空中分解2 #2604の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
・虹・ 二階東向きの部屋。紀子がションボリ椅子に座っている。いつもは 父親の悪口ばかり言っているが、さすがにシオラシクしている。鏡三 郎は丸く線の細い肩を抱きしめたい感情を抑えつけ、向かいの椅子に 座った。紀子は黒いドレスを着ている。喪服なのだろう。 「紀子さん」 「先生・・・」 「元気出せよ と言っても無理か・・・ お兄さんは 何時 台湾から帰ってくるんだい」 「3日後です お葬式は それから」 「ふうん 久しぶりなんだろ お兄さんと会うの 思いっきり甘えなよ」 「・・・先生 気を遣って下さってるの?」 「え い いや 別に・・・」 「あたしは大丈夫 お父様のコトは悲しいのは悲しいけど お母様の時より・・・ それより緑さんが元気なくて そっちの方が心配なんです」 「あ え 緑って親戚のお姉さん?」 紀子はコクリと頷いた。 「昨日の夕方 あたしが学校から戻ったら 緑さん なんだかスゴク落ち込んでて お腹でも痛いのかと思って 訊いたら ええ チョット とか言って・・・」 「ふうん」 (血は水より濃いって言うが、そりゃ成功した場合だな。親子関 係も失敗するとコウだ。紀子さんは優しい娘なのに。あのオヤジに 問題があったに違いない)、鏡三郎はあくまで紀子の味方だった。 「うわあっ」 鏡三郎は驚いた。いつの間にか音もなく伊藤が背後に立っていた。 「先生 ご相談が」 陰陰とした声で伊藤が口を開く。大きく開ける割に声は小さい。 「な なんですか?」 鏡三郎はオッカナビックリ応じた。伊藤は顔からして心臓に悪い。 「実は ご承知の通り旦那様が亡くなられ 屋敷も寂しくなりま して ご婦人方も おいでることですし 宜しかったら 先生 しばらく屋敷に滞在して戴けませんでしょうか」 滅滅と伊藤が述べ上げる。鏡三郎は紀子の顔を見る。 「先生 アタシも先生が居てくれた方が・・・」 紀子は上眼遣いに甘えた声を出す。(まだ十六だってのにツボを 心得てやがる)、と心の中で舌打ちしたものの紀子に抵抗出来る筈 もない。 「解りました これから帰って荷物 って言っても本だけですが まとめて来ます」 「わあい なんだか旅行みたい 家の顔ブレが変わるなんて」 「ありがとうございます ご無理を申しまして」 本当に感謝しているのかドウカ解らない伊藤の声を聞いても、な ぜだか、悪い気がしない。(俺って案外、単純だな)と鏡三郎は誰 に聞かせるでもない照れ隠しを呟いた。伊藤は音もなく姿を消した。 「紀子さぁん」 聞き馴れない、優しくハスキイな声を耳にして鏡三郎は緑か、と 思った。紀子はパタパタとバルコニーに出て行く。 「オネェサマァ」 紀子は庭に向かって手を振っている。バッシャァー、水が舞い上 がる音がする。紀子は一瞬、身を縮める。中空を見遣る。エ、とい う顔をしたかと思うと、パッと表情が輝いた。 「うわああぁ 虹ぃ」 鏡三郎は驚いてバルコニーへと飛び出した。確かに虹だ。真ん丸 七色の輪が浮かんでいる。 鏡三郎は緑を探す。発見した途端、緑は手にしたホースを放り出 し逃げ去った。しかし鏡三郎の眼力はごまかすことは出来ない。ほ んのコンマ数秒の注視で緑がドンナ女か、ほぼ特定した。真っ黒な 長い髪、カナリの長身でスラリと伸びた肢体、抜けるような白い膚、 重要なことは、紀子なら皮下に殆ど埋没している鎖骨の窪みがクッ キリと肩の下に彫り込まれていたことだ。ただ鏡三郎にとって残念 だったのは、逃げる後ろ姿のドレスに浮き上がった尻が小さ過ぎる ことだった。胸幅はヤヤ広めだが、薄く見えた。顔は見なかったが、 キット美人だろうと、鏡三郎は勝手に決めた。紀子を見遣る。 七色の輪は薄くなりながらも、ユックリと紀子に向かっていく。 紀子は恍惚と虹を見つめる。手の届きそうなくらい近くに寄ってき た。紀子は腕を広げ、ウットリと目を閉じる・・・。 紀子が霧に薄濡れた顔を振り向け鏡三郎に囁いた。 「虹」 夢見るような視線の眩しさに目を細めながら鏡三郎は答えた。 「うん・・・」 何か考えごとを、しているようでもあった。 (続く)
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