空中分解2 #3127の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
◆楽戦楽勝ごりら男◆20 老人ゲーマー キリストの生誕歴(つまり西暦)2035年12月1日土曜日。 80歳になった僕は、どでかいデパートが主催する『懐古骨董趣味 /電脳遊技展』の会場に陳列している展示品『ブロック崩し』の前 によぼついて立ち尽くしていました。 こみ上げる懐かしさ。青春時代の興奮。展示品のケースによだれ をだらだらだらだらしたたらせながら、 『あふぁふぁ、こりは、こりはああーーー』歯が抜けてしまって 何を言っているのだかさっぱりわからぬ言葉で、じじいの僕は『ブ ロック崩し』ゲーム機に頬ずりしている。 コンパニオンのばあさんが、露骨にいやな顔をしながら『展示品 によだれをたらせては困るんだよ』と、冷たく言いはなつ中、懐か しさを讃えた胸の興奮は治まらなかった。青春の日々、このゲーム 機と対して、1球全面クリアパーフェクトを立て続けに出していた、 反射神経と100円だまの日々。 的確を誇ったパドル操作を誇っていた右腕もいまやぶるぶる震え、 目もしょぼついて、軽快に動く、玉の移動を示す輝点を追うのがや っとです。コンパニオンのばあさんに執拗に懇願する僕。 『なんだってー。これがやってみたいだってー。100円だまが あるだって〜。じょうだんば、いっとかんねー。この機械は伝説的 電脳ゲームメーカー/タイトーが生み出した、電脳ゲームの始祖と もいえるゲーム機の骨董品ばい!このくそじじい。あんたがさわれ る機械じゃないんだよ』 にべもなく追い払われるのでした。 そのころ、同じデパートの子供向けのゲームセンターの一角に、 66歳になる知人Rが、今は誰も振り向かなくなってしまったぽん こつゲーム機。『ストリートファイター2』の前にやってきました。 若い頃の無理がたたったのか腕の震えが激しい知人R。それでも、 スト2の前に立つと、一瞬の気合いがよみがえるのか。100円だ まを投入する。この機械の方もゲームコーナーの片隅で40年以上 にわたって息ながらえてきただけに老朽が目立ちます。 最新鋭マシンが時折派手な電子音を出すたびに、電波干渉を受け るのか、スト2の画面はよれよれによじれます。コントローラーは、 通算50万人近いゲーマーがいじり回してきたので、手ごたえがな いほどふにょふにょです。ボタンは6つともカバーがとれていて、 連打すると指の皮につき刺さる。こんなことでは、電撃もローリン グアタックも繰り出せないでしょう。 『ありゃー』 ふにょふにょのコントローラーで手元が狂ったのか、はたまた自 分の腕の震えから選び損なったか。知人Rは最弱の『バイソン』を 選んでしままいました。そうして機械が選択したのは、なんという 皮肉か。ごりら男=ブランカ。 ラウンドーファイトー。。。。の合成音声も今では張りがありま せん。 66歳になった知人Rを空想するのは、このくらいでやめにして おきましょう。20世紀日本が産んだせつな的な真剣勝負『ストリ ートファイター』は電脳ゲームの傑作として歴史にのこるでしょう。 しかし、このゲームを操った町のストリートファイターたちの名 前は残らないかも知れません。誰も記録しないヒーローたち。その 一人が知人Rだったというわけです。 ちなみに知人Rは、11人抜きが挫折したがために面接に間に合 い、みごとその会社に就職を果たしたそうです。スト2の達人を社 員として迎えるその会社は、なんという幸運でありましょうか。 (以上完結)
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「空中分解2」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE