長編 #2551の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
●言い訳:コードウェイナー・スミス風とかいいつつ、まるで似ませんでした。や っぱりむつかしい。コードウェイナー・スミスファンの方、どうぞご容赦のほ どを。あうあうあう。その上またもや1MSGにおさまらなかったという。質 量ともに規定からずれてるってのは、んー、だよなあ。許してってば。(無) さて、物語をはじめる前に紹介しておこう。まずは稀有なる盗賊ジオ・テマセク。 いまだかつて神聖皇帝と二人の側近以外のだれひとりとして、生きて出た者のいな いといわれる帝国宝物蔵から、マグヌスの幻影石を盗み出したという破格の盗賊。 ただしエル・エマドのチャイ・ハナや、怪しげな地下の酒場で酔漢やジャンキー どもがろれつのまわらぬセリフで口にし語り合う、はなばなしい活劇やジオ・テマ セクの恐るべき魔術、英雄的なその人となりなどは実のところまったき事実無根。 ほんとうのジオ・テマセクが、後生大事にふところにしまっている“マグヌスの 宝石”はといえば、鑑定家が一目みればすぐにそれとしれるガラス玉にほかならな い。だいいち何より、彼は帝国宝物蔵どころか、あの輝ける黄金都市を訪問したこ とさえ一度もないのだから。 だけど他愛のない法螺話が銀河系のこっちの端からあっちの端へと広まるころに は、この盗賊の名前は、ジルジス・シャフルードや“殺戮愛好家”ヴェリオとさえ ならぶほどの伝説の域にまでおしあげられた。いまやジオ・テマセクは、その名声 といささか怪しげな口先、そしてほんのちょっぴりの幸運、ただそれだけで、羽振 りのよい暮らしをつづけていけるだけの後光を手に入れた。 ただし、マドワリやデトロイト・ポーカーにその金をつぎこんでしまわなければ の話。だから伝説でなくほんもののジオ・テマセクは、あいかわらずただの借金も ちだ。 さてそれから、二人め。二人めの名はハドラ・アブドライという。尊者アブドラ イという意味の、尊称つきの通り名で呼ばれるこの男、百年ほど前まではほんとう にザール・トゥーシュ教の筋金いりの尊師だった。 いまではアブドライは、千人の自殺者とその十倍の自殺未遂常習者を排出した、 異様な新興宗教の教祖であり、悪名高い帝国機動警察ですら手出しをはばかる悪魔 の王そのものだ。 その生活も、シャハラザードが夜毎に語る、玄妙怪奇な物語に負けず劣らず奇妙 で異様で不可解だし、しかもここ半世紀ほどは彼と直接謁見した者は数えるほどさ えいないという。真偽のほどはさだかでないが、まあそれほどの神秘的な存在とい うこと。つまり、この男こそ、まさに稀有だが実体不明。 それからもう一人。この男のことはどうでもいい。職業は刑事だが実績はない。 性格は最悪だし生活は最低。裏街の三下からうわまえを跳ねる手腕の他に見るべき ところはいっさいないし、その手腕にしたって三流の、能なし小太り阿呆面の悪徳 刑事。名前はチャン・ユンカイ。だがこの名前だって、覚える必要はなし。 では物語をはじめよう。 「それを手に入れることができれば、まさに神の視点を得られるそうだ」 依頼者の饒舌に気のりうすい愛想笑いをかえしながら、ジオ・テマセクはヘイル 入りの紅茶を口にして心底うんざりし、また震えあがってもいた。 「じつのところ、あの男が預言者だの最高の英智の顕現だのといわれているのも、 それを持っているからだ。“黄色い闇”と呼ばれる、何か神秘めいたすばらしいも のをな」 「で、その“黄色い闇”とやらの実体は? どんな形をしているんです? どれ くらいの大きさ? もち運ぶのに、手押し車は必要ですか? あるいはタンカーが」 「それはだれも知らないんだ」依頼者は露骨な不機嫌をにじませて葉巻を深く吸 いこんだ。「たぶんハドラ・アブドライ以外のだれも。だからもちろん、わしにそ れがわかるはずはない。そうだろう?」 ジオ・テマセクはあいまいに微笑しながらうなずいてみせる。もちろん、心の中 ではとびきりのしかめ面をうかべて。 盗賊としての腕を見こまれて困難な依頼をもちかけられるのは毎度のことだ。そ れに、困難な仕事を、ジオ・テマセクの名声にだまされて誘蛾灯にさそわれるよう に集ってきた優秀な部下たちに代行させ、ますます虚名に拍車をかけ、または失敗 の責任を部下のへまや方位や日づけにおしつけてやりすごしたりするのもいつもの やり方。 だが、この仕事はどう考えてもそれではおさまりそうにない。まず部下たちは腕 のいい者も、そうでない役たたずも、ハドラ・アブドライの名を耳にしただけで尻 ごみをしてしまうにちがいない。かといって別の仕事でお茶を濁したり、口先三寸 でなにもかもなしにしてしまうには、抱えこんだ借金の額も膨大すぎたし相手も悪 かった。 