長編 #2611の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「JETBOY」 第12話「心の病?」 ひとすじの飛行機雲のみ在る国立競技場の空は、フリューゲルスの最高の舞台 である。 誠の謹慎状態は解けた。誠がいない間は渚も絶不調で、チームも3連敗して首 位から転落していた。そのフリューゲルスに誠が帰ってきた。ここでヴェルディ を叩けば、また首位に返り咲くことが出来る。 サポーターの期待は歓声となって現れる。 ヴェルディ川崎、センターサークルにはカズと武田。 ピィィィィィィィッ! キックオフの笛が鳴り響いた。 大歓声の中を、右サイドのFW武田がドリブルで駆け抜けていく。得点王争い は、渚の後を武田が追随する展開となっていた。果敢にゴール目掛けてトップス ピードで攻め上がる。 モネールが武田の前方に立ちはだかったが、武田はそれをフェイントでかわし、 ビスマルクへバックパスを出す。 すぐさまワンタッチで、中央のラモスへとパスを出した。 渡辺一平と岩井がカズを取り囲む。 ラモスにも包囲網の手がのびた。歓声がドッと沸いた。 周りよりも一回り小さいスモールトランジスタ、誠がラモスに対してチェック を掛けにいった。ラモスのアゴの部分の動きを見ながら、ラモスに足枷をかけよ うとしていた。 しかし、ヴェルディって油断ならない。カピトンがラインを押し上げ、攻撃に 参加してきたのである。 誠が執拗にラモスを追い詰める。しかし、彼も元日本代表であった。 わあっっっっっっっっっっ! ヴェルディファンからため息が漏れるほどの妙技だ。誠が一瞬バランスを崩し かけたところに出来たスペースを利用して、左に鈍い回転のショートパスを出し たのである。そこにカピトンがあがってきた。 だが、カピトンの仕事はほんの僅かだった。少し触れただけで、左サイドの北 沢に、今度は速いパスを出したのである。 大竹が慌てて北沢をくい止めようとする。 しかし、それもまたトリックであった。ボールは・・・・・・ さらに上がってきた ペレイラのところに渡ったのだ。 ヤバい! ペレイラの右足に重心がかかった。 しかしフリューゲルスは、ここで一命をとりとめた。 ボールは突然、左サイドライン中央へと消え去っていった。ペレイラがシュー トを撃とうとしていたその位置には、誠がいた! スライディングタックルのつ いでに蹴り出したわけだ。 誠は、ヴェルディの全体を一瞬のうちに見極めていた。この時、フリューゲル スのディフェンス陣は混乱していたわけなのだが、細かく緩急をつけたパス回し をするヴェルディの終点を誠は見取っていたのだ。シュートを撃つにはある程度 の空間が必要になる。コーナーキックで意外と点を取れないのは空間が狭くなる からである。渚だって、密集地帯では不安定なシュートしか撃てない。 「うーん、危ない危ない」 ヴェルディの猛攻に、メモ帳を落としかけた。ゴール裏最上段から見るサッカー は見やすいことこの上ない。 ヴェルディの猛攻は続く。ゾーンプレスでぶっ潰してしまえばいいものを、今 日はゾーンプレスを機能させる前にヴェルディの正確な仕掛けが作動している感 じがする。 なんとかしろぉ、マコ! 次第に右拳をふりあげる場面の密度が増してきた。 その時、見慣れた顔がポップコーンを抱えて俺の前に姿を現した。 「やあ、先輩」 矢島が、大学のサークルの後輩であり、Jリーグの裏情報だったら何でも握っ ていると業界では噂の、大手H広告代理店の社員である。 「矢島ぁぁぁっ、来てたんか? 」 「Jリーグご用達広告代理店の社員ですからね、チケットなんて無くっても、 コレで入れますよ」っていう具合に社員証を見せびらかした。 「先輩は、今日は取材じゃないんすか? そうそう、この前の平山の記事、見 せてもらいましたよ。