長編 #2684の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「子供じゃねえか!」 信じられない面もちで、不用意に近付いてきた奴に矢を返してやる。親指で先端を潰 してやったから、大怪我にはならないだろうが、衝撃でふっとんだ。 戸惑いと恐怖のにおいがあふれる。いい感じだ。 僕の外見は、子供だ。 淡い茶色の髪に、やっぱり淡いグレイの瞳。 色素の薄い肌と、美少年とは言えないが、子供らしい、かわいらしげな風貌。年の頃 は十二歳から十四歳くらいに見られることが多い。どこにでも、よくいる子供。そうい う設定だ。 ゆっくりと杖を掲げる。盗賊ばらは、じりりと下がる。ああ、気持ちいいなあ。 緊張した空気が好きだ。僕を取り囲んだ奴等が、冷や汗をかいているのまでわかる。 吹く風と、枝葉の鳴る音以外は、すべてが凍り付いている。 もう一歩、踏み出す。 「いたぞ!」 「見つけた!逃がすな!」 緊張の糸が切れた。 我が優秀な、アストレイア神官騎士団と、トゥール神槌戦士団の連合軍が、ようやく 追いついてきたようだ。残念ながら。 彼らにも花をもたせなきゃあ、また化け物扱いされた上、かわいいわが身がろくな目 にあわない。 身を低くして鉄杖をはらう。敵がわっとひるんだ処で跳躍する。 雷鳴のような怒声が風を越えて、耳を打つ。 臨時に僕の指揮下に入った壮年の司法神官だ。なんと、あの長身をものともせず、こ こまでやって来るなんて。 「サハティ隊長!」 風に負けないよう、大声で呼び返す。もう一つ、上の枝に飛び上がる。 「奴らは、飛び道具で来る!うかつに、近よるな。」 「なんの、こちらも用意は万全ですわ!」 こちらはトゥール戦士団の隊長。名前は忘れた。肩で息をしている。大地に足を付け て活動する彼らにとって、申し訳ないくらい似合わない戦場だ。よく、木々の枝が持ち こたえている。 「ルースどの、御身はさすがにエルフの血を引いておられるようだな。風のようにすば やくていられるが、今度は我らの剛勇をご覧じろ。さあ、盗賊ども、目にもの見せてく れるわ!」 いくぞと一声、すばらしい巨体を翻し、豪快に大地に着地した。 なんだかの皮で作った自慢の鎧が、足を守ってくれるのだろう。野草の鋭い刺をもの ともせずに、トゥール神の戦士たちは次々と隊長の後を追った。 僕に、樹上からの脱落を余儀なくされた盗賊たちに、情け容赦なく襲いかかる。 戦斧の背で木の幹を殴り、つぶてを打ち出すやからをたたき落とそうとする者までい た。 トゥールは勇敢な、そして時に暴虐な神だ。司法神殿に席を置く僕らと違い、戦 神の使徒である彼らには、理由さえ付けば限度ない殺戮も行える教義がある。 鉄杖を脇にたばさむと一息に、サハティ隊長のいる枝近くに飛び移る。獣ような跳躍 だ。敵味方にどよめきが起こる。 臨時で指揮下に入った味方たちは、僕の力を知らない。噂にも聞くことは滅多にない だろう。 「サハティ隊長、トゥールの勇者に後れをとるな!我らがアストレイアの名において…… 」 台詞をいったん切る。杖を高く掲げ、劇的に兵士の士気をあおるべく。 「奴らを一人残らずひっ捕らえろ!」 わあっ、と喚声が上がる。サハティ隊長の指揮の下、いかに訓練されているかが解る 反応の良さだ。。なかなかの勇敢さと、それに見合った実力を発揮してくれそうだ。 短剣をかまえ、隊長が身をかがめる。 「ははあっ、ただちに!して、祭司長どのは。」 「首領を探す。奴を逃しちゃ、何のために僕がわざわざ出向いたのか、わからないから な。ここを片づけたら、少人数で後を追ってくれ。」 「ご命令であれば。しかし、お一人ではあまりに危険。せめて誰なりとお連れいただけ れば。」 「いや、一人で行く。大勢で行けば、僕らの勝利を知って、逃げてしまう。この下っ端 どもを片づけ終わる前に、『黒いティシュタル』を見つける。頭さえ片付ければ、下っ 端たちは昔通りバラバラだ。」 サハティは僕をじっと見つめた。ひとつため息も、ついたようだった。 「……祭司長。自分には、あなたと同じくらいの、いや、そう見える年の子供がおるの ですよ。時折、あなたがせがれに見えてしまうが」 手柄を取られるのを心配してではなく、心底僕の身を心配しているのがわかる。 「しかし、あなたは自分より年を重ねておられるのでしたな。お気をつけて。司法神の ご加護を。」 「あなたこそ、隊長。うまくすれば、僕だけでもティシュタルを捕らえられるかもしれ ない。」 「ご無理なさらず、くれぐれも、お気をつけて!」 僕らは同時に枝を離れた。 同時に枝葉がつぶてに散らされる。 森を抜けると、暖かな朝の太陽が、冷たい大気を侵していくのが解る。時間がない。 霧が消えてしまう。 太陽が、天の中央に向かいはじめている。すぐに、気温が上がり出す。 昨夜捕らえた者の証言では、森を抜けてすぐ、小さな泉のそばに隠れ家を作っている という。 鉄杖を立て、風にさらして水の気配を探る。 霧がすっかり晴れたわけではないから、ちょっと難しい仕事だ。ぐずぐずしていれば 隊長以下そろってお出ましとなってしまう。それだけは避けたい。 僕の頭には一角獣の角がある。小さいながら、どうにも隠し仰せない。 湿った服の下から、銀の太い鎖を引っぱり出した。同じ銀のメダルがくっついてくる 。神官の身分を示す大事な品だ。 真ん中に青い石。司法神は炎の赤い髪と氷の青い瞳を持っていて、この石は、瞳の青 ということになっている。 石の青に右手を乗せ、声には出さずに僕の本当の名前をつぶやく。 瞬間、石が発光し額が灼熱した。 サハティ隊長以下、誰一人連れて来なかった本当の理由が、額にありありと現れる。 三つの円が重なり合い、第四の円を描き出す。血の赤で捺された永遠の烙印。 誰かが今の僕の姿を見たら、こう叫ぶだろう。 「身喰い蛇の三重円……ドラクーン!」....
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