長編 #2630の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
Yes,'n'how many deaths will it take till he knows That too many people have died? (どれだけの死が必要なのだ? 多すぎた死を知らしめるまでに……) ----ボブ・ディラン『Blowin'in the Wind』 プロローグ 20世紀の人類が、21世紀の人類に残したものは、希望や喜びや愛情などとは およそかけ離れた悪夢、すなわち自然の浄化能力の限界を遥かに越えた激烈な環境 汚染であった。もちろん、統合政府が樹立しADがNWC(New World Century)に変 わっても、その悪夢が消え去ったりはしなかった。 「科学の進歩と文明の発展の間に生まれた鬼子」である汚染物質は長い時間をか けて複雑に化合した猛毒物質へと変化しつつあった。それらは多種多様な分子構造 を持ち、地球上の全ての研究施設の努力をあざ笑うかのように増殖し、自然を破壊 し、ますます複雑化していった。 それに拍車をかけたのは、統合政府樹立にともなって必然的に勃発した、一連の 反統一抵抗運動であった。抵抗運動と呼ばれてはいるが、実質的にそれらは戦争で あり、12年という短くない期間にわたって、地図に印されるあらゆる地名を戦場 とした。戦況は統合政府軍が有利であったが、どちらの陣営も環境への影響という ことをあまり考慮しなかったのである。 ようやく樹立した統合政府の要人たちは、散発する抵抗運動やテロに対応するの に忙しく、環境問題からは長い間目をそむけていたが、とうとうそれも限界に達し た。NWC21年、政府が秘かに実施した地球規模での環境調査と、そのデータに 基づく分析の結果、科学者たちは絶望的な予測をはじき出して、脳天気な政治家た ちの目の前につきつけたのである。有名な「スターリング・レポート」である。 「このまま環境汚染に対応策を取らなければ、地球は人類を含むあらゆる哺乳動 物にとって、生存に適した惑星とは言えなくなるだろう。その時はNWC90年か らNWC100年という、遠くない将来に到来するものと予測される……」 かくして政府は、直ちに地球上に溜まり溜まった過去からの遺産を何とかしなけ ればならなくなってしまった。 統合政府御用達の科学者たちは決して無能ではなかったが、それでも目の前に横 たわっているのが果てしない苦難の道であることを思うと、ため息をつかざるを得 なかった。無計画に乱立された核燃料施設からの高レベル廃棄物。無計画に散布さ れ地球上の土壌に深く浸透した農薬。無計画に実施された遺伝子研究によって混乱 した遺伝子コードを持つ動物達。無計画に大気に放出が続けられる工業施設からの 化学物質。無計画に投与された医薬品によって生まれた奇形児……。これら全てを 解決する方法はひとつしかないように思われた。 宇宙への脱出。 これが「逃げ」であることは誰しもが否定できなかった。だが、人類と文明を別 の惑星へ移住させ、地球を二千年ほど立入禁止にすれば、ほとんどの汚染物質は自 然に分解するか、無害な成分に変化しているかどちらかであろう。そのころには、 人間も少しは賢くなり、環境を破壊せずに自然と共存しうる文明を形成しているに 違いない。 問題は太陽系の他の惑星の中に、人類の移住に適した惑星が存在していないとい うことだった。水星は太陽に近すぎる。金星と火星は宇宙開発局によって、テラフ ォーミングが行われてきたが、呼吸可能な大気が誕生するにはあと一世紀を要する と思われた。木星と土星の衛星群は、母星からの放射線の点でどれも不適当だった。 外惑星はいずれも太陽から遠すぎる。 人類はまだアインシュタインが宣言した光速の壁を突破する方法を発見していな かった。そういう研究はなお行われてはいたものの、この数十年というもの人類は 星の世界への関心を失いつつあった。統合政府樹立にともなう世界規模での抵抗運 動でそれどころではなかったのである。研究に従事している人々は、少ない予算で 周囲の冷ややかな視線を気にしながら、細々とやりくりしていた。だが、突如とし て彼らは無制限の政府資金と研究施設、それに人材を与えられることになった。 最初のFTLシップが誕生したのはNWC42年のことである。それは月面に設 置された施設で、最高の人材と施設を投入され急ピッチで進められていたのである。 安直にも「プロジェクト・アーク」と名付けられた脱出計画は、トップレベルの情 報管制が行われていた。それが市民へ公表されるのは、試作機が無事に恒星間飛行 を終えてからである。 しかし、試作機はとうとう飛び立つことがなかった。人類の星への挑戦は、あえ なく挫折し、2度と復活することはなかった。プロジェクトは解体され、科学者や 技術者は失意の中で別の職を求めることとなった。 表向きは基礎理論に致命的な誤りが発見された、ということになっている。だが 真の理由を知っている人間は、数えるほどでしかなかった…… 星への植民という手段を断たれ、希望は消滅したかのように思われたが、翌年に はそれに代わる光明が見い出された。すなわち次元間通路の基礎理論である。 すでに、複数の次元世界が、この世界と隣接して存在していることは理論的に証 明されかかっていた。だが実際には、次元間を渡る手段はなく、それは空理論に終 わっていたのだが、次元間通路を開く理論が得られたのである。 こうしてレヴュー計画(REVerse dImEnsion World)が誕生し、4年後、最初の レヴューが発見された。そこは人間の生活には適さない世界だったが、他のレヴュ ーの存在が確認されたのである。 多くの人々が失望したことに、即座に植民団を送り込めるほど、人間に親和的な レヴューは見つからなかった。かろうじて2つ、ある程度のテラフォーミングを施 せば、(少なくとも火星や金星よりは早く)人間が生活していけると思われるレヴ ューが見つかったことで希望が消えたわけではなかったのだが。 9番目のレヴューはNWC62年に発見された。だがレヴュー9の発見は、直ち にトップシークレットとされた。何故ならばレヴュー9には、人間が先住していた のである。
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