いやぁ、よかったっすね平山サン、チャンプになれて。ウ チも20%突破したもんで金一封頂いちゃいましたよ」 「今日は、応援なの」 「ズルいっすね。ちゃんと取材証持ってんじゃないすか」 矢島はいつも一言多い。言葉遣いは悪いし、ノリが軽い。 「まっ、渚ちゃんと先輩はカクカクシカジカの仲ですから、応援にも熱が入る ってなもんで」 「えっ!」 それは、どういうこと? 「知ってるんすよ、この前平塚駅前のビストロで変装した渚ちゃんと食事して そのあと、湘南海岸までクルマを飛ばしていったって。コッチのギョーカイでは もうバレバレっすよ」 な、なんだぁ、コイツの情報網は? シラを切り通すしかない。 「俺なんかにゼニが有るわけないだろ。それに渚君はオトコ。俺はホモなんか じゃねぇ」 だが、コイツはとてつもない証拠を手元に持っていた。 矢島の手元に有った代物は、渚のサイン入りのベルマーレの手帳であった。 「先輩ぃ、湘南の砂浜で2時間くらい渚ちゃんに膝枕してあげたでしょ。確か、 フリエの寮で別れたでしょ。後をつけまわしてましてね、先輩と別れたあと、渚 ちゃんを捕まえて、ご覧のとおり貰っちゃったんですね、サイン。渚のこと応援 してくださいねって言われちゃいましたよ」 渚ぁぁぁぁぁっ! 何故安易に正体をバラす。 「ま、これはギョーカイの『噂話』ですから、別にぃ、別にねぇ。シラフじゃ 言いませんよ」 こいつ、俺の生活をどうしてくれるんだぁぁぁぁっ。酒の席やったら言うんか い!おんどりゃぁ。 「これは、取引というわけじゃないっすけどね、今度、渚ちゃんに会わせてく れませんかねぇ、先輩」 「お前、パシリ時代からしたら随分エラくなったもんやな」 「別にぃ、アポ取りですよ。CFの」 この矢島、優男で大学時代からモテ男君だった。 「まさか、おのれも渚んことを?」 「ま、そりゃ、好きですよ。ギョーカイでは、ファンクラブが数カ所出来てる って話っすからね。あのモリプロの社長やアキモトさんもファンですからね」 こいつの毒牙にかかったら、渚の奴、マジモノのニューハーフになるやもしれ ない。決して業界人には会わせるもんか。 会話が弾んでいるうちに、ペレイラのミスキックで、はじめてフリューゲルス がコーナーキックを獲得した。 エドゥーが蹴るのか? 否! 観衆はジャンヌダルクのおでましを待っていた。 WOW WOW WOW WOW WOW マックゴール!!WOW WOW WOW WOW WOW マックゴール!! 時間は前半19分で、ぼちぼち前半の真ん中である。誠がゆっくりとコーナー へと歩んでいた。 ゆったりと風の調べを聴きながら、草むらを踏みしめ、ゴールネットを睨みつ ける。その姿はまさしくジャンヌダルクに見える。 風は追い風だ。直接ブチ込む事もワケない。3メートルか5メートルあたりの ここちいい春風を感じることが出来る。 渡辺一平が放ったボールを受け取って、芝生の上に置く。 コーナーキック一発でみせる選手といえば、エドゥー、ジーコ、磯貝と色々い るが、誠のコーナーキックも魅せるに値する代物であった。アマリージャや渚の ところに寸分狂わず合わせる技術は、ミリ単位の精緻なものだ。 フリエサポーターのマックコールにカミザドーセ率いるヴェルディサポーター のブーイングが覆いかぶさって、雰囲気も最高潮だ。この感じだ。 もう一度、今度はフォーメーションを確認する。詰めている渡辺一平の方をチ ラリと見た、そんな感じだ。 二歩三歩と助走し、ボールをじっと見つめ、そして、向こうを見つめた。 「まこちゃん、今日、具合わるいすね」 「えっ? 」 矢島の奴、何言ってんだ? ショット! ボールが高く蹴り上がった。 しかし誠の打球は、フリエサポーターの期待を裏切った。 