空中分解2 #2727の修正
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翌朝。シマキンを前にして、北山が申し訳なさそうに発言した。 「昨日はすみませんでした。おおまかな構想は出来上りました」 みなみが『やってくれました』とばかりに隣でニコニコし始めた。横田は不思議 な顔をして、みなみと北山の顔を交互に見ている。 「ほんとに心配させるなよ北山くん、それじゃ見せてくれ」とシマキンが眼鏡をと りだして、かけた。 「企画書?すいません間に合わなくて」 「・・・・それじゃ、どんな?」シマキンが眼鏡を置いて言った。 「大晦日の三時間特番。どうせ他の局は大騒ぎでしょ、三時間すべてバラードを流 しましょうかね」 「・・・・それだけ?」横田とみなみもそう思ったのか、顔を見合せ北山を見た。 そのみなみを見て北山が「中継車一台借ります。ミキサーはみなみにやらせます、 出来るか?」と尋ねた。 「あっ、なんとか・・・・でも音源は?」横チンが『俺かな』と自分を指さした。北 山がそれにうなずいた。 「僕ですね、はい。局待機で送り出しもですか?」 「そう、あとは臨機応変に電話で・・・・」 局待機とは、スタジオに一旦中継車からの電波を受け、それにCMやら曲を加え て送出するという事である。電話を中継車と繋げっぱなしにし、連絡をとる。 「はい了解。ところで、肝心の北さんとみなみは何処へ行くんですか?」 「雄冬だ」北山がいうと、その場所を誰も知らないのか返事がない。 「雄冬岬(おふゆみさき)。留萌(るもい)の手前にあって・・・・」 「・・・・オホーツクの波か」横田が呟いた。 「北山クン、波の音を生で録ってバラードかぁ?それだけで大丈夫かね」 そろそろシマキンのチェックが始った。 「観光地でもないんで、あまり知られてませんが、雄冬は何千年もの荒波に刻まれ た、奇石というか怪石というか、そういう石の断崖が二十六キロも続いている所な んです」と北山が更に説明を加えた。 「ほー、知らなかった。二十六キロもねぇ」 「オホーツクの音はここが一番です」 「なるほどね。でも断崖じゃケーブルが・・・・」 「ギリギリまで中継車を突っ込んで、なんとかしますよ」 「しかし、かなり寒いじゃないか?三時間も・・・・大丈夫かね」 「機材は大丈夫です。問題は人間の方−−みなみは中継車で待ってればいい。俺が 全部やります」 「私だって、体力自信ありますっ」みなみが力コブをつくる真似をすると「たのも しいな、せいぜいアテにするよ」と北山が笑った。 「それで北山クン、ナレーションは?」 「いらないです」 「なし?う〜ん、波の音ね・・・・つまらなくないか?みんなはどう思うんだ?」 とシマキンがみんなの顔を伺う・・・・沈黙がしばらく流れた。 「返事がないか?やっぱり企画がちょっと、あたりまえ・・・・」 北山が身を乗りだしてシマキンの言葉を遮った。 「部長、何も言わずにまかせてくれませんかね」 「・・・・でもねぇ、よくあるよ、波にバラードはね」 「長年の経験からくる賭みたいなもんなんですよ、部長も元ディレクターだったら その辺わからなくもないでしょ。ただそうやって順番にやる事ならべて、机の上で 考えたら、なんだってつまんなくなるんですよ。その場の感じっていうか、その崖 っぷちで面白い方向にぶっとんで行きますよ、二人でね」と北山はシマキンの前に 封筒を差しだした・・・・いつものテではあるが辞表だ。 「わ、わかったよ、今年もそれか北山クンは。やりましょう。どっちみち私の責任 だ、いいんですか、それでみんな?」 「はい!やりますよ僕たちは、北さん信じてますから」 真面目に言った横田を「おう、いい事言うじゃねえかよ横田」と北山がからかう。 「またあ、応援してるのに!」 「そうですよ北山さん!」みなみが北山を睨んだ。 「せいぜい頑張ろうぜ。部長期待して下さい」 「いいんだよ、私も賭けてるんだからね、だから管理職は・・・・」 「ウッ・・・・」みなみがシマキンの口癖に吹出しそうになった。 「なに?神崎クン」シマキンがみなみを見た。 「いや別に・・・・グフッ」横田も横を向いた。 ・・・・ブイ 「あはっ、北山さんおなら・・・あはははは」 シマキンが「北山クンまたかね、頼むよ本当に、大丈夫なのかね」と心配そうに 彼の顔をのぞき込んだ。 「そりゃあないよな、みなみ」 横田がこぼれんばかりのCDを抱え、みなみの所に来た。 「どしたのよ、横チン」みなみが手を休めて聞いた。 「ちょっと見ろよ、この選曲」 「わあ、凄い何曲あるの?これ」みなみがその選曲リストを見て仰天した。 「五○曲だよ」 「どれどれ・・・・」見るとバラードばかりのようである。 「なに寝ぼけてんだよ」横田がふくれた。 「あっ、そうか特番の・・・・」 「あったり前だよ・・・・お前は、なにやるんだっけ?」 「私?中継車・・・・なんか知らないけど、技術部怒ってるのよ。シブシブよ、教えて 貰うの。わかんないじゃないあのミキサー卓、全然違う」 「・・・・そうか」横田はもううんざりといった感じでそういった。 「なんか北山さん、また喧嘩したみたいよ」 「・・・・俺が教えてやるか、それじゃ」 「出来るんだ。最初から言ってよそれ!」みなみが肩で彼を押した。 「悪い悪い・・・・それよりよ、これだよCD見ろよ、山盛りだぜ。三日かかったよ選 曲に」 「うん、かかるよね、そのぐらい」 「で、昨日さ、北さんに聴いてくれって渡したらさ、見もしないで『それでいい』 だって・・・・あったま来たよ俺、もう知らねって感じ。やる気あんのかな」 「そう・・・・」心配そうにみなみが言った。 「だろ?海の音とバラードじゃさ」 「よくあるもんね」彼女も、そう思ったから会議では黙っていたのだ。 「最近知ってるか?」 「なに?」 「サボリだぜ」そういえば、ここ2・3日みなみは北山をみかけない。 「シマキンは?」みなみが様子を聞いた。 「別に怒ってないんだよ、それが」 「ああ、わかった。とうとう北山さん制作部長やるんじゃない?」 「・・・・それでシマキンが?なるほどね、それだったら辻褄あうか」 北山が昇進して管理職になると、彼らは読んだのだ。現に彼は持番組をすべて整 理してしまっている。 「そうだよな・・・・でもなぁ」 「私もそう思う。北山さんみたいな人がみんな辞めちゃうと、トタンにくたびれた とばかりにダメになっちゃうでしょ。それでさ、自分で言うのもなんだけど、若い 連中に任せるというか、放り投げちゃう。それって結構危ないんだよね、北山さん シマキンみたいになっちゃったらどうしよ」 横田が複雑な顔をして答えないでいると「そうなの。若いディレクターがさ、カ ッコ付けちゃって、アルマーニなんか着て。最近はこうなんですよ!昔と違って、 それぐらいわからなきゃ、リスナーの心は・・・・」と彼女がふざけて演説をした。 「うまいなお前・・・・」 「ふふ、北山さんに聞いたの」 「なにを?その話しを?」 「若いときに、シマキンをそうやって脅かしたんだって」 「はっはっは、じゃ俺もアルマーニ着て、北山さんに脅かそうかな?」 「じゃ私もブランドのスーツ買って?・・・・ばかみたい」 自分の事をさておき、アルマーニの横田を彼女は想像して笑った。 「ははは、似合わないよな」 「ホント。じゃその選曲、私にも手伝わして。一応選曲表つくっとこ、北山さんの 事あてにしないで・・・・」 と彼女は言いながら、ドサッと積んであるCDの半分ほどを抱え、自分のデスク に置いた。 「ああ、助かる。頼むよ」 「好きなの選んでいい?」 「ああ、いいよ何でも」 「『いいよ何でも』それじゃ北山さんとおんなじじゃない」と彼女が横田にいうと、 彼は笑いながら「それじゃ、いいのだったらなんでもいいよ』と言って隣のデスク に腰をかけた。
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