「帝国宝物蔵から生きて出ることに比べれば、それほどたいしたことでもないだ ろう」 邪悪な微笑を浮かべつつ、こともなげにいうマフィアの黒幕は、最初から噂に名 高いジオ・テマセクにこの仕事を遂行させようと、罠をはって待ち受けていたのだ し、あからさまなトラップにいとも簡単にはまって抜け出せなくなったのも、ジオ ・テマセクのいつもの失策。 だからといって逃げ出す先も見あたらず、ほんとうにハドラ・アブドライの逆鱗 に触れずにことを解決させる手だてなど、せいぜい自殺するぐらいしか浮かばない。 そして、ハドラ・アブドライから所有物を奪うなど、自殺するも同然の無謀な所 行。 「それとも、あの噂に高い大盗賊の手腕はただのはったりってわけか?」 図星をさされてうろたえないだけの虚勢を維持できることこそ、張り子の虎が今 日まで露見せずにやってこられた理由のひとつだ。だがこの場合、その事実もなん の救いにもなってはいない。 刺激性のチャイは昂揚も鎮静ももたらさなかった。ジオ・テマセクは一服ついた 後、なんだかんだ理由をつけてぐずぐずしたがったのだが、暗黒街の大者に心底か らの期待とともにせっつかれて(もちろんしかたなしに)重い腰をあげた。 絶望感に重くのしかかられながら“死者の道”を超え、仕事にとりかかるはるか 以前に精神的に疲労しきって目的地に到着する。 ラウレン・シティについて最初にしたことといえば手近の酒場で酔ってくだをま き、花の散る路上に放り出されて風邪をひくことだった。傍目にはバカンス気分。 じっさいのところは、死刑台への十三階段を、背中をこづかれながら昇らされてい る気分で、一ヶ月を無駄に過ごし、黒幕に不機嫌に督促を受けてぶつぶつと弁解を 口にしながら、ハドラ・アブドライの居館について調べはじめたときももちろん、 意欲満々という状態からはほど遠かった。 だからその期間にラウレンの警察機構から目をつけられたのも当然のこと。 ところが彼にとって幸運なことに――あるいは不幸なことに?――この有名な盗 賊の監視と摘発の役目を与えられたのは、ラウレンの裏街では役たたずの嫌われ者 として知られていたチャン・ユンカイという名の悪徳刑事。 もちろん、チャン・ユンカイにしてもこの抜擢(あるいは悪質ないやがらせ)は、 まったく歓迎すべからざる状況だった。やる気のなさはジオ・テマセクにも負けず 劣らず、その仕事ぶりの手抜きぐあいとくれば、ジオ・テマセクなど比すべくもな い。 チャン・ユンカイが悪質な酒飲みであることも、ジオ・テマセクとの共通点のひ とつだった。ちがっていたのは、この悪徳刑事が酔うと恐れを知らない脳天気な勇 者に変身するという点だ。 そういうわけでチャン・ユンカイは、ジオ・テマセクがぐずぐずしている間に、 この稀有の盗賊の獲物がなんであるかを偶然つきとめ、恐ろしいことにシティ郊外 のハドラ・アブドライの神秘の館に、もちろんへべれけに酔ったまま訪問するとい う暴挙を、こともなげにやってのけた。 「俗世の悪徳にまみれた公僕が、この清廉の館になんの用があって来た」 ハドラ・アブドライの怪しげな七人の側近がチャン・ユンカイを詰問したセリフ は、もちろんお定まりの常套句にすぎなかった。だが、この場合はその常套句もき わめて的を射ていた。 「うるせえ三下」 どちらにしても、酔ったチャン・ユンカイに敵はいない。いるのは眉をひそめて 近づかない常識人と、ごみためにむけて蹴り飛ばして世界の浄化に手を貸す荒くれ くらいのもの。 七人の側近はそのどちらでもなかった。 あえていえば、チャン・ユンカイに輪をかけた悪質な酔漢だ。 親玉を出せ、気ちがいの親玉をとわめくユンカイを拘束具に固めて地下牢に放り こみ、ハドラ・アブドライの許に悪魔の使者を拘禁しましたと報告におもむいた。 ここで偉大な狂気の教祖がいつものように、始末を側近にまかせて夢幻境への耽 溺から一歩も踏みださずにいれば、ことは平和にすんだかもしれない。そのかわり に大アブドライは、悪魔の使者なる酔っぱらいに興味を抱いた。館中に直結してい る、預言者の声を伝える伝声管に向かって、謁見すると宣言するや、頭蓋をくりぬ いて脳髄に達した数百本のピンをぬき、粘度を増幅したリンゲル液に満たされた子 宮から這い出して、ピン跡から血と内容物とをたれ流しながらへらへらと神秘的な 微笑をうかべて地下牢に降りていった。 騒然としたのは信者たち。風評と側近たちの宣伝と、みずからの内に暗い口を開 く空洞とに後押しされて狂信者と化した身にとっては、まさに青天の霹靂。半世紀 ぶりに天降った大預言者の御姿をひとめ見ようと、これも側近たちの制止をものと もせずに地下牢へとおしよせた。
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