スライスがかかり過ぎていた。ゴールネットを越え、ゴール裏のトラックの所 までボールは飛んでいった。 どんなときにも仕事を丁寧に遂行する彼女のミスは意外だった。 「やっぱりぃ・・・・・・ 彼女、何かあったんだぁ」 矢島の奴、まさか他にも知っているのか? 問いただしたが、別にぃとしか言 葉を残さない。 「何か、モヤモヤしてますね、まこちゃん」 矢島がシークレットのはずの痛いところを突いてくる。「先輩ぃ、何か情報掴 んでません?」 「別に・・・・・・・ 」 表情を隠して嘘ぶいてみせる。 確かに今日は調子が悪いようだ。別に『あの日』というわけではなかったし、 やっぱり、沖縄での出来事が誠の心に引っ掛かっているのか? 誠の個人的な心 理的影響がゾーンプレスにも大きな影響を及ぼしていた。今日はビスマルクや北 沢が活躍し放題である。 得点こそはまだ入らないが、圧倒的にヴェルディが押している雰囲気である。 今日は前田治を外し、アマリージャを投入して臨んだ試合であったが、深く守る ヴェルディは6人をも一気に下げ、極端な攻守の容を見せていた。渚もペレイラ と柱谷に囲まれ、殆ど配球を封じられていた。 「うーん、まこちゃんがガンバってもらわないと、試合が盛り上がらない。」 矢島は膝を叩いて、そして手を叩いて何かを呟いた。 「ちょっと、本社に電話があるんで。チョットの間失礼します、先輩」 席から矢島の姿が消えた。 時間は40分、ゾーンは次第に拡大し、気だるい試合展開となってしまってい る。前半はこれ以上の山場はないようだ。 45分が終わった。ヴェルディ優勢で前半が終了した。誠の復帰戦であったが、 その肝心の誠には何故か精彩が無い、そんな感じであった。 ハーフタイムを利用して一休み。試合が始まったら、サンバの音色が起こして くれるだろう。 ★ 「せんぱーい!」 な、なんだ? 「せんぱーい、起きてくださいっ」 耳障りな掠れ声で目が覚める。矢島が両手に弁当を抱えて再びここに戻ってき た。 「矢島ぁ、後半はじまってないだろ」 「ま、ウチの社のオゴリですよ」 豪勢な弁当だ。多分、スポンサー向けの弁当だろう。鯛飯ではないか。 「あんがとな」 「いえいえ、前回電話を頂いたのが運の尽き、じゃなくて運命的な再開って奴 で、私もこれから先輩といいお付き合いができましたらと」 「そうだ・・・・・・ ね・・・・・・・・ 」 いちいちムカつきながら飯を食う。 「後半、ジェットボーイが活躍するといいっすね。先輩も渚ちゃんにオゴッて もらえるし」 「バカもん! ポケットマネーだ!」 「へえ、赤川次郎並みなんですね。先輩の稿料」 ムカッ! 「けど先輩、後半のフリエは凄いっすよ。きっと」 「前半あんだけタコだったんに?」 「そーだったら、瞬間視聴率が上がるかなって思いまして」 変な発言をする奴だ。コイツは。 ウ そうこうしているうちに、選手が円陣を解き、そして後半戦が始まった! しかし、展開はガラリと変わった。 誠がエドゥーからのパスを持ち、そのままドリブルで突っ走る。 ウォォォォォォッ! 国立が驚嘆で包まれる。 アルゼンチーノ風の細かいドリブルで二人三人、抜いていく。そして中央に パスを出した。そこに渚が走り込んだ! 呆気に取られるペレイラ。既に反応することは出来ない! ゴールネットの音が俺の目の前で鳴り響いた。怒濤の大歓声が祝福の声をあ げる。なんと開始30秒のゲットゴールだ! 「やっぱり、うまくいった!」 矢島が手を叩いて大喜びする様が隣に有る。ひょっとして素人の分際で誠に アドバイス? 矢島の無邪気さが実に不可解であった。 試合は動いた。青空の下、フリューゲルスの猛攻がはじまった。 つづく
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