空中分解2 #3081の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
約一週間、トラックは、都内はもとより、一都六県をぐるぐる回った。 今、俺は、万座に向かう国道406号の道路わきに、車を寄せて止まっている。N ISIZAWAのトラックが、ガソリンスタンドで給油しているのだ。運ちゃんと 助手は、メシを食いに、何処かに行ってしまった。 俺は自分の車の燃料計の針を見た。エンプティーに近づいている。ガソリン代は、 とうに六万を越えていたけれども、そんな事はどうでもいい。問題なのは、この先 に、もっと安いスタンドがあるかも知れない、という事だ。ここから見ると、『現 金客歓迎』『リッター123円』という回転式の看板が、馬鹿にした様に、ぐるぐ る回っているのが見える。スタンドの塀の上には、でかい看板があって、『この先 スタンド無し!』と、黒地に赤の文字で書いてある。しかし、あんな看板に騙され る俺ではない。ほんの五キロ手前のスタンドにも『この先スタンド無し』と書いて あったじゃないか。あそこはリッター125円だった。 路肩に止めた、俺の車を、ランドクルーザーやパジェロやレオーネの4駆が、猛ズ ピードでかすめて行く。ドップラー効果で、ビーーーーーーウーーーーーと言う度 に、風圧で、俺のアルト660は揺れる。みんな新車だ。みんなスキーの為だけに 、車を買い替えるのだ。俺の軽自動車は、ポンコツだ。しかも、エアコンもない。 クーラーだけではなくて、ヒーターも壊れているのだ。車検の時に、フロンの交換 だけで、一万円もするというので、断ったら、ヒーターまで動かなくなって帰って きた。みんな馬鹿だ。どんどん車を買って、どんどんフロンを使って、その内、ぽ っかりとオゾンホールがあいて、地球温暖化で雪なんて溶けてスキーなんて出来な くなる事も知らないでいる。俺みたいに、大切に、車を乗らないと駄目だ。 俺は、タバコに火を付けると、ラジオをつけた。 「環境庁は、二十二日までに、自動車窒素酸化物、ノックスを削減する基本的な方 針を明かにしました。自動車窒素酸化物削減法の基本方針は大手自動車メーカー各 社と協議の上自動車の買い替え促進を第一に考え」 俺は、踵で、思いきり、ラジオを蹴飛ばした。ボリュームのツマミが弾け飛んで頬 が切れた。 俺は吠えた。 ふざけるのもいい加減にしろ。これ以上、俺を苛々させるな。こんなデマゴギーに 騙されてたまるか。俺は、誰にも騙されない、絶対に誰にも騙されないぞ! 俺はハンドルを握りしめると、アクセルを全開にして、クラッチを一気につなぐと 、回転式の看板めがけて、突進して行った。 タイヤがキキキキキと鳴った。 【了】
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