぴくと痙攣 を 起こして死にかけている観客に最後の一撃を食らわします。 「ほうっ」ため息がもれました。 「美しい、ボラボー」 「ぱちぱちぱちぱち」 「アンコール」 皆で最後の踊りを踊ったものに賞賛の言葉を投げかけます。 「面白くないやつらだな」どこからか低く落ちついた声が新番組の耳に響きました。 「だれだっ」 「どこにいるっ」 「見あたらないぞ」 「さがせっ」 新番組のメンバーはぐるりぃんと首を百八十度回して探します。人間とは思えぬ柔ら かさ、ある意味では妖怪に近い動作も、最高の芸術を極めようとする彼らにとり、なん でもないことでした。 「おお、あんなところにいたのかっ」新番組の面々は延びきった首を天に向けました 。 そこには青く輝く月をバックにして、松の木にのっかかっている浪人がいました。 「おまえはっ、なぜそんなところにいる」さすがは新番組、徒党を組んで血祭りをあ げるのが好きなら、息もぴったり、皆が同じ言葉を吐いております。 「いやね、そこの家を観察していたら、おにいさん方の姿が見えたもので少し見てい たのですよ」浪人は鼻で軽く笑いました。 その家は風呂屋で、浪人が観察していたのは人間様のすっぽんぽんの姿ではないでし ょうか。 「馬鹿もんっ、恐れ多くも我らはお江戸の治安を守る新番組。そのような下賎なこと はせんっ」 「あらまあ、そうですか。綺麗な方もいますよ。まだわたしの好みには巡り会ってい ませんけどね」悪びれるようすもなく松の枝からすらりと降りる浪人。 「う、美しい。あわわわわわ」新番組の一人が口を開きます。その後手で隠しました が、皆がその男を睨みつけた後でした。 「おまえの始末は後で考えよう」こわもての親分格がじろりと睨みました。 「そんなあ」黄金色の老廃物を垂らしてへなへなと地面に座りこみました。 「ちっ、なさけない」舌打ちをします。 「こんな夜半にうろつくものなど、治安を汚す毒虫だ。こうしてくれよう」新番組の 面々はまだ血がついて暖かい刀を取り出し、一斉に斬りかかります。 「ぎゃあああああ」 「ぶしゅ」 「ひでぶっ」 叫び声がお江戸の町にこだましました。 この声を聞くと家庭内暴力していた子供が突然いい子になり、色気ずいていた猫の声 も泣き止むという一石二鳥の代物です。 やがて叫び声が消え、多勢に無勢、力の差があまりにもありすぎたようで、美しい月 の下には踊り疲れた死体が転がります。 死体の中には浪人の姿はありませんでした。 影をつくっているもの、あの浪人と美しい少年剣士一人。 死体大勢。新番組の連中が死体になっております。 「ひと思いに殺したらよかろう」少年剣士はりんとした声で言いました。 「あれはあなたですね」そんな少年剣士の声が聞こえぬふうに路上に転がっている死 体に顎でさします。 顎でさした先には、さきほど息の残っていた観客の死体がありました。 「だったら、どうだというんだ」少年剣士は憎しみのこもった目で言いました。 「あなたは美しい。このままあなたをわたしの観客にさせるのは惜しいと思いまして ね」そういうと近所に散歩にでもいくように、無造作に近づいてきました。 「近づくと斬るぞっ」刀を構える美しき少年剣士。 「あなたの腕ではわたしは斬れません」浪人は少年剣士の手を打ち、刀をはらりと落 とします。 少年剣士が落ちた刀を見ている隙に、浪人は抱き寄せ、いきなり接吻しました。 「んんんんん」目を大きくして、驚く少年剣士。 「んんんんん」浪人の背に爪を食い込ませなんとかこの呪縛から逃れようとしており ました。 「んんんんん」少年剣士がどう驚こうと、爪をたてようとも、本当は痛いはずなのに 身動き一つせず、接吻に全神経を集中する浪人。 「んんんんん」あちらの世界にいくすんぜん、美しき少年剣士の力が抜け、浪人の身 体に持たれかかりました。 「これぐらいで失神するとは、あれに耐えきれるか、不安ですね・・・まあいいでし ょう」腕の中で眠る少年剣士の顔を見、軽く肩をすくめました。 「大丈夫ですか。しっかりしてくださいよ」自分で失神させたにも関わらず、親しい 友人を開放しているかのように演じている浪人、その顔は不気味な薄笑いを浮かべてい ました。
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