空中分解2 #3094の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
青かった空の印象と希望の残像。何があってどうしたという日ではないけれ ど、彼女はその空を何年たっても忘れないと思います。 その日の空は水色よりも濃い青色。大きな雲が流れていきます。彼女はパパ のAS*HI PENTA*を肩にかついで家を出ました。大きくて重いカメラです。露出 も自分で調節しなくちゃならないし、ピントも自分で合わせるというカメラで す。それは彼女が生まれるより以前から家にありました。厚くて大きなアルバ ムに貼ってある、両親の新婚旅行の写真や彼女のもっと小さい頃の写真はこの カメラでとられたものです。カメラを持ち出したことがわかれば、彼女はパパ に怒られるでしょう。でも今、パパが使うのはもっぱら“写ルン*す”です。 カメラが持ち出されたことに、まず気付くことはないでしょう。彼女は晴れた 空の青いのが大好きで、それを夜や雨の日にも眺めることができるようにと写 真にとることを思いついたのでした。 彼女は小学生です。パパは以前写真にこっていて、いろんな写真を何枚もと りました。その中の彼女をとった1枚は市のコンクールで特賞をもらいました。 (それはいまだに彼女とパパの自慢です)まだよちよち歩きの彼女が公園で笑っ ている写真でした。それとは別に、彼女の密かな夢は13歳になったらモデル としてデビューすることです。でも最近のパパの趣味は釣りで、あまり写真を とってくれません。彼女は少し不満です。 今日は肩にさげたカメラがあるので慎重に坂を下って公園まで歩く彼女です。 いつもなら坂道は走ってジャンプしています。ごう と風をきって、高く高く 跳ぶのが好きなのです。“小5にもなって・・・”と人に言うと笑われそうな ので言いませんが、いつかそのまま飛んでしまうだろうと思っています。ただ、 なにしろ坂道でのジャンプなので時々おもいきり転びます。おかげで彼女のヒ ザはいつも赤チンの朱色とカサブタの茶色でオレンジ色です。これじゃモデル は無理かもなあと、ちぇっと思ったりします。 彼女は公園に入ると、芝生のところに大の字になって寝転びました。背中か ら芝生が入ってチクチクします。彼女は傍らに置いたカメラを手で確かめまし た。たぶん空は写真にはうつるでしょう。でも結局それはこのように上にある からこその空で、どんな見事な写真も何の役にも立たないのです。彼女は写真 をとることはやめにしました。 穏やかな日ですが空の上のほうでは強い風が吹いているようで、雲がどんど んと西のほうに流れていきます。こんな日、彼女はふわあっといい気分になっ て物がクリアに見えるのです。例えば世の中のすべて、新聞に載るような大き な事もすべてがこの空の下の出来事で、いろんなかたちで彼女と繋がっている こと。例えば物事自体には幸も不幸もないこと。例えば誰がくだらないことだ と言っても、彼女が大切だと思えばそれは大切なことだということ。天に差し 伸べる手は上空40センチのあたりを虚しく漂うけれど、いろんなことを見る ことができる青空の下、わけのない希望で頭も胸もいっぱいになるのでした。 これは坂道でするジャンプの感じに似てる と彼女は思いました。そしてきっ と彼女がここで感じたことは真実で、だけど学校や家の中に戻ってしまえば忘 れてしまうことなのでした。 何があってどうしたという日ではないので彼女が思い出せるのは、青かった 空の印象と希望の残像だけです。 ひとまずおわり
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