空中分解2 #2822の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
昼休みのお食事といったら、購買部のマロンパンとミックスサンドにパックの牛乳。 今日は天気がいいから、中庭の芝生の上で食すのがツウってものなのよね。 いつもの仲良しグループ、ユミ/【三浦有魅】とノンコ/【坂上紀子】とミリィ/ 【楢崎美鈴】とわたし/【朝倉杏子】の四人。みんなでわいわい騒ぎながら食べるの はとても楽しいものだ。 でも、こんな楽しさもあと半年足らず。わたしたちの目の前にはそれぞれの未来が 待っている。このままずっと一緒にいられればいいのにね。 「ノンコの卵焼きって、どうしても真似できないんだよね」 ユミは、隣のノンコの弁当箱から卵焼きを一つ自分の口へと放り込み、その味をか みしめながら首を傾げる。 そう。ノンコが作る卵焼きは、普通のものとはひと味違う。見た目は変わりないの だが、その美味しさはわたしたちの真似できるようなものではないようだ。 「そうそう。わたしとかが作るとさ、絶対甘くなっちゃうんだよね」 わたしもノンコの卵焼きを一つちょうだいする。 「砂糖と塩の加減が難しいのよ」 ノンコはそう言って人差し指を口にあてる。真面目に考える時のこの子の癖。 「ノンコって卵焼き一つとってみても、その道を極めてるからね」 わたしは半分ジョークでそう呟く。 「それは確かに言えるかも。ミリィもそう思わない?」 ユミは向かいに座るミリィをこづく。 「……へ?」 ミリィはわたしたちの話など、うわの空って感じで間の抜けた返事をする。 「だめよだめよ。ミリィのオツムの中は憧れの人のことでいっぱいなんだから」 事情をよく知るわたしは、ミリィの顔を見ながらついつい笑ってしまう。 「ああ、例のあの人ね。ミリィも一途だからね」 ユミも事情を知っている為、クスクス笑い出す。 「え?ミリィに好きな人ができたの?ねぇ、どんな人?」 ワンテンポ遅れて、ノンコが口を挟む。 そういや、ノンコは一緒に城高の学園祭行けなかったもんね。 「それはね、ミリィの口から直接聞いたほうがいいかもよ」 わたしは思わず吹き出してしまった。 「そうそう、素敵なお姉さまらしいわ」 ユミもクスクス笑いだす。 「やだぁ、ミリィったらそっちの気があったの?」 ノンコは苦笑いしながら、ミリィを見つめる。 「……綴さん」 ミリィは空を仰ぎながら憧れの人の名を呼ぶ。 「だめだこりゃ。完全に自分の世界にはいちゃってる」 あきれたようにユミがつぶやいた。 「お姉ちゃん、お姉ちゃん」 8つ離れた姉を呼ぶわたし。 記憶の断片に映るは7才のわたしと15才の姉/晶子。 「どうしたの杏子?」 優しい声で問いかける姉の笑顔はとても心地良かった。隙間だらけのわたしの心 を包みこんでくれるようなそんな感じだった。 「あゆみちゃんたちがいじわるするの」 その頃、近所に住んでいた市川あゆみちゃんは、おとなしい性格だったわたしを ことあるごとにいじめた。だけど、今考えてみればわたしにも原因はあったようだ。 7才の頃のわたしは、うちべんけいで、他人からみればかなり無愛想な子だった。 親からもかわいくない子だと、半分冗談まじりで言われていたぐらいだ。 「あゆみちゃんが……あゆみちゃんが……」 涙で曇る視界。そこでわたし記憶は途切れた。 目が覚めた時、わたしは布団の中でうっすらと泣いていた。 お姉ちゃんのことを思い出すのは久しぶり。3年前に関西の方に就職してからそち らへ行ったっきり。仕事の都合なのか、帰ってくるのは正月を過ぎた1月の下旬。 よほど向こうが気に入ってらしく、電話すらたまにしかこない。 しかし、夢に見るなんてどうしたんだろう。 まだ、完全に目覚めない頭でそう考える。 「なんか忘れてる気がする」 わたしは誰もいない部屋でそうこぼした。 「おはよう」 ぽんと肩を叩いてユミが姿を見せる。 「あ、おはよう」 わたしは気の抜けたような返事をする。 「どうしたの?元気ないじゃん」 「そっかなぁ?単に寝起きが悪いだけよ」 「なんか悪い夢でも見たの?」 ユミがわたしの顔を覗きこむ。目鼻だちはキリっとしていて、女の子らしいかっこ よさを持つ子である。とはいっても、わたしはミリィのような趣味はない。恋愛に関 してはノーマルなはず。 「うーーーーん」 ユミの顔を見ながら考え込む。 「なにうなってるのよん」 ちょっと首を傾げるおちゃめなユミ。 「久しぶりにお姉ちゃんの夢みたんだ」 「それで?」 「泣いちゃったの」 無表情でそうつぶやく。 「そのお姉ちゃんに、いじめられたの?」 「ううん。」 夢の出来事を思い出しながら首を振る。 「じゃあ、なに?」 ユミはじれったそうにわたしを見つめる。 「んーとね……あれ?どういう夢だったっけな?」 記憶の断片に靄がかかって、説明できなくなっていく。 そんなわたしにあきれたのか、ユミはさっさと歩き始める。 「そこで一生悩んでなさい。あたしゃ、遅刻に付き合わされたかないからね」 カツンカツンといい音をたててユミは先を行く。 「ちょっと…待ってよ!ユミ!!」 わたしたちの教室からは高等部の校舎が見える。が、そのままストレートに高等部 へ進学できる生徒は全体の半分にすぎない。成績順に分けたCクラス以上の生徒しか 推薦はとれないのだ。わたしたちのDクラスは、ぎりぎりの線で切り落とされる。 あとは、一般受験で再びチャレンジするしか手はないのだ。 だけど、ユミもノンコもミリィも付属の高等部へと進学するのをあきらめているよ うで、このまま四人で仲良くいられる時間もあとわずかしかない。 いつまでも一緒にいたいけど、わたしはどうしても付属の高等部へ行きたいのだ。 それはもう、意地を越えた憧れがそこにある為である。 「ねぇ、お昼食べよう」 ノンコが甘ったるい声でわたしに擦り寄ってくる。 「え?あ、うん」 4時限目に配られた模試の結果用紙を見ていたわたしの声はちょっと暗い。わたし の夢の実現率40%。憧れにはほど遠い。遠すぎてめまいさえ起きそうである。おま けに食欲はあまりないし、大好物のマロンパンも食べる気になれず購買部へ行く気力 さえない。 「アンコ。最近、元気ないね」 いつもはとろいノンコでも、わたしのことは気にかけてくれる。うれしいんだけど ね、それに応える元気が今はない。 「ハーイ!お弁当いきませう」 ユミがわたしの背中にのしかかってくる。……う、重い。 「アンコ、食欲ないみたいなの」 ノンコが心配そうにユミに告げる。 「模試の一つや二つ、気にしていてもしょうがないって。たとえ結果が悪くても」 う、グサっときたぞ。 「そうよ。お腹が減ってると、どんどん気分が滅入っちゃうよ」 ノンコもユミに同調して気楽に言う。 「もう、このさいあきらめてみんなで城高いこうよ。あたしたちの学力ならみんな入 れるしさ」 ユミの、そのなにげない一言にわたしはカチンときた。 「そりゃ、このままみんなと離れるのは嫌よ。でもね、わたしは進学したいの。せっ かく付属の中学に入れて、一般の人より有利なんだから、そのチャンスを無駄にした くないの。ユミみたいに、気楽に進路変更できるほど、わたしはノーテンキじゃない のよ!」 わたしは感情の高ぶるまま言葉を吐き出した。後で思えば、この時のわたしがどれ だけ醜いものだったか。 「ごめん。ちょっと軽はずみな意見だったわね」 ユミは素直に謝る。この子は自分が悪いと思えば正直にそれを訂正する。わたしみ たいに変に意地になったりしない。とってもいい子なんだけどね。 でも、わたしの感情は治まらりきらず、言葉はどんどんエスカレートしていく。 「謝るくらいなら、そんなこと言わないでよ。わたしだって一時期すごい迷ったんだ から……迷ったすえの解答なんだから」 机をバンと叩いて立ち上がると、わたしはそのまま教室から出ていった。 泣いてはいなかった。涙なんかこぼれなかった。 ただ、感情の高ぶるまま、それを悪い意味で素直に行動に移すだけだった。 泣けなかった。 自分に悔しくて。 (後)へ
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