長編 #2619の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
7 真田一郎は、また煙草に火をつけた。道は渋滞して、まったく動けない。ラジオ の音が耳に触って、いらいらしたようにスイッチを切った。 ワイパーが、何度も何度も、ウインドを行き来している。 「森町亮太か……。なんでもへこへこと、いいなりになって働いて、こっちの言う ことには平身低頭でバッタみたいにぺこぺこ頭を下げて。いつもこびて、働いてい るところを見せたくてしょうがなかったやつ。それほどまでに、出世したいか……」 真田は、森町の卑屈な態度が、いつも胸糞悪くてしかたがなかった。つらくあた ったのも、そのせいだった。 (あの歳になっても、まだ、”頑張っている””努力している”というところを見 せたいのか。それで、ほめてもらえると思っているのか。そんなものを相手にして くれるのは、学校の先生だけなのに。一日かけようが、一分でやろうが、できたも ので評価は決まるというのが、わからんのか……) 真田は、顔をしかめて舌打ちをした。 (俺は、森町のやつを、どうせこんなやつ、使い捨ての道具だと考えていた。学歴 もなく、いくら頑張ってもどうせ上に昇る道は閉ざされている。『誰でも店長にな れる』か……。そんなものは、建前さ。会社がそんなことを言っているのは、働く 意欲を喚起するためだ。期待をかけている振りをしてやれば、その気になって、倒 れるまで命令を守って働く。馬鹿なやつだ。都合のいいやつだ。お前は、使えるだ け使って、用がなくなったら見捨ててしまえばいいんだと、そう思っていたよ、俺 はな……) しかし、そう思いながら、真田の表情は曇った。 (だが、お前の気持ちは、よくわかるんだ。本当は俺が一番よくわかるんだ。誰よ りもな。お前の焦る気持ちも、上役に露骨に卑屈になる態度も、出世への欲も身勝 手さも、よくわかるんだ。なぜなら、それはみんな俺と同じだからな) 「……そうだ。全部、この俺と同じだからな」 (俺は、本当はお前みたいなやつを安物のハサミを扱うみたいに使いたくはなかっ たんだ。なぜなら、お前は、俺の姿そのものだからな) 真田も、小さい頃から、辛酸を何度もなめてきたのだ。いつも、いじめられっ子 だった子供の頃。父は、真田が中学のときに事故で死んだ。田舎から出て、東京で 夜間大学に入りながら苦学した。勤めも、何度変えたかわからない。 挫折しそうになる心と、必死に闘いながら生きてきた。歯を食いしばって頑張っ てきたのだ。 (あいつも母子家庭だったな) 真田は、にやりと笑った。 (本当は、お前とは話が合いそうな気がしたんだよ……) 真田の目頭がうるんだ。 (俺は、今まで、お前に言わなかったことがあった。心の底ではわかっていたが、 言わなかったことがあった。 ――お前しか、店長になれるやつはいない。 お前しか店長になれるやつはいないと、言ってやる。眠っていても、その枕元で 大声で言ってやるのだ……) 車は夜の道を走った。 参考文献: 『KAROSHI[過労死] 経済大国ニッポンのもう一つの真実!』過労死弁護 団全国連絡協議会編 窓社・窓ブックレット3『フードサービス業 こんな店長が 繁盛店をつくる』佐久間新吉著 経林書房『セブン−イレブン 鈴木敏文驚異の経 営哲学 日本の小売業を変えた男の経営思想!!』森下紀彦著 ぱる出版 ------------------------------------------------------------------------------ 如何だったでしょうか?私の運営している草の根ネットで創作活動している鳥さん の作品でした。感想などありましたらフレボイなりメールで私宛(MUJ58226)にお願 いします。鳥さんはまだPC−VANのIDを持っていないのでご意見、ご感想等は 私が直接鳥さんにメールしておきますので。
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