空中分解2 #2675の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
かつてヒーローだった人造人間、伊集院義夫。いま時代は彼の100万パワーを必要 としてはいない。 何故こんな事になってしまったのか。どこかで人生の歯車がくるっちまったんだな。ど のへんで狂ったんだろうか。やはり良子と駈落ちした時からか。息子の孝雄が産まれて からかもしれないな。彼はじっと己の手を見つめる。「俺は……誰だ。」 伊集院は、悪の組織「山田組」で改造手術を受け、脳の改造手術をほどこされる寸前 に脱走したという華々しい経歴を持つ。伊集院義夫、またの名を人造人間キャシャダー 。 以前電気工事士の資格を取得した事から名付けられた「電工パンチ」も、今や撃つ相手 を必要としてはいない。 「ふふふ……。今ではいい思い出だよな。」 あの時は組織にだまされた科学者、海野博士と共に一大活劇を演じたのであった。そ う、海野博士との出会いは第2話、CMが終ってから2分目のトコロだ。懐かしい。山 田組の組長、キング山田は実に恐ろしい敵だった。キング山田とその手下の改造人間た ちとの戦いはお茶の間のチビッコたちに絶大な支持を受けた。 「私は視聴率のために戦っているのではない。正義のために戦っているのだ」 マスコミに対して彼はそうコメントした。彼は常に視聴率など気にせず悪と戦ってい たのである。そうした仲間は数多くいた。中には一致団結して戦った時もあった。 最大の敵、ゴッドジャングラーとの戦いは過酷なものだった。キャシャダーの電工パン チも通用せず、今度こそ人類に最後の時がやってくるかと思われた。そこに登場したの がキャシャダーと同じような経歴を持つヒーロー、キャシャダーXYZである。キャシ ャ ダーXYZは海野博士が秘かに開発していた人造人間で、いうなればキャシャダーの兄 弟とも言える存在であった。 「フッフッフ。キャシャダー!これで貴様も終わりだ。ジャグジャグー!!」 ゴッドジャングラーはそうキャシャダーに語りかけ、チェーンソーのスイッチを入れた 。 「ああっ。俺はここで死ぬのか。1クールで最終回になってしまうのか。それはあまり にも悲しい。いくら最近視聴率が悪いからって、それは無いだろう?それではあまりに もミジメじゃないか。」天にその声が聞こえたのだろうか。チェーンソーがキャシャダ ー の首を斬ろうとするその時。チビッコ自衛隊の隊長、コバヤシ少年が叫んだ。 「あっ、あれは誰?」 バイクに乗ってやってきたのは、キャシャダーXYZであった。 「キャシャダーXYZ、ただいま参上!!」 そして例の大活劇を繰り広げたあと、キャシャダーは新必殺技「電池エンド」でゴッド ジャングラーの息の根を止めるのである。 「ううう……。キング山田さま万歳!!ジャグジャグー……。」ゴッドジャングラーは 爆発し、死んで行った。 「本郷、いやXYZ。あの時は格好良かったぜ。」伊集院義夫は本郷隼人(またの名を キャシャダーXYZ)に話しかけた。「あの時だけさ。まったく、いい思い出だ」 「ゴッドジャングラーは山田組で改造された人間の中でも最も優秀なやつだった。彼は もと公認会計士だったからな。奴は策士だったよ、本当に」「まさにその通りだ。日本 人チンパンジー化計画は恐ろしい作戦だった。キャシャダーの良きライバルだったな。 本名はなんと言ったっけ」「吉岡紀明。苦学の人だったらしい。運命のいたずらでゴッ ドジャングラーに改造されてしまったんだよな、彼も」「ああ。キング山田の脳手術を 受けなければ彼も正義の味方になり得たかもしれない。しかし、彼の爆発はひどかった な。何しろエネルギー源のプルトニウムが周囲に飛び散ってみんな被爆したからな」 「ああ。あれは悲劇だった。なにしろ都心で爆発したからな」 二人はがぶがぶと酒を飲み、昔の思い出を語り合った。 「良子さんとはうまくいっているのか、キャシャダー」 「ああ、それがな……。今年の冬に離婚したんだ」 本郷隼人はグラスを落とした。ウイスキーが周囲を濡らす。 「な、なんだってそんな……。おまえは最終回でこう宣言したじゃないか。ぼくたちは 結婚します。いつまでも良子さんと一緒にいます、って」 「それがな。番組が終ってからは食うにも事欠くありさまが続いてな。しばらくの間は 後楽園でアルバイトしていたんだが、とてもじゃないが3人を養える甲斐性は無かった んだ……。」 「ウソだ!良子さんは俺たちのアイドルだったじゃないか。彼女はいまどうしているん 「ああ、良子はいま、どこかのバーでホステスでもやっているんじゃないか」 「そんなバカな。信じられない話だ」 「わかってくれ、隼人。」 あの番組が終った時に俺たちの時代も終ったのだ。 義夫はそう思った。 後番組では、巨大ロボット「グレートガイガン」が地球の平和を守るために戦っていた 。 そのグレートガイガンも今やスクラップ工場で鉄クズに化していると言う。(鉄と言う 表現は必ずしも正しく無い。グレートガイガンのボディは未知の合金ガイガニウムで出 来ていたからである) 「キャシャダー。久しぶりに面白い話だった。」「ああ、俺もだ。XYZ。」 「良子さんの若い時のビデオでも見るか。今度ダビングしてやる」 「それはありがたい。是非頼む」 「じゃ、また会おう。キャシャダー」 義夫が飲み屋を出た時、既に空は白みはじめていた。 肌寒い空気を肺にため込み、キャシャダーは久しぶりに変身ポーズを取った。 「キャシャダー、チェンジ!」 七色の光が義夫の体から発せられ、超科学防御プロテクターの皮膚が装着されていく。 「ああ……。もう朝か。今日はやけに冷えるぜ、おお寒い。しかこのプロテクターも安 物だな。もっと予算をかけなくちゃ駄目だよな」 キャシャダーは変身した鋼鉄の体を震わせながら、帰路についた。 END
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