長編 #2728の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
3 意中ではない女性に求愛される事。それは、恋愛経験に乏しい志村にとって 難儀な事に違いない。 「一緒に寝てくれって、おい」 志村はこの場を、自分なりに綺麗に収めようとするが、誠の覚悟だって判っ ている。 「俺、お前の言う通り、好きなのは渚ちゃんで、お前では」 「いいわよ」 志村がはっと驚く。細く滑らかな掌の中には水滴のにじむビールがあった。 「飲んで、少し渚の話でもしようか。志村は女の扱い方に慣れてないみたい だし」」 渚に手をひかれてベッドの上に腰掛けた。 「さてと」 志村の左肩には誠の顔があった。 「飲もう! 」 勢いよく泡のはじける音が志村の耳に届いた。志村も少ししてから、同じよ うにプルトップに手をかけた。 「さっ、イッキに飲もう! 」 誠が勢い良く口にやった。 一瞬だ。一缶を空けてしまった。 「お前、未成年のくせに、結構飲んでるな」 志村は保護者みたいな立場で咎めるようにして言う。 「ウチ、酒屋だよ。渚はあんまり飲めないけど、私は揚げ饅頭よりもお酒の 方が好きだから」 誠が酒にまつわる自慢話をはじめた。その酒量をこなせる奴は、本土の酒豪 のなかにも滅多に無い。泡盛といえばアルコール度が40パーセント超える程 のクセのある沖縄の地酒だが、こういうのを大トラというのか、一升瓶にして 三本程度の泡盛を空けてみせたことがあるという。 「最後まで潰れなかったのは私くらいかな」 「凄いな、けど」 志村は、スポーツライターの立場から少し思うところがあった。 「将来の事考えると、酒飲むのは良くない。第一、世界の一流どころは決し てアルコールを口にしないぞ」 「どうしてアルコールがダメなのよ」 誠が膨れ面をする。 「体が酸性になるだろ。怪我しやすくなるぞ」 スポーツマンの体はアルカリ性の方がいい。酸性の体は乳酸を発生しやすく、 疲労を蓄積しやすくなる。とみにサッカーやラグビーという選手同士の接触が 多く筋力を持続的に消費する競技なら、筋繊維はアルカリ性の方が絶対にいい。 「ジーコやリトバルスキーのような往年の名選手だって、決してアルコール なんかやんないぞ」 しかし渚の言葉は、志村の親切心を伐って捨てた。 「管理馬鹿の言う事を信じるの? 」 「管理馬鹿? それって」 「フィジカルコーチとかいう奴のことっ! 」 近年、フィジカルコーチの役割は重要だ。トレーニングコーチの仕事に加え 選手個々の栄養管理まで引き受ける。 「フィジカルの奴、私に酒を止めろとか、肉を食うなとか、セックスを控え ろとか、私の主義に反する事ばっか言うんだよ。スポーツ科学とか何だかいう けど、九十分まともにボール蹴って怪我しなかったら問題ないじゃない! 」 誠は、管理される事に不満があるようだ。 「渚みたいに、菜っ葉や豆ばっかり食ってたらストレス溜まっちゃうわ」 「それが正しいと思うけどな」 志村は誠と違って常識的である。 グシャ! 空き缶の潰れる音が志村の鼓膜に響いた。誠が右手で握りつぶしたのだ。 「どうして、渚のやってるコトが正しくて、私のやるコトが文句言われるワ ケ?」 先程からビールを三本空にしている。結構酔いが回ってきたようだ。 「あのねぇ、渚ちゃんは真面目で、親切で、おしとやかで」 余計なことを。 「みんなそう言う、確かに」 志村は耳を塞ぐしぐさをした。しかし渚の酔いの回った怒鳴り声が遮る両手 をつらぬいて、軽く酔いの回っている志村の脳髄まで響きわたる。 「けど、カワイコブリッコしてるけど、渚はボゥイなのよ! そりゃさ、 胸は私より大きいし、お人好しだし、要領いいし! けど、悔しいっ! 女の 子もいいけど、渚のおかげで男は口きいてくんないのよっ! 男のくせに、 男のくせにっ」 「おいおい、わかったから」 志村が誠の事をなだめる。しかし誠の鬱蒼としていたものは止まらなかった。 「どうして渚ばっかが男にモテるのよぉ、志村ぁ、どおして」 「はいはい、判ったから」 ハンカチを差し出して、涙を拭くように勧めた。志村のハンカチが女の涙で 濡れるのは初めてだ。 誠が背中を丸めて、ハンカチを目頭にあて、目の前ではじめて憂いを見せる。 勢いよく、今度は志村のビールが進んだ。 意外な結果だな……… 「俺はね」 目を細めて笑っている。 「嫉妬する女って、女らしいじゃん。素直でよろしい。それに」 誠の額に顔を近づけた。 「まこちゃんの方が、サッカー上手いじゃんか。渚ちゃんもいいなって思う けど、まこちゃんの方が、俺は安心出来る」 「え、志村っ、急に…… 」 志村の唇が誠の額に軽く触れた。 「フィールドの上よりも、魅力的で、………恐い」 赤く染まった誠の頬を撫でる。 そして志村は、上着を全て脱ぎ捨てた。 若干腰まわりのたるみが難点であったが、毛深い、男らしい体躯であった。 誠の激しい鼓動が、志村には聞こえたはず。 「志村って、大きい」 「そう? 」 志村の両手が誠の体にのびた。 「きゃっ! 何するのよ」 誠の軽い悲鳴が志村の昂りをさらに燃え上がらせる。 左手は誠の首、右手は誠のひざをがっしりとつかんでいる。誠の体が一瞬宙 に浮くように抱えあげられた。 唇に一つキスをする。 ベッドのスプリングが激しく軋んだ。誠の体がベッドの上へと放り投げられ たのだ。 志村の目線は、誠よりはるかに高い位置にあった。瞳は、ずっと誠を見つめ ている。 「乱暴だね」 「御免な。体が勝手に動いたまでさ」 志村がズボン、そしてパンツと全ての物を脱ぎ、暖色系のじゅうたんの上に 無造作に置いた。 もう、我慢できない。 あとは、誠の身体を晒すだけである。 しかし、時間が限られているような、そんな態度を志村は取った。 「ピル、飲んでいるから、大丈夫だから」 誠はそれを言うだけで精一杯であった。 ああっ、志村っ! モスグリーンのスカートの中へと、志村の頭がまず探りを入れた。 「山岡さんのペテンには感謝するよ……… 」 志村の気まぐれが、誠のか細い叫びを引き起こす。 志村は、誠の名前と、時に渚の名をささやいて、下着の上から弄んだ。 昨日の渚のように綺麗な戯れではなかったが、自分なりの乏しいながらも実 直なやり方で、必死に舌を遊ばせた。昨日のスーパーアスリートを、今日この ようにして自分が手中に収めた喜びは身体中を駆けめぐり、男の身体は闘争本 能の塊となって獲物を襲う。ロベルト・バッジオ、マッサーロ、ロマーリオ、 今日の自分はこいつらよりも偉大で逞しい。この子を、誠を、もう止まらない! 「志村っ、はやく!」 ここで、動きが止まった。 志村の顔が、再び誠の目の前に現れた。 恍惚の眼差しが、少しおびえた感のある少女の身体を、蜘蛛の巣のように包 みこんでいく